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赤い涙

第十章赤い涙



何もする事のない

休日



朝から

何も食べず

食卓に座る



何を見る訳でもなく

虚ろな視線を落とし

用意された握り飯を

ただ 眺めていた



小言を呟いていた母が

溜息を漏らし

食卓の椅子に座る



「何か あったの?」



ただ一言



「別に」



そう答える事が

最善な気がした




「母さんは

 引っ越しに賛成だった?」




母は 何かに感づいたらしく

微かに小さな溜息を漏らし

軽く笑顔を見せた



「最初は 驚いたよ

 どうして 突然 転勤になるのか

 何か問題でも起こしたのかと

 不安にもなったよ


 でもね 今 父さんが勤務している

 営業所の所長さんが

 52歳の若さで亡くなって

 父さんに話が来たみたい


 亡くなった所長さんに

 厳と同じ年のお子さんが居る事を聞いて

 父さんは ひとつ返事で了承したんだって


 母さんは 父さんに

 付いて行こうって決めたの


 厳も 中学の入学前で

 転校させなくて済むって

 ちゃんと 厳の事も 考えているのよ

 何も話さない 父さんだけどね」



母の暖かい言葉は




僕の逃げ道を

塞がれてしまった





”何故 この町に

 引っ越してきた”




唯一 許された

憎むべき

対象物




父の転勤が

正当であればある程




憎む事さえ

許されなくなる






父を憎めば憎む程



ただの親不幸に

成り下がる




父が購入した

僕の机

僕の箪笥

僕のベッド




何不自由ない

僕の部屋




壁に掛かる

制服




感謝しなければ




自分の心を

押し殺しても




感謝しなければ



感謝しなければ





ギシギシに

錆び付いた心




鼓動を打ち鳴らすたび




胸が痛い





赤錆びの

こびり付いた

ザラザラした涙が




頬を伝う




僕の部屋の中




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