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赤い舌
第九章赤い舌
悪夢を見た
真っ白な
曼珠沙華の中
安島が手を振っている
”三上”
僕の名を呼んで
白い曼珠沙華の中から
白い手が伸び
安島に絡みつく
僕を睨み据え
憎悪の表情をした
日高の顔
”渡さない”
色白の日高の唇から
赤い舌が
安島の首筋を舐め上げ
笑いながら手を振る安島が
日高を抱き寄せ
白い曼珠沙華の中に
消えてゆく
目覚めると僕は
いつも汗塗れで
ありえない幻想に
両手で顔を塞ぐ
僕は
頭が おかしい
煙草を吸いに
屋上へ向う
昼休み
僕は
音楽室の前に座り
日高と西山の
性行為の音を
聴いていた
安島は
何も知らず
自慢の幼馴染を
褒め讃える
色白の肌
成績優秀な事
何も知らずに
僕に告げながら
照れて笑う
頭が
おかしくなる
夕日を背に
佇んで
立ち止まった
”日高”
何を 安島に
求めているんだ
悪夢となり
赤い舌を出し
現れる
”日高”
やめてくれ
僕は 何を想い
この悪夢を
見続けるのだろう
移動教室のない
中間休み
教室の中
呆然と席に
座り続ける僕
「三上?」
安島に名前を呼ばれ
全身が震えた
「顔色 悪いよ」
安島が 僕の顔を覗く
僕は顔から火が出る程
真っ赤な顔になり
打ち鳴らす鼓動に
息を飲んだ
僕は
頭が おかしい