第36話 自己紹介は、イケメンリア充の為にある
お久し振りです。
二学期始まって忙しくなっているにも関わらず、クレしんとかポケモンとか久々に見たくなって見ちゃうっていうどうしようもない人間が居ました。自分でした。
因みに団体臨時伊豆するがひまわり号、しっかりとコンデジで撮影しました。その日はそれだけでテンション上がりまくりでした。
「よーし、これで私の話は終わりだ。後は好き勝手、親睦でも深めてろ」
僕のクラスの担任──小澤望先生はくぁと小さな欠伸をして気だるげに教壇を降りる。教職員用コロ付き椅子にドカッと腰を掛けた。勿論、スレンダーな先生が座ってもそんな音は鳴らないので、あくまでも比喩的な擬態語のようなものとして受け取って頂きたい。
始業二日目、まだ授業時間はHRが主体だが、明日はついに春休み明け課題テストが待っている。はぁ……勉強しないとなぁ。
今は一時限目。まぁ見えているが、これから自己紹介という謎のセルフプレゼンテーションが催されるようである。さて、僕はどうすべきであろう。まぁ正直誰がどうとか、別に僕に関係ある訳じゃないしどうでも良いんだよなぁ……。二時限目まで寝てるか……。
机に突っ伏し、睡眠を再開する。微睡みからの眠りが最も気持ちが良い。至高と言えるだろう。
僕が寝入ろうとすると、教室のほぼ中央の席から声が発せられる。
「じゃあ、皆で自己紹介、始めようか」
言い出したのは、優しそうな爽やかフェイスで女子達を魅了しそうな少し茶色っぽい髪を持つ長身男子。
アレは、鳥羽山……何だっけ? ゆ、ゆ……優人……? ん? 灯油……んな訳ないか。
……あ、うわぁ眠気消えてきた。くそ、気分悪い。
爽やかフェイス鳥羽山は聞いていた通りの人気者らしく本日も「おお、やろうぜ」「やっぱそれだよな」「やろやろ」とか言う奴もちらほら。その他リア充じゃないサイレントマジョリティも、少し驚き気味だが目配せして「なら、やろっか……」みたいな雰囲気を作り出している。すぐにクラス中を掌握するとか流石イケメンリア充だな。まぁ世の中の大抵のことはこういう奴に任せとけば何とかなる。人間、おんぶに抱っこは赤ちゃんの頃からの特技だ。
僕がヘラヘラと下らないことを考えていると、鳥羽山が辺りを見回していることに気づく。そして座ったまま言う。
「じゃあ俺から言わせてもらうよ。言い出しっぺだしな」
鳥羽山は立ち上がり、にこりと笑う。
「俺は、鳥羽山優太」
あぁ優太ね優太。はい了解。やっぱどうでも良かったわ。もう僕ほぼ正解だったし。
「サッカー部に入ってる。まだ皆、新しいクラスで緊張してると思うけどそのうち慣れてくるとだろうし、俺も皆と仲良くしたいと思ってる。気軽に話しかけて欲しいな。これからよろしく」
鳥羽山は終始淀みない口調で、自己紹介をつつがなく終えた。
何か上から目線でクラスの中心っぽさを出してる辺り、いけ好かないなぁ……コイツ。「皆緊張してるだろうけど」って、自分はしてないけど皆はしてるから俺が中心になって仲良くなってやるよ感がヒドい。貴様は俄教師か。
しかしクラスは、その地味上から目線に気づいていないようで羨望の眼差しを鳥羽山に向けていた。
彼の素晴らしいスピーチを受け、周囲は俄に沸き立つ。
「いやいや、優人くん、自己紹介要らなくね? 優人くん、知らない奴いないっしょぉ」
どうやらあの調子乗ってそうなクソガキ坊主もクラスカーストでの良い位置を狙っているらしい。見た目通り、お調子者として場を盛り上げるという感じか。うるせぇ……。
鳥羽山は笑って返す。
「そんなことないって。俺なんて知らない人、結構いると思うけどな」
「またまた~、ケンソンケンソン。じゃあ聞いてみる? 優太くんのこと知らない奴、手上げー」
一部のリア充はアハハとか笑っているが、他は突然のことに驚いている。
僕はコイツが果たして「ケンソン」という漢字を書けるのかが気になるぜ。
「ほ~ら~、皆知ってるってよぉ?」
んな状況で手上げる奴がいるかこのクソガキ。
「そんな急に言って、皆、手上げる訳ないだろ?」
「あ~それもそ~だわ~。ってかやっぱ優太くん頭良いわ~。空気読んでるわ~」
そんなんで空気読んでるとか、上司に「俺の案に賛成じゃないやつ、挙手」とか言われて手上げない僕の親父、どんだけ空気読んでんだよ。空気読みすぎてそのうち「空気を読む者」として崇め奉られるレベル。っていうか、単にお前の頭が悪いだけだ。
なおもクソガキは続ける。
「んーと、じゃあ俺のこと、知らない人!?」
リア充グループを中心に、ちらほらと手が挙がっていく。皆ノリ良いなぁ……。
クソガキは思いっきりツッコミをかます。
「いっぱいいるんかい!」
クラスが初めて笑いを見せた(なお失笑の模様)。
「あ、じゃあ、ここで俺の自己紹介、しちゃうけど? 俺、杉山圭斗って言います。まぁ優太くんと並んでサッカー部の二枚看板って言われてるくらいイケメンなんだけど、あ、これホントだからね? まぁ、彼女とか別に作っても良いかなとか思ってるんで、よかったら女子は告っちゃって下さい。すぐ付き合っちゃいます」
再びクラスに笑いが起こる。冗談と分かっていながら、クソガキの弁舌に魅了されているようだった(呆れの模様)。アイツ、舌よく回るな。
さらっとクラスのリーダーとなった鳥羽山、それにくっつくようにクラスの雰囲気を作っていったクソガキこと杉山。彼らは、一体何者なのだろうか。当然僕にはあんな芸当できないし、そもそもやる気がない。何であんなことをするのだろう。青春を手玉にした道化師は、その先に何を求めているのだろう。
僕には分からないことだった。
『余計なことしないでよ』
耳の側で囁かれた言葉を、しっかりと覚えていた。
コイツはヤバい。直感的にそう思ったのだ。
果たして彼は──鳥羽山は、あの時何を見ていたのだろうか。僕でもなければ、彼女でもない。その瞳は別の方向を向いていた。
僕は鳥羽山から視線を外し、三人のクラスメイトをちらと見遣る。
大川井縹は心底退屈そうに、四ノ宮紅葉はおーと、感心するように、由比藤紫苑は無表情で興味なさげにそれぞれ鳥羽山を見ていた。
そんなことはないと思いつつ、絶対に食い潰されるなよと念じる。
再び机に突っ伏す。
自己紹介なんてどうでも良い。僕に面倒が降って来なきゃそれで良い。
そのままゆっくりと、眠りに落ちた。
HRやら何やらが終わり、四限も終了する。今日は帰りも何かやることがあるらしく、帰宅はおおよそ三時ほどになると思われた。
よっこいせと立ち上がり扉から廊下に出ようとする。しかし刹那、眼前に人影が現れる。黒髪のセミロング、深い青色の瞳の女子生徒。誰もが認める学校内No.1美少女、大川井縹。
大川井さんは両の手を腰に当てて、僕を見上げる。っていうか睨み上げている。
えー、何この人……。
そう思っている間にも、クラスにひそひそ話が蔓延していく。
「誰アレ?」「誰って、大川井だろ」「ちげーよ。あの……何か、いる奴」「あーね。あの変なのっしょ? 寝てた奴じゃん」「そうだけど、マジでアレ誰?」「いや、知ってるわけなくね? 寝てたしアレ」「なーんか大川井と仲良さげじゃねアレ」「それなー。昨日もなんか一緒にいなかったっけ?」「それもそーだし、転校生とも知り合いっぽくなかった?」「なーんかボッチくんのくせにイキりすぎちゃう? あれでボッチアピールとか普通に引くわー」「いやいや、キモいくらいにしといてあげなよ」「あーそれなー。ってかそれの方がひどくねー?」「あそっか、ヤッベー。キモいぐらいにしとくわー」
……おいこら殺すぞ。
思ったのは、僕の心配が杞憂だったってこと。大川井さんがヘイトを受けるなんてそんな事はあり得ず、結局は僕が「キモい」呼ばわりされるだけだった。なーんだ、何の心配も要らないじゃん。これで自宅警備する覚悟できたわ。
だんだんと、教室が僕達を見るようになってきた。
嫌な気分だ。
大川井さんは顎でクイッと僕の後方を示す。
振り返って見ると、弁当箱を持った紅葉と、その後ろでさらに僕を見据える紫苑の姿があった。
退路を絶たれたってことか……。
げんなりして大川井さんを見る。
「何ですか……?」
「着いて来なさい」
大川井さんはそう言って踵を返す。
僕は落胆してすごすごと後に続いた。
最後までお読み下さりありがとうございます。
時間空けたくせにこんな内容かよ、と、自分でも思いましたが、時間がかかっているのは自己ノルマである3、4話ストックを達成する為だったのでお許し下さい。
次の次から漸く別の話に切り替わるので、よかったら読んでやって下さい。よくなかったらクソが! とか思いながら読んでやって下さい。
あと、ブックマークとか感想とか、是非是非宜しくお願い致します。




