七夕の話
「という訳で、笹と短冊を貰ってきたぞ」
写真部の部室。三年生の部長である瀬戸が、肩に笹を担いで入ってくると、中にいた一年生達は各々の反応を見せた。
「オーゥ、すごい笹なのです」
「そういえば、今日七夕でしたね」
「いやだからって……部長、それどこから貰ってきたんですか」
「今日は七夕だから、と配っていたのを貰ってきたんだ」
「そう、ですか……」
誰が、とか、どうして配っていた、とか訊いても納得出来る答えが返って来ないと分かっていたので、一年生の称名はそれ以上は訊かないことにした。
「ヤウ、タナバタ、とはなんなんですカ?」
「七夕はね、一年に一度だけ川向こうの人に会える日なんだよ」
「川向こう……それはまさか、お亡くなりになった…」
「それはお盆だね、一週間くらい後だよ」
「つかちゃんと説明すれば良かっただろ」
「でもさ、要はそういうことでしょ? 笹に短冊飾る理由とか、織姫と彦星が出会うからだよね?」
「まぁ……そうだな」
「で思ったんだけど、写真部の織姫彦星は二年生の先輩方ですよね」
「ほー、言い得て妙だな小泉」
「でしょう」
写真部の二年生2人。学校には来ているし、同じ部活に入っているというのに、部室で2人が揃うことは稀だった。それこそ、年に一度の出会い、七夕の如く。
しかし、今日はその七夕で、
「失礼する。瀬戸部長は居るか」
扉が開いて現れたのは、二年生の野島。
「……どうもです」
その後ろにいたのは、同じく二年生の内川。
『七夕だ!』
「いや違いますよ」
瀬戸と小泉、キハンの声が揃い。称名が突っ込み。
「なんだ? 確かに今日は七夕だが」
「……?」
野島と内川は意味が分からず聞き返すのだった。
瀬戸が経緯を説明する。
「ふむ、そういう意味か」
「……なるほど」
「しかし、こう見てみると本当にレアだな」
かなり稀な現象に、4人で二年生を交互に見る。だが、
「しかしな、内川とは同じクラスで、教室で毎日会っているぞ」
「え……?」
「……それに、席も隣です」
「少なくとも、クラス内の女子の中では最も話している」
「……ワタシも、多分、クラス内の男子の中で一番」
『七夕が!?』
「だから違うって言ったじゃないですか……」
全く知らなかったとはいえ、二年生の2人は意外にも交流していたのだった。
「ま、いいか。短冊書こうぜ」
七夕、だからと言って短冊に願いを書く、という話にはならない。と思いまして写真部の話を書きました。
そう考えればこの二人が合うのは稀な気がしますが、案外一緒に出てたりするんですよね。前にもありますし。
それでは、