赤い服
第二章赤い服
灼熱の太陽
真夏
鬱陶しい汗
学校へと向う足が
重い
陽射しを遮る
学帽を深く被り
溜息しかない
朝の風景
校門を潜り
擦れ違う生徒達に
追い抜かされる
昇降口へ
吸い込まれる
生徒達の足を眺め
虚ろな表情で歩く
体育館と校舎の狭間にある
渡り廊下から
僕を呼ぶ声が聞こえた
「三上」
バスケの赤いユニフォーム
鉄柵の向こう側で
手を振る”安島 弘幸”
朝から
元気な奴だ
運動神経抜群
勉強も出来
そして
容姿も整っている
”安島 弘幸”
気さくで
明るい安島は
女子からも人気がある
唯一の欠点は
僕と友達だと言う事
何ひとつ
優れた要素のない僕は
クラスの中でも
目立たない生徒
たまたま
中学の入学式に
偶然 隣りの席になり
「何処の小学校?」
声を掛けてきたのは
安島の方で
地元の小学校ではないと
答えた僕を
見捨てられなかった
だけなのだろう
リーダー素質のある安島は
クラスでも中心人物
安島を慕う友人も多く
男女問わず
休み時間になるたび
安島の席の周りは
人が集まってくる
窓際の席で僕は
いつしか
安島から目を反らし
窓の外を
眺めている事が多く
誰からも
声など掛けれられる事は
なかった
それでも安島は
移動教室のたび
「三上」
僕の名前を呼んでは
教科書を持って
僕の席に来る
世話好きなのか
面倒見がいいのか
安島の行動は
クラスの中でも
異質なモノに映り
不可解な表情をして
背を向ける
クラスメートの視線が
あまり好きではなかった
体力差がある
安島と僕
運動神経が鈍い僕にとって
体育の授業ほど
苦痛な事はなく
二人組を組まされるたび
当然のように
声を掛ける安島
正直 苦笑するしかない
マラソン大会前日
「一緒に走ろうな」
そんな安島の言葉に
友達の信頼感も
何もかも捨て
僕は 当日
学校を休んだ