探し物の話
部室の中に、平潟、洲崎、小泉、称名が居た時、
「あれぇ〜?」
それは、平潟のそんな声が始まりだった。
「どうしたんですか? 平潟先輩」
部室内にいた小泉が代表して訊ねた。
「無くしちゃったんだよぉ〜…」
「無くした? 何をですか?」
「シャーペンなのぉ、大事にしてるやつなのにぃ〜」
「あぁー……大変っすね…」
心配はしているが、他人事のように小泉は心配する。
多少なり、心配はしているんだけど。
「おねが〜い、一緒に探してぇ」
「はぁ……あのね、犖華」
ここで2人を見ていた洲崎が口を挟んだ。
「そんなに大事なら、何回も無くすんじゃないわよ」
そう、平潟がシャーペン――――――しかも全て同じ大事にしている物――――――を無くすのはこれが初めてではなかった。
「だってぇ…」
「だってじゃないの。使ったら毎回ちゃんと終えばこんな事にはならないのに、すぐ机の上とかに置きっぱなしにするんだから――」
「ふえぇ〜ん…」
洲崎の説教に対して、平潟は反省してるんだかしてないんだか分からない声で鳴いた。
「いい? 次からはこんな事にならないようにね?」
「は、はいぃ…」
「よし、じゃあ皆、犖華のシャーペンを探すわよ」
たっぷり怒った後、洲崎は室内の全員に命じた。
「はい」
「……なんやかんや言って、洲崎先輩って平潟先輩に優しいよな、甘いっていうか…」
「夜雨、なにか言った?」
「いいえー」
一年生2人が手近な棚や机を調べ始めた。
洲崎が黒板回りを調べ、平潟が一年生達と逆方向から机を調べ始める。
……そして、十分が過ぎた頃。
「無いわね」
「こっちもありません」
「どこにも見当たりませよ先輩」
「ふえぇ〜…どこ行ったのぉ〜?」
平潟のシャーペンはどこにも無かった。
と、そこへ、
「何だ? どうかしたのか?」
扉が開き、瀬戸が部室内に入ってきた。
「あぁ暁槻、実は…」
「ちょい待った。その前に平潟」
言葉を静止したまま平潟に近づいた瀬戸は、
「コレ、サンキューな」
ズボンのポケットからシャーペンを取り出した。
「あれぇ〜?」
『!?』
室内にいた瀬戸、平潟を除く3人がそれを見て目を丸くした。
なぜなら、それが今しがた探していた平潟のシャーペンだったからだ。
「で? 何があった?」
「ちょっと暁槻! なんでアンタが犖華のシャーペンを持ってるのよ! 今それを探してたところだったのよ!」
「え? でも俺、平潟に借りるって言ったぞ?」
「え?」
洲崎は目を丸くした。
「まだ部室には俺達2人しかいなかったけど、平潟も承諾してたし」
「ということは……」
4人の視線が平潟に集まった。
当の本人は人差し指を頭に当てて何やら考えている。そして、
「あ〜、そういえば暁槻くんに貸して〜って言われたから、いいよ〜って言ったんだったぁ〜」
『……』
4人は声も出せないほど呆れていた。
そして改めて、平潟の怖さを知ったのだった。
「みんな、ごめんねぇ〜」
「犖華ぁぁぁぁぁぁ!」
「ふえぇぇぇぇぇん!?」