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崩壊寸前の国を人間破綻者が救う時  作者: 重松 ダークサタン
2/2

戦狂

寒い、寒い、寒い。

 多分温度は氷点下を下回っているだろう。

 手が悴んで機関銃のグリップを上手く握れない。

 ハンドガードに手を携えて機関銃を持ち上げ白が永遠に続く大地の先の先を見据える。

 雪の上でうつ伏せの状態のまま敵の様子をスコープ越しで偵察している。

 永遠の白の上に敵影は見つからない。

 「こちらデルタ0、こちらデルタ0。敵影なし。攻めくる様子もなし。離脱許可をもらいたい?」

 先ほどまでハンドガードに携えていた手を迷彩服の胸ポケットに引っ掛けていたレシーバーに手を伸ばす。

 そしてレシーバーを口元まで持ってきたら白い息を吐きながら話しかける。

 するとそのレシーバーから途切れ途切れの声が聞こえる。 

 『こちらオーバーロー9、こちらオーバーロー9。報告承った。離脱は許可できない。

もう少しだけ偵察を続行しろ。』

 その途切れ途切れの声は続行を命令する。

 正直続行の意味を問いたいぐらいだが上司に逆らうのは気が進まない。

 今は戦争中だ。

 上司に逆らえば昇進にも影響するしご機嫌を損ねてしまえば自分の立ち位置が危ないかもしれない。

 だからこの命令通り偵察は続行する。

 「こちらデルタ0、こちらデルタ0。了解した、偵察を続行する。」

 だから故に何の文句も言わず偵察を続行した。

 偵察を続行し続けてもう2時間は経っているだろうか。

 うつ伏せの状態で鼻歌を歌いながらまだ遠くを眺める。

 しかし何回この作業繰り返しても見えるのは結局は永遠に続く雪原だけである。

 でも10分ぐらい前から急に風が吹き始めた。

 まさに真冬に雪山で遭難した感じでハラハラドキドキする。

 でもその吹雪のせいで体温は奪われ手はもう感触がないほど凍っている。

 スコープも時々手袋でレンズを拭かないと雪で覆われて視界が真っ白い状態になってしまう。

 でも、まあ雪を取り除いても白なのは変わらないが。

 と、あることに気づく。

 胸元が揺れているのだ。

 その揺れている胸元に手を伸ばす。

 そこには先ほど定時報告のために使用したレシーバーが引っ掛けられている。

 そのレシーバーから途切れ途切れの声が聞こえて来る。

 『こちらオバーロー9、こちらオバーロー9。そちらに巨大な吹雪が向かっていることを確認。デルタ0すぐにその場から離脱し近くの遮蔽物に身を潜めろ。偵察は一時中止。』

 その声は平静を保ちながらも少しだけ焦りを感じた。

 何かあったのだろうか?

 しかし偵察につくような下端が気にしてもしょうがないことだろう。

 それに死にたくはない、絶対に。

 だからとにかく今は避難を最優先して吹雪を乗り越えよう。

 「こちらデルタ0、こちらデルタ0。了解した。すぐに避難を開始する。」 

 すると俺は普通の声でレシーバーに避難の開始を報告するとレシーバーを胸元に引っ掛け直し機関銃のベルトを肩にかけ雪原の中を歩き出す。              

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