【Tips】30年前の世界
*人によってはR15仕様となっています。また、性的描写があります。
子供ならば既に寝静まっているであろう、夜中の十一時頃。裸電球の光が仄かに照らされた部屋の中で、天井から縄で縛り上げられている少女がそこにいた。
少女は虹彩のない瞳をしており、ほとんど一糸纏わぬ姿だった。
一応布を纏ってはいるが、少しでも動けば、スルリとずれ落ちるほどにしか羽織っていない。
そんな少女を、孤児院の院長は煙草を噴かしながら視姦していた。
少女の華奢な身体には無数の縄の痕があり、院長が嗜好するSM関係の試しで出来た傷であった。
彼女の処女を奪ったのも院長であり、その院長に何度も孕まされ、流された事もある。
性的虐待は肉体的な虐待よりも、精神的な虐待であると見られている。
最早、少女は院長に逆らおうという気力がなかった。
院長は麻縄を手に取ると、一冊の本を見ながら、結びの思考に耽っていた。
思考が終わると、院長は麻縄の先を少女の胸元に押し当てる。
少女は小さな悲鳴をあげるや、意識があると院長はわかった。
「さぁ…… 今日はどんな声を聞かせてくれるんだい?」
少女の髪の毛を撫でながら、院長は顔を歪めた。
少女の髪は日本人に多く見られる、黒と茶の間に近い色と云うよりかは、金色に近く、少女の片目の虹彩は青かった。
これは少女の祖父がイギリス系アメリカ人だった事もあり、その遺伝によるものだった。
ただし、祖母は生粋の日本人であり、その娘、つまり少女の母親はハーフとなる。
父親が日本人であるため、少女は四分の一ほど、その血が流れていた。片目の青眼も、それが理由である。
最初の頃、少女は悲鳴を挙げ、院長の行為に抵抗をしていた。
だが、諦めたのかどうかは、恐らく少女にしかわからないが、日に日に院長の行動を受け入れていた。勿論性的虐待を受けてはいるが、そちらも日に日に縄で身体を縛り上げる程度だった。
院長はマンネリとした自分の行動に嫌気が差していた。
いや、むしろ少女が何も要求しないという苛立ちが先に出ていると云った方がいいのかもしれない。
少女はただ院長の行動を受け入れてはいたが、自分から行動をすると云う事はなかった。
院長は少女を天井から下ろすと、髪の毛を引っ張る。
「っ! いぁいぃっ!」
少女は大きな悲鳴をあげるが、声をあげるだけで抵抗はしない。
「るっさい! 黙れぇっ!」
院長はそう云いながら、なおも少女の髪を引っ張りながら、薄暗い廊下を歩きはじめた。
そして、着いた場所は風呂場だった。
風呂場はふたつあるのだが、そのうちひとつは職員用として、もうひとつを子供たち用にとしている。
院長は少女を引っ張りながらも、その臭いに鼻が曲がりそうだった。
態と壊された蛇口からは水が出ない。
つまりは水が綺麗だったのは、いったい何時の話なのだろうかと云うほどに浴槽の水は腐っていた。
酷いにもほどがある風呂場だというのに、子供たちが病気にかからなかったのは、その風呂には入らず、精留の瀧で水浴びをしていたからだった。
それこそ、職員達がいなくなる時間を見計らって、ほんの数分だが、こんな腐った水に浸かるより、何倍もよかった。
少女の目の前には、何が浮かんでいるのかすらわからず、その代わりに異様な臭いが立ち上っていた。
「っっく! くくっ!」
院長は異常なほどに呵々大笑すると、少女の頭を掴むや、顔を水の中に沈めた。
「うぐぅ、ふぐぁ!」
少女が抵抗するように暴れると、院長は抑える力を強めた。
「いぃち! にぃい! さぁあんっ!……」
-―と、院長は長ったらしく数を数えていく。
「しぃちぃっ! はぁっちっ! きゅうぅう! じゅゅうっ!」
十まで数えると、院長は少女の頭を引き上げた。
「げぇえっ! げぇっ! ほぉっ! あぁっ! がぁはぁっ!」
少女は咳き込み、息を整えようとしたが、それすら許されなかった。
院長は間髪入れずに少女を水責めにあわせる。
何度も、何度も……。暗闇に染まった風呂場で、水の中に落ちる音よりも、鈍い音が響いていた。
それがいったい、何分ほど繰り返されただろうか?
院長は少女の頭を引きあげると、タイルの上に寝転がした。
「興が冷めた! 今夜はもう戻っていいぞ!」
そう云うや、院長は浴室を出ようとした。
それから院長は五分ほど脱衣所で煙草を吸っていた。
それは少女の様子を監視していたからだったのだが、少女はいっこうに出てくる気配がなかった。
疑問に思い、院長は浴室の電気を点け、少女のもとへと駆け寄った。
「――くっ!」
院長は少女の顔を見るや、口を押さえた。
少女の目は血なのか、それとも浴槽に浮かんでいる藻が目の中に入ったのか、わからないような状態だった。
そして、口の中は水が大量に含まれていた。
「くぅそぉおおおおおおおっ!」
院長は少女に心臓マッサージを試みるが、既に引き上げてから五分以上も経っているため、最早手遅れだった。
院長はどうしようかと小一時間悩んだ。
そして、悪魔の囁きを耳にする。
この孤児院の下には、戦中使われていた防空壕がある。
そこは今や使われていない場所だ。
自分がこの孤児院の院長となった時、家主から話を聞いていた。
そうだ……この死体を、その防空壕に捨てればいい……
職員や餓鬼どもには、貰い手が決まったと法螺を吹けばいいだけだ……
そう考え、院長は少女を抱えた。
少女を布団に連れて行く時、抱き抱える事はあったが、これほどまでに重たかっただろうか?
風呂場から裏庭への扉を開けると、外は何時の間にか大雨になっており、時々遠雷が鳴り響いていた。
ただでさえ重たい遺体を抱えている上に、泥濘と化した地面が、余計に足取りを重たくしている。
榊山を少しばかり下り、そこから横道に逸れ、しばらく歩いていくと、洞穴のような場所が見えてくる。
既に戦争が終わって三十年ほどが経っていて、役目がないと思われている場所は、静かにただそこにあるだけ。
入り口に柵はなく、ただ暗闇が広がっているだけだった。
院長は少女を抱え直し、懐中電灯で周りを照らしながら、防空壕の奥まで……誰にも見つからないように、最深部まで歩いていき、そこに少女を遺棄した。
少女の死体を見下ろすや、院長は痰を少女に向かって吐き捨てた。
それは恐らく幼い頃に受けた屈辱によるものだった。
戦後、GHQによる食糧配給はあったものの、食料困難だったことに変わりはなかった。
院長は幼い頃、最早何も出来ない母親と一緒にその時代を生きていた。
戦後と云う事もあってか、物資はほとんどない状態で、母親は子供に食事を与えるが、自分は殆どとらなかった。
母親が物資を貰いに外に出た時、横道からジープが飛び出し、母親を轢き殺した。
それがアメリカ人だったことはすぐにわかったのだが、捕まることがなかった。
そんな日本の警察とアメリカ人を院長は赦す事が出来なかった。
院長が少女に拘りをもっていたというよりかは、自分の恨みを晴らす絶好の相手だったのかもしれない。
まともな食事さえ取れなかった幼い頃と違い、環境が整っているこの時代を跋扈する、日本人とも、異人ともいえない存在が憎たらしかった。
翌日、いち早く少女がいなくなった事に気付いたのは、云うまでもなく子供たちだった。
院長は昨夜遅くに貰い手が決まり、その日の内に貰われていったと告げ、少女が子供たちに挨拶が出来なかったのが心残りだったと、嘘を吐きながら、話をした。
真犯人がどうして皆殺しをしようとしたのか、その原因がここにあります。|HPでは混血という言葉を使っていますが、存在としました。