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赤い燈

第四章赤い燈



父の煙草を

盗んだ




中学生の

些細な反抗期



田舎町の一軒家




親が寝静まり

ベランダに

座り込む




弱々しい外灯が

点々と灯る以外




暗闇が広がる




隣接する家もなく

家の前の舗装道路の前に

街路樹が植わり



木々の隙間から

遠く離れた家屋の光が

微かに見えた




煙草の先に

使い捨てライターを

燈す



赤い燈



食卓に飾られた

一本の

”曼珠沙華”に

似ている



軽く吸い込み

吹かすだけの煙草



口の中に

煙草の苦味だけが

残る



音もなく

煙草の先が

煌々と燃え



灰色の煙りが

風に煽られ

流れては消えた



何度か吹かした煙草を

軽く吸い込む



喉を通る

煙草の煙り



数回 噎せ

若干 涙が滲み



次第に

煙草にも慣れてゆく




大人の象徴

”煙草”



二本目の煙草に

燈を点け




こんなものかと

落胆する




”大人の象徴”は

木っ端微塵に

打ち砕かれた




ライターの燈を

眺め



煙草をくわえたまま

目を閉じ



眼球の奥に

燈の残像が映り

赤い曼珠沙華の景色が

蘇る



緩やかな太陽の下

女の子の手を引く

”安島”



僕には見せない

優しい笑顔



胸が締め付けられる



深く吸い込みすぎた

煙りに噎せ



微かに滲む涙が

頬を伝う




何故 僕は

泣いているのだろう





帰りたい







友達が居る

住み慣れた町へ





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