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赤い頬

第八章赤い頬




移動教室




黒板に書かれた文字



”教科書を持って音楽室へ移動”



相変わらず

律儀に僕を呼ぶ安島



縦笛を忘れたらしく

珍しく焦っている



「付き合ってくれ三上」



他クラスの友達に

笛を借りに 行きたいらしい



仕方なく

安島に付き合い

他クラスの教室へ

行く嵌めになった




何とか笛を借りられたようで

足早に廊下を走り

音楽室へ向う途中



突然 立ち止まった安島が

擦れ違った日高に

声を掛けた



「紫乃」



一瞬 振り返る日高が

困惑した表情で

顔を叛ける



安島は軽く

首を捻り

また走り出す



「誰?」



聞き返すだけが

精一杯だった





階段を駆け登り

予鈴が鳴る迄

時間を持て余す



微かに荒い息を吐き出す安島が

頬を赤く染め



「日高 紫乃

 俺の幼馴染だ

 可愛いだろ」



自慢げに 笑い

そして 僅かばかり

不機嫌な顔になる



「最近 避けられてる気がする

 やっぱ照れ臭いんかな

 小学校の頃は

 よく遊んだのにな」



純朴なのか

鈍感なのか



安島には

化粧をする日高が

幼い少女のまま



時が止まっている気がした





防音の音楽室



壁に貼られた

作曲家の絵画

独特の雰囲気



授業内容は

音楽鑑賞で

聴き慣れない

レコードを流される



異質な授業



頭の中では

安島の声が

繰り返す



”俺の幼馴染

 可愛いだろ”



振り返った日高の

透き通る白い肌を

間近で見た事で



なま生しい

実物像が

立体的に脳裏を支配する





安島に手を引かれ

曼珠沙華の赤い花

頬を染めた少女




昼休み

西山先輩と

密会する聖女




この音楽室で

繰り広げられる

官能の世界




聴き慣れない音楽と

安島の声



妖艶に肌を晒す

白い肌の日高が

濃厚な匂いを纏い

安島に絡みつく



何もわからず

笑いながら



「俺の幼馴染

 可愛いだろ」



無邪気に照れる

安島が繰り返し

呪文のように唱える

幻覚と幻聴




僕は

吐き気に襲われていた





多分

寝不足のせいだ





ここ数日

眠れない





悪夢に怯え

眠る事が

出来ない





小学生時代の

友達の姿を見つけ

名前を呼び

駆け寄ると



振り返った友達が

眉をひそめ

困ったように

首を捻り




「誰?」




僕を見て

そう言うからだ


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