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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第一章 入部編
4/69

序[3]

投稿遅くてすみません。ダラダラですみません。今回短くてすみません。

でも、ようやく「序」が終わります。

終わるの遅くてすみません……。

 翌朝、例の丸眼鏡教師清水(しみず)五十六(いそろく)に呼び出された。およそレポートを提出しろという催促と思われた。

 面倒くさいなぁと思いつつ、たらたらと歩き職員室内の清水先生の机を訪問した。

 先生はパソコンとにらめっこし、カタ、カタ、とおぼつかない手取りでキーボードを叩いていた。

 こちらには気付いていないようだったので、レポートをホイッと机の隅に着地させる。


「おはよう水野」

「おはようございます。さようなら」


 挨拶していい気持ち! と思って帰路に就こうと踵を返す。するとぐいっとセーターの裾を引っ張られた。


「えっ……、いや僕、男の人とは、ちょっと……」


 可愛い女子にされたらドキドキで脳出血する気もしなくもないが、今はちょっと嫌悪というか恐怖しかないんだけど……。

 振り向いて先生を引き気味に見る。すると清水先生はチッ、と舌打ちして睨み付けてくる。


「そういう意味じゃないから。待てよこの野郎って意味」

「言葉が暴力的ですよ……」

「一つ良いことを教えてやろう。言葉の暴力は暴力じゃないんだ」

「そんな教育していいのか……?」


 色々とヤバそうな発言をしているのだがこの人。教育委員会に訴えるぞと言おうかとも思ったが、面倒くさいし度胸も無いので諦めて忘れることにした。


「で、まだ僕をこき使うんですか?」

「そんな覚えないんだけどなぁ。……まぁ用はあるよ、二つ。まず一つ。お前はレポートを遅れて提出しました。さて僕に言わなきゃいけないことがある。なんだろう?」

「照覧あれ」

「舐めてんの?」

「遅れてすみませんでした僕が悪かったので腹パンだけはやめて下さいお願いします」

「よし、良いだろう」


 先生は突き出していた右手を引っ込め、レポートに目を通す。実力行使は本当に問題なのでは……? いやでも僕弱いからな。もう弱すぎて受け身のプロ。よぉし、もうどんな暴力でも受けちゃうぞ?

 先生ははぁと吐息を漏らし、顔を上げる。え、何? 問題点有りなの? 僕的には満点が有りだと思ったんだけど。


「……言いたくないけど、良く出来てる。ほんっと、ちゃんとやれば良いのになぁ」

「あっ……どうも……。いやでも、能ある鷹は爪を隠すって言いますし」

「いやぁ、そういう混ぜっ返しもなければ尚良いんだけどなぁ」


 先生は、もはや癖となりつつある何度目かのため息をつく。

 そして釘を差すように僕を睨んだ。


「なぁ、これからはもっと早くに……、っていうか期限までに出せよ?」

「出せてたらこうなって……」


 すごーく睨んでた。ふえぇ怖いよぅ……。


「……いや、善処しますはい」


 これで大丈夫だろ。と、鷹をくくっていたのだが。


「それは出さない奴の言葉だな?」

「すみませんでしたこれから出しますから今すぐその手どけて下さいお願いします」


 またしても僕は先生の怒りを買ってしまい、今度は襟をぐいっと握られた。そろそろ本気で委員会に訴えても良いレベル。っていうかこの人絶対ヤンキーだったでしょ……。

 清水先生はそんなのお構いなしに、しれっと話題を切り替える。まぁ僕もそっちの方が良かった。


「で、君の部活の話だけど」


 言われて一気に疲れが増した。

 内心げんなりしつつ先生に尋ねる。


「……何か有りますか?」


 とりあえず聞くだけ聞いておかないとな。この人もうその気みたいだし。

 清水先生は丸眼鏡をキランと光らせ、奥の双眸は見えなくなる。え、何? コナン? 真実っていつも一つなの?


「フッ、君に打ってつけの部活があるんだ」


 いやそれ完全に最初から入れようとしてたでしょ。

 僕が疑いの眼差しを向けていると、先生はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「実は……」




「あのぉ、僕本当に行かなきゃダメですか? 僕は別に行かなくて良いと思うんですけどね。入部したならしたで休めば良いだけの話なので、ちゃっちゃと入部届書いて帰りたいんですけど、もう。本当にダメですか?」

「うーん、ダメだねぇ。君のその甘口カレーにメープル入れちゃったような甘ったるい提案は到底受け入れられるものではないねぇ」


 はっ、その甘さ。僕が設定したアンタの甘さより下だな。つまり先生の方が甘いっ。


「受け入れられないなら破棄なり黙殺なりして、攻撃して下さいよ。敗れた僕は潔く帰宅するんで」

「じゃあ、そのためにも行こうか? そこでなら跡形も残らないくらい攻撃してもらえるよ。良かったね」


 えー、何それ。相手どんだけ頑張っちゃってんの? 粉骨砕身で粉になっちゃう骨と砕かれちゃう身は、頑張った人じゃなくて攻撃された人の骨と身だと思う。なるほどこれが力の限りを尽くすという事なのか。もうぶっ壊せねーぜ! 的な意味で。

 げんなりしながら、階段を一歩一歩重々しい足取りで上っていく。

 放課後に職員室に来いと言われ、行ってみたら部室に行ってみよう、であった。

 僕は、軽く部活についてのレクチャーがあって然るべきだと思い、訊いてみた。すると回答は「部活として活動していることが部活動内容」と言われた。意味不明だし、当たり前のことのようにも思える何とも要領を得ない答えだった。

 別にもう部活はどこでも良いんだけどな。どうせサボっ……否、体調不良による欠席が目に見えているからね。

 しかしそんな僕の思いなど露程も知らず、いや知っててやってんのかな? まぁ、いいや。とにかくついに北校舎三階に辿り着いてしまった。

 この校舎は特別教室が連なる校舎だ。北校舎と言ってはいるものの古い校舎で、何十年も前からあるらしい。通常は一階の実験室や二階の美術室ぐらいしか使われないから、僕も三階に来たのは初めてだった。

 廊下は驚くほど日当たりが悪く、陰鬱な印象を受けた。教室の中に目を遣っても、ガラクタと似付くような教材が乱雑に放置されていて、特別教室とは名ばかりである。

 正直閑古鳥すら鳴けないのではと危惧してしまうほどの静けさの中、廊下を東側へと進んで行く。

 そして廊下の突き当たり、最も隅の教室の前までやってくる。もっともこの校舎の東端はほとんど階段から離れていないのではあるが。

 教室の横開きドアのすぐ横には、「文芸部」と筆で書かれたと思しき木札が掛かっている。なかなかの達筆である。僕なんかは百万年かかっても書けないだろう。


「文芸部、ですか……」

「活動内容は、何となくは知ってるだろ?」

「いや知ってるって程じゃないですけど……」


 文芸部。全部が全部SOSしたり謎解きをしたりする訳ではなく、小説やら詩やらを書く部活、そんな感じだった気がする。それって部活じゃなくて同好会じゃねとかと思っちゃうんだが……。

 とにかく僕が先生に言われてのこのことやって来たのは、文芸部である。

 先生は笑顔になる。うわぁ、嫌な笑顔……。


「さ、開けてご。Let's open the door for your youth!」

「発音良いですね……。っていうか何ですか? 青春へのドアって……」


 清水先生は意外にも流暢なイングリッシュで僕を促す。いや合ってんのかその英文? なんて眼鏡っ面だろう。

 先生はなははと笑ってドアに手をかざす。


「ちょっと……何やってるんですか?」

「え? ノック……」


 いや真顔で言われても……。さも当然のことだろうといった様子で先生はキョトンと首を傾げる。


「いや、そういうことじゃないんですけど。勝手にやんないで下さい」

「え? 何? 緊張してんの? 怖いの?」


 先生がバカにしたように笑う。やっぱ嫌だわこの人……。


「ええ。緊張してますし怖いですよ。だって人を木っ端の微塵にもしてくれないサイヤ人が居るんですよね? そんな気持ちになるのも当然でしょ」

「サイヤ人とは言ってないけど……。っていうか身も蓋もないね……ははっ……」


 先生は乾いた笑いを浮かべ、コンコンとドアをノックする。ってかしちゃうのかよノック。

 数秒待てど、中から返事は無い。


「居るんですか? 人」

「うん。居るよ。彼女はそういう娘だから。……ほら、君がドア開けないと」


 えぇ……と抗議してみるものの効果はなく、先生は僕の手を掴んでドアに掛けさせる。金属部が嫌に冷たい。

 先生を睨むが、ニコニコ顔である。渋々諦めてドアを横に引く。ガラガラと音を立て、ドアが開いた。

 教室の中には、一人の少女が居た。

 椅子に座り文庫本に目を落としていた。


 この出会いが僕のスクールライフを一変させたことは、言うまでもない。

最後までお読み下さりありがとうございます。

ようやっと次から第1話という感じです。

もっと暇になってほしいです……この世が。

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