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道を作る星  作者: KEITA
番外編
9/10

四、朽草




 星が、うつくしい。




 満天だ。




 いつか、あなたに教えてもらったことを思い出す。




 星に宿る、神々の恋物語。




 人よりも人らしい、彼らの夢。









「  」





 唇を開いてみたけれど、もう声が出ない。


 息すら出来ているかわからない。


 ゆっくりと、でも確実に、向かってゆくものがある。


 逸れることは出来ない、これがあの道というものなのか。


 これが、あの人も辿った道。





「  」





 ああ、それでも。


 今夜の星は、なんて美しいのだろう。


 漆黒の空に広がる、無数の光。


 手を伸ばしても届かない、永遠の光。




 あの日見た花びらよりも白く、眩しく、細やかで、そして遠い。


 しかし、儚くはない。


 あれだけ遠いのに、散ることも消えることもない。


 星は、花びらではない。



 星は、星なのだ。






「  」



 声が出ない。


 言の葉は消えた。


 音も生まれない。



 なのに、どうしてだろう。


 耳にはずっと、あなたの声が残っている。


 あの日からずっと、あなたの唄う声が聴こえる。



 あなたはもう、いないのに。




「  」



 ごめんなさい。


 ごめんなさい。


 あなたがいなくとも生きるという、あなたとの約束を守れなくてごめんなさい。


 私はやっぱり力が無くて、この道しか選べなかった。


 どうか、ゆるして。




 でも、これからもう一つの約束を果たしにゆくから。


 待っていて。


 あのとき傍にいられなくて、ごめんなさい。


 ついてゆけなくて、……ごめんなさい。


 これからは、ずっと一緒にいる。


 今度こそ、違わない。


 だから、待っていて。



「  」



 ……あなたが手を離した、あのとき。


 生きるしかなかった。


 生きることが約束だったし、証だとも思った。


 この小さな手を握って、生きようと思った。


 でも、結局は……







「  」






 ……ごめんね。



 あなたをひとりにして、ごめんね。


 でも、あなたなら大丈夫だと思ったの。


 あの瞬間、あなたなら生きてゆけるとわかったの。


 このろくでもない世界で、生きるに酷すぎる世の中で。


 力を持たない私達は、生きるために逃げ出した。


 愚かで弱いなりに、努力はしたけれど。


 やっぱり、上手くはいかなかった。



 でも、 あなたなら・・




「  」



 星が、きれいね。



 あなたが生まれたのも、とても星がきれいな夜だった。


 あなたは生まれた瞬間から、多くのものを教えてくれた。



 こんなに小さくとも生きているのだということ。


 こんなに弱くとも生きているのだということ。


 こんなに……いとおしい存在がこの世界にまだ在ったのだということ。



 あの人も、私も。


 あなたが生まれて、沢山のことを識ったのよ。


 あなたがいたから。



 あなたが、生まれてくれたから。




「  」




 あなたなら、大丈夫。


 あなただから、大丈夫。



 あなたは私に似ていて、あの人にも似ているから。



 そして……私達とは、遠く離れた存在になったから。


 きっと……大丈夫。




「  」



 でも、今のあなたはまだ小さくて。


 あんなに小さいのに……手を放してしまった。



 ごめんね。


 本当に、ごめんね。



 ゆるして、なんて、いえな、い




「  」



 どうか



 どうか



 あのこが であいに めぐまれますように



 やさしい ひとに



 きれいな ものに



 すこしでも おおく であえますように



 あのひの わたしのように



 たいせつなひとと



 だいすきなひとと めぐりあえますように




 どうか どうか

 


 せかいが うつくしいことを しらないまま おわらないで





「  」




 もう とどかない



 くるしさも すくな く



「  」



 ごめんね



 ごめ んね、








 ……清秋せいしゅう




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