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菅やん……その後

マリンタワーへ行って以来、菅やんが公民館へ訪ねてくることが激減した。当然と言えば当然か。せっかく飲み友達ができたと思ってたのに……


菅やんの告白を受ければよかったのかな?そしたら幸せになれたのかな?

終わってしまったことに思いを馳せる。


でも、好きでもない人とは付き合えないし!!

付き合っていくうちに好きになることもあるかもしれないけど、菅やんはどこからどう見ても友達としか思えない。見た目云々とか、そういうことではないけれど、友達から進展しそうにない。

それなのに付き合うとか、それもどうかと思う。菅やんには、もっと似合う人がいるよ、うんうん。



おっさんに荷物が届いたらしく、お礼のメールが来ていた。相変わらず堅い口調のメールに、思わず顔がほころぶ。

やっぱりおっさんについていくべきだったかな……



クリスマスの日は発表会で大忙しだった。

私たちも歌を歌った。事務長がギターをひき、嘱託の本多さんがピアノをひいた。

照明などは甲斐くんがしていたから、実際に私たちがしたことって歌を歌ったくらいなんだけど、来館者が多くてその対応とか、パンフレットを配ったりだとか、そういう業務に明け暮れた。


クリスマスということで、クリスマスソングや、クリスマスにちなんだ発表が多かった。

合唱の講座生の発表なんて、とても素人集団に見えないくらいにすごかった。


発表会が終わると、あとは年末に向けて、暇な時間が続く。会計室に回す書類も、年末前に期限が切られてしまい、あまり仕事はない。


私はここぞとばかりに図書室へ上がり、本の整頓に励む。

クリスマスまでは昇り調子だった来館者も、ほとんどが来なくなって、図書室も閑古鳥だ。


そこで、来年の年始に向けて、展示図書の企画を練る。

以前いた公民館では当たり前のように毎月展示をしていたのだが、どうもこの館に来てからは展示らしい展示をしたことがなかった。

そこで、干支にちなんで、ウサギに関する本を展示することにした。

大人の本も児童書も、絵本も、全ての本の中からウサギに関する本を選び抜き、パソコンで設置場所を展示に変えていく。

こうしておけば、返却時に違うアラート音が出てわかりやすい。

二人の嘱託さんは今まで展示などをしたことがかいらしく、一人は懸命に、もう一人はなにをするでもなく話を聞いている。

私は途中一度ヤル気なく聞いている方へ注意を促する。

が、やはり聞いていない様子。仕方がない。この子にはやる気を以前から感じなかった。配属されている以上、やめさせることも出来ない。

仕方がないのだ。勤務評定などというシステムはないし、わざわざ館長にまで報告せねば、担当替えはあり得ない。

そこまでやるのかと問われれば、最低限の仕事をしている以上、言う必要もないということだろう。

仕方がないのだ。

この、仕方がない風習にはどうしても納得いかないが、本当にこればかりは仕方がないのだ。


出来るだけやる気が出るように仕向け、育てなくてはならない。それが今の私の仕事だ。



ふと気づくと、今日も昼休みを利用してか来ている常連さんがいる。

彼は推理小説が好きで、私も数回本のオススメをしたことがある。

今日届いた本の中に彼が好みそうな本があった。


私はゆっくりと彼に声をかける。

「進藤さんにオススメの本が届いたんですよ」

彼、進藤さんはゆっくりと顔をあげると、

「見せていただいていいですか?」

と聞く。

「どうぞ!」

と私は本を差し出す。

小さい図書室ならではの行為だ。大きな図書館ともなると、常連さんはいても、ここまでのサービスはできない。

小さな図書室に通う人たちにはそうした暗黙のルールがある。

進藤さんはにこやかにその本を借りて帰っていった。

こうして図書室は今日も過ぎていった。

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