いろいろ調べよう
「小説が書けない」で検索していると,あるサイトにこんな言葉が書いてあったのを見つけた.
「文章を書くということは,0を1にすることではなく,100を1にすることだ.」
上の言葉の意味が,そのサイトに詳しく説明されていた.とある大ヒットライトノベルの作者は,執筆にあたって,かなりの量の文献を読み込み,とてつもない量の情報収集を行っていた.例えば,近代ヨーロッパの経済史,技術史,思想史,軍略に至るまで,あらゆる知識をインプットした.そのうえで,その知識,情報をどんな順序で組み立てていくか,それを考えてから小説を書いたのだという.
そのサイトを読んで,僕はハッとした.自分の頭の中から湧いて出たことだけでは,物語を作る材料としては少なすぎる.それよりは,日本史,世界史,地理,科学技術などについていろいろと調べ,それらの知識を元手とすれば,物語も作りやすくなるのだ.
例えば,よくRPGやファンタジーで出てくる「勇者が悪者を倒して姫を助ける」という構図,あれにもルーツと思しきものがある.ギリシャ神話に登場する英雄ペルセウスとアンドロメダ姫の物語だ.
その昔,エチオピアにカシオペアという美しき王妃がいた.しかし彼女はうぬぼれるところがあり,ある時,「私は海の妖精よりも美しい」と口走った.海の妖精の父である海神ポセイドンは怒り,エチオピアに海の怪物ケトスを送り込み,エチオピアを荒らさせた.カシオペアとその夫であるケフェウス王は,娘であるアンドロメダ姫をケトスへのいけにえにすることにした.アンドロメダは海岸の岩に括り付けられ,海の怪物ケトスが彼女に迫ってきた.その時,上空を空飛ぶ天馬ペガサスにまたがって,英雄ペルセウスが舞い降りた.彼は自分がついさっき倒した魔女メデューサの首をケトスに見せた.メデューサは自らが見たものを全て石にするという恐るべき力を持っていた.その力は首だけの姿になっても衰えておらず,メデューサに見られたケトスは石に,それも巨大な岩になった.こうしてケトスを退治したペルセウスはアンドロメダを助け出した.やがて2人は結婚し,王と王妃となった.
以上が物語の内容であるが,「勇者が悪者を倒して姫を助ける」という構図が見事に当てはまっている.似たような話はほかの地域にも残されているかもしれないが,ゼ●ダの伝説やドラ●エなどの大ヒットゲームを作った人たちはこういった話を参考にしてストーリーを作ったのかもしれない.そして,そのストーリーを使ったゲームが大ヒットし,そのゲームに倣った作品が多く作られるようになったため,「勇者が悪者を倒して姫を助ける」というよくある構図が出来上がったのかもしれない.
錬金術師を描いた超大作アニメもあったが,あれだってそうだ.元ネタはまぎれもなく錬金術だ.賢者の石,ホムンクルスといった言葉を聞けば,もうあの作品しかないと思う人もいるだろうが,それらもアニメ独自の設定ではなく,元々は実際に古代の世界で存在した錬金術に関するキーワードだ.さらには実際にいた錬金術師の名前を冠する人物も登場している.また,錬金術とは関係は薄いが,古代ペルシャの王クセルクセス1世とその王妃アメストリスの名前も,アニメの中では文明の名前もしくは国名として登場する.
要するに,大ヒットした小説,アニメ,漫画,ドラマなどの物語は,歴史上の出来事や伝承などを参考に作られたものも存在するということである.
物語を作る材料に困ったのなら,古代から現代までのどこかの時代,日本や西洋,中国などのどこかの国の歴史を調べて,それを参考にして作るのが有効だ.むしろ,ストーリーを作るにはやはり歴史上の出来事(戦争や事件)などが役に立ちやすいであろう.