vol.1『ナジカ園』
『ハルカ』の世界に存在する“ナジカ園”は様々な事情で両親と暮らせない子供たちが集まる施設と設定しています。
作者が未熟ゆえにもし実際にそのような境遇の方がお読みになると気分を害されるかもしれません。
上記をご了承の上、読んで頂ければ幸いです。
5歳の時に事故で両親を亡くしてから12年が経った。
その時から比槻佑羽の家になったのはここ、ナジカ園。
今では“家族”の長女代わりとして毎日がんばってます。
「ユウ姉、誰か来たー」
小学3年生のやんちゃ坊主、真人の声で振り返る。
外は久しぶりの雨。きっと雲間から射し込む陽の光を期待して、窓の外を眺めていたのだろう。
そこから見える門の所には傘をさす大小2つの人影が見えた。
「真人、お母さん呼んで来て」
「らじゃー」
“お母さん”というのはこのナジカ園の園長先生のこと。真人はいつになくおとなしく言うことを聞いて、バタバタとお母さんを呼びに行った。
よっぽど暇だったのね、と内心苦笑する一方で、佑羽はと言うとエプロンを外して玄関へ向かう。
ドアベルが鳴ったのと佑羽が玄関の扉を開いたのはほぼ同時だった。そこに立っていたのは地味なグレーのスーツを来た中年のおばさんと小さな男の子。
きっと真人と同い年くらいね。
傘を畳む男の子をちらりと見てからおばさんに中へ入るようにすすめた。
「どうぞ、お上がりください」
「え、えぇ…お邪魔しますね」
おばさんは唐突な出迎えに驚いているよう。佑羽は2人が中へ入ったのを確認してから扉をしめる。
「リビングから姿が見えたんです。驚かせてしまいましたか?」
「いいえ、とんでもない。ところで園長先生のお部屋はどこかしら?」
「いらっしゃい、瀬川さん。ご挨拶はリビングで」
佑羽が答えようとするとちょうど良いタイミングで玄関にお母さんが現れた。
「先生、ですが…」
「何をコソコソと話す必要があるんです?空くんも早くここに馴染めた方が良いでしょう。佑羽ちゃん、お茶をお願いね」
「はーい」
佑羽は先程の真人のように、素直に応じてキッチンへ向かった。
──佑羽ちゃん、いらっしゃい。
ヤカンを火にかけながら、佑羽は幼き日のことを思い出していた。
両親がいない、ということで世間は様々な“特別扱い”をその子に向ける。例えば同情から来る、ほんのちょっとした気遣いも溜りに溜ると大きな重圧としてのしかかる。
それを感覚的に感じて、せきをきったように泣き出してしまったことがあった。
お母さんは優しく佑羽を抱き締めてゆったりとした声色で語りかけた。
──大人はダメねぇ。本当はすごくちょっとしたことなのに、いっぱい心配してしまうのよ。
──おかあさん…ユウはかわいそうってゆわれるの。
──どこが可愛そうなのかしら?佑羽ちゃんはお友達よりもずーっと強い子よ。それはお星さまになったパパやママのおかげでもあるわね。それにね、佑羽ちゃん。ナジカ園にいると悲しい?
──ううん!すっごくたのしい!ユウ、みんなだぁいすきだもん。
──でしょう?私も、みんなも…佑羽ちゃんのことが大大だぁい好きよ!こんなに幸せなことないでしょう。
あの時のお母さんの笑顔は今も変わっていない。
佑羽にはあの男の子、空とも仲良くできるという根拠の無い確信があった。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
一応、ラブストーリーにこれからしていくつもりなので『家族愛の話か!?』という鋭い突っ込みは勘弁してください(>д<;)
家族愛も題材にしていきたいとは思っていますがι
それから前書きに書いた通り、ナジカ園についてはこころの独断と偏見によるイメージで書いてます。。もし気分を悪くしてしまった方、すみませんでした↓↓
これはこころにとってもチャレンジなのでいたらない点もあると思いますm(__)m
それでは、感想など頂けたら泣いて喜びます☆
こころでした♪