Chapter短編 生まれ理由
前回の謎が分かります。アザミ目線です。
僕は、憎い記憶しかない場所に来た。
憎いなら来なきゃいいって思うだろうが、僕自身が変わらなきゃいけないんだ。
これからのためにも・・・
「じゃあ行って来る」
「うん・・・気をつけてね」
ブランカと会話してから家を出た。ブランカは出かける予定があったらしいが、僕は対して気にして無い。
「・・・はあ。まだ怖いんだな」
ムカつくほど懐かしい建物が見えてきた。
蔦が巻かれた対して大きくない建物。錆びれた門を開けて入った。鳥肌が立つ嫌な音を立てて開いた門に、ビクッとした。
入ると見知らぬ子供達が遊んでる。知らない僕が来たのを気にしながらも遊びの続きをしてる。
「君は・・・」
僕を見た途端、懐かしい顔をした初老の男が現れた。
「・・・っ園長」
「久し振りだね。アザミくん」
昔より白髪も目立ちシワも増えた。顔をクシャッとさせながら笑って話した。
「君が来たということは・・・」
「両親のことで・・・」
僕の表情で何を言いたいのか分ったようだ。そういうところは、昔から何にも変わんない。
唯一の大人の中で、僕を認めてくれる。
園長は僕を応接室に連れて来た。
ここは、昔から悪戯をするとこの部屋に連れ来られて説教をされてた嫌な記憶しかない。
「この部屋・・・懐かしいだろ」
「はい・・・」
苦笑い気味に言ったら、園長は、ウワッハッハッと豪快に笑った。
「さて・・・話だったな」
園長はコーヒーを僕に差し出してから座った。
「ありがとう・・・話は・・・」
「君の両親はな、詳しくは分らないんだ」
え!?どういう意味だ?
「アザミくんが、来た時・・・赤ちゃんの頃に君の御両親が来たんだ。それで・・・」
園長は懐かしそうに目を細めた。
・・・・過去・・・・
「どうかしたのかい?」
「あの・・・園長さん。この子を・・・・お願いします」
黒い髪が汗のせいか、額に張り付いている。女は、その髪を直すこと無く、自分の赤ちゃんを優しく支えながら、園長に話をしている。
「訳を話して頂けませんか?」
「・・・すみません」
目を伏せてる女。訳を話せないようだ。
「将来、貴女の御子息が聞きたくても?」
「っ・・・あの子には、私達のように苦しんでほしくないの」
女は言いたいことを言ったら走りさって行った。微かに目には涙が浮かんでいた。
「どういう・・・意味でしょうか」
訳が分らないまま、自分を見つめて笑ってる赤ちゃんを見ているしか出来なかった。
「・・・というわけです」
「・・・・」
園長は全て話し終え僕を見た。
っ嘘だ。両親は僕を捨てたんだと思ってた。信じたくない。今まで僕を捨てたんだって、ずっと恨んでたのに・・・それなのに・・・
「そう・・・」
「すまないな・・・詳しく話せなくて」
寂しく喋った園長に焦った。園長は何も悪くない。
「・・・では、僕は帰ります」
「あぁ・・・また来なさい。例え何があっても、ここは君の家だからね」
「!?」
家?ブランカと一緒の家だけが僕の居場所だと思ってた。
「何だかんだ言って皆アザミくんのこと心配してたんだよ。悪口とかあったかもしれない。それは子供だったから。たまに連絡を取り合うんだ。そうすると、みんながアザミくんのことを聞くんだよ」
くっ。泣くな。こんなところで・・・
信じたくない、信じたくない、信じたくない・・・
「無理して我慢すること無い。泣きたいなら泣けばいい。君には、もう甘えれる場所があるんだろう?」
なんで分るんだ?僕にはブランカがいる。ヨメナがいる。ミントがいる。
「私だって・・・これでも君の親だからね・・・もちろん他の子達もね」
「・・・っ・・・ありがとう・・・ございます」
僕は堪えれなくて涙を流した。信じても良いんだよな?もう、怨まなくても良いんだよな。
「おかえりなさい!!」
「ただいま」
僕が帰ると、笑顔で迎えるブランカ。
いつものように、ブランカにキスをして家に上がる。
「・・・アザミくん」
「なに?」
席に着くとお茶を出して、ブランカも座る。座ったらブランカは、話し出した。
「今日、ヨメナくんに会ったの」
「うん・・・」
この際、ヨメナをブっ飛ばすと考えたのは無視して話を聞いた。
「ヨメナくんはアザミくんの両親を見つけることは出来ないって・・・」
「あぁ。見つけることは出来なかったよ」
「その理由はね、両親・・・私の両親もだけど自分の能力で消えたんだって」
どういう意味だ?ブランカの両親も・・・それに消えたって・・・
「その理由は・・・・“愛”だって」
「あい?」
「ホントは私達の両親達が愛し合ってたの」
なるほど。だけど、別の人とくっついたんだ。
でも、なんでだ?
「・・・それ、私のせいかも」
「ブランカの?」
「正確には、私達の一族かな」
そういえば、ブランカは秘密にしてた事があったな。なんで、秘密作るんだよ。僕が頼りにならないか?
「でも消えるって・・・」
「・・・能力で自分達をこの世からいなくなれって・・・やっぱり好きだったから・・・他の人と愛せないんだって・・・昔から変わらなかったみたい」
なんだよ、それ・・・僕達が、くっつかない限り一生そうなのかよ・・・消える理由は何だよ。
「私の母さんが能力者で父さんは普通の経営者だったの」
経営者が普通かどうか分らないけど・・・
「僕の父が能力者・・・・・?」
「アザミくん?」
「・・・おかしい」
何かが変だ。
僕の発言に頭を傾げるブランカ。
「園長は、女が僕を孤児院に渡したって」
「で、でも!!」
「ああ。僕の父が能力者だろう。祖父も・・・」
じゃあ・・・
「「女は何者?」」
ブランカも不思議に思ったようだ。
女は、知っていたんだ。父が消えることを。もしかして、話したのか?能力のことと、消えることを・・・
「なあブランカ・・・お前の父さんは?」
「・・・行方不明」
どういう事だ?消されたいのか・・・自ら消えたのか・・・
「あのね、私のお父さんもアザミくんのお母さんも、それぞれ愛し合ってた。それは確かなの。でも、真実を知って一緒に消えることを望んだの」
「子供を放置してかよ。子供より自分達が大切なのかよ!!」
更に嫌いになった。ムカつく。
「でも、消えなくて良かった」
「え・・・」
「アザミくんに会えたから!!」
笑顔で僕に言うブランカ。それが愛しくて、心の中の黒い靄が消えようとしていた。
「・・・僕も思ってるよ。ブランカやヨメナやミントに出会えたから」
「もしかして母さん達は、未来で楽しいことも知らないままいなくなって欲しくなかったのかも・・・」
「例え、辛いことばかりでも・・・楽しいこともあるから・・か」
それだけのために?もし、ブランカ達に会わなかったら、僕は怨んだままだった。知ってたのかな?先祖達は、こうなることを・・・いつか、愛し合うことも・・・
「私・・・もう過去に囚われない。今を愛して、今を生きるんだ」
「そうだね・・・デコボコ道でも綺麗な道でも、歩いて行くさ」
これ以上、誰も悲しむことのないように、愛した人を泣かせないために・・・僕は戦い続けるよ。
ちょっと意味が分りにくいかもしれません。