プロローグ
「あー、女になりてー。」
俺の名前は有谷実どこにでもいる普通の高校二年生だ。
「は?お前何言ってんの?」
こいつは杉浦翔也俺の親友で俺と違ってすごくモテる。おまけに勉強もできて運動もできるまさに俺たち男の敵である。
「だって女子って良くない?告白もされる側だし?運動できなくてもかわいいじゃん?」
「まー、そうだな」
「それに色々贔屓されるし、男子とは大違いだよ。」
「そういうもんなのか?」
「モテるお前にはわかんねーよ」
そんなたわいもない話をしていると昼休みが終わり、午後の授業の準備をした。俺は特に頭はいい方ではないので、授業は好きでも嫌いでもない。普通の学校生活をしている。
放課後きつい部活を終えて帰りの準備をしていると同じ部活の佐藤がマネージャーを部室裏に連れて行くのが見えた。
「本当はこういうのはダメだけど、ちょっとくらいなら。」
俺は気になったのでこっそり部室の横から様子を伺った。佐藤は顔を赤くしながら言った。
「ずっと前から気になってました!付き合ってください!」
やはりそう来たか。佐藤はマネージャーと話すときだけ動揺してたからな。
「はい、私もずっと前から佐藤くんの事気になってました。」
マネージャーは両手を前でモジモジさせながら返事をした。佐藤の顔がみるみる笑顔に満ちた。
「よっしゃー、これで俺も彼女持ちだ!」
佐藤は飛び跳ねながら叫んだ。
(部活終わりなのに元気すぎだろ!そんなに嬉しいのか?それにしてもあのマネージャーが佐藤の事好きだったとはな。これでカップル成立かー、彼女を持ってない俺にとってはきついぜ。見に来なかった方が良かったかも。)
「じゃーいっしょに帰ろうぜ!」
二人は手を繋ぎながらこっちに向かって来た。
「うん、私も佐藤くんの事もっと知りたい。」
(やべ!早く戻らなきゃバレちまう。)
急いで部室に戻り、バレないように普通に振る舞った。
「はー、俺も彼女欲しい」
帰り道、ため息をつきながらそんな事を言ってしまった。
(だってしょうがないだろ?あんな事があったし?なんで告らないかって?振られるのが怖いに決まってるだろ!)
この世にはリア充と非リア充がいる。俺はまさに負け組の道へまっしぐらだ。
「クッソ!リア充爆発しろ!」
そんな愚痴を吐きながら歩いているといつのまにか家についていた。
(妄想って恐ろしい)
「ただいまー」
家に入ると香ばしい匂いとご飯の準備をしている母の姿が目に入った。
「お帰りなさい、ご飯できてるわよ。」
「わかった。」
運動部の割には小食な俺はすぐにご飯タイムを終えて、風呂に入った。
くつろぎながら、もし自分に彼女ができたあとの事を考えていると一時間が経っていた。
(やはり妄想が恐ろしい)
これ以上浸かるのはやばいので流石に風呂から上がった。
自分の部屋に戻り学校で出された宿題をさっさと終わらせたら、時間は九時に迫ろうとしていた。
それから自分の好きなゲームをして、十一時ごろ寝る準備をして布団の中に入った。
(俺にも好きな人くらいいるんだけどな)
( そう、俺にも好きな人はいる。みんなに優しくて、可愛くて……いや、これ以上考えるのはやめよう。
悲しくなるだけだ。俺も恋がしたいなー。)
そんな事を考えながら深い眠りについた。