vol.2『空』
「どうぞ」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
紅茶をお母さんと瀬川という児童相談所のおばさんの前に出してから、瀬川さんの隣に座っていた空の前にもマグカップをコトンと置いた。リビングではみんなが好き勝手に生活している。それをそわそわしながら見ていたようだ。
「はい、ココア煎れたの。寒かったでしょ?」
空は湯気のたつマグカップと佑羽を交互に見つめて、手を出していいものか考えている。
それを瀬川さんは心配そうに、お母さんは紅茶に口をつけながら微笑ましそうに見ていた。
「遠慮しないで。早く飲まないと横取りされちゃうよ?」
空は佑羽の言葉の意味が分からなかったよう。佑羽がニコリと笑いかけた時、小学1年生の亜美が屈んだ佑羽の背におぶさるように抱きついた。
「ユウ姉〜!!アミもココア!」
「こら亜美!あんた達は後!」
「ヤダ!」
佑羽はため息をついて亜美の頬をむにっと引っ張りながら空に視線を向ける。
「ね?早く飲んじゃいな」
「…ありがと」
まだ戸惑っているようだけど、きっと空も家族の一員になれる。
佑羽は満足気に笑ってキッチンへ戻っていった。
次の日は月曜日での朝食当番は中2の光太と中3の紗香。
「亜美!包丁いじるなっての!危ねぇな!」
「コータのケチ!!アミもやる!」
「あっち行ってろ!ガキは邪魔!」
…若干1名、呼んでないのにちゃっかり手伝ってるつもりな人がいるようだけど。
「あ〜はいはい。亜美、おいで。空と食器並べてきて?」
「えぇ〜」
亜美はあからさまに不満を紗香に訴える。しかし紗香の助け舟は沈没せずに、ちゃんと波に乗れたようだった。
「亜美、いい?空は昨日来たばかりで分からないことがたっくさんなの。空は亜美のお兄ちゃんだけど、知らないことは亜美が教えてあげなきゃね」
さすが紗香。亜美のツボを確実に押さえたわね〜。朝の支度を終えて、リビングに来るなりそんな状況をまのあたりにした佑羽は素直に関心していた。
「しょーがないなぁ。空、来て!亜美がお皿の並べ方教えてあげる!」
亜美は楽しそうに空の手を引く。空も紗香から目配せされて自分の役目を理解したのか素直にそれに応じた。
「朝からすごい騒ぎね〜」
「そう思うなら佑羽も手伝え」
テーブルについた佑羽の前に光太がイライラしながら朝食を置く。
「高校生のお姉さまにそんな時間はもうないの」
「お姉さま〜。言ってる側から遅刻じゃない〜?」
「げっ!!」
紗香の言葉にハッとして、佑羽は慌てて朝食をかきこむ。バタバタと園の中を走り回り、玄関を飛び出したのはいつもよりもだいぶ遅れた時刻だった。
読んで頂きありがとうございました!
2話目なのにまだハルカが出てこない。。(・ω・;)
ごめんなさい↓次は出します!!
こころ的には亜美ちゃん大好きです♪もっと言うと亜美と光太の絡みは愛してます( *´艸`)笑
この2人はじゃんじゃんだしていきたいですね。
みなさんはナジカ園の子供たちでは誰がツボだったでしょうか?
ではでは、感想頂けたら小踊りしながら喜びます♪
こころでした☆