当分の話
「どうしよっか、コレ」
「オーゥ……最早取り返しがつきませんし……」
「けどコレは逆に器用だけどな」
写真部の部室。
現在一年生3人がある物を囲って悩んでいた。
そこに、
「ん? 何やってんだ?」
「なにかあったの?」
「こんにちはぁ〜」
三年生3人、瀬戸、洲崎、平潟が入ってきた。
一年生3人、小泉、キハン、称名が挨拶を返した後、小泉が状況を説明した。
「前に話した気がしますけど、駅前の喫茶店で働いてる知り合いがいるんです。でその人から商品にならないのだから貰ってってバームクーヘン貰ったんですよ。それを人数分切ろうと思ったんですけど」
一年生が囲っていたバームクーヘンが三年生に見えた。
「何人か居るかいないかの先輩方の思案をしてたら。こんなんなりました」
きっちりと、七当分にされたバームクーヘンが。
「七当分かよ」
「逆にスゴいわね……三とか五ならともかく、それ以上って難しいわよ普通」
「とりま八当分しようとしたら、キハンが」
「二年生のセンパイ方は居るのでしょうカ? と言ったんです」
「じゃあ抜いた六当分にしようとしたら、称名が」
「いや一応全員分切っておけよ」
「そこからなんやかかんやかあって、結果がこうなりました」
「そのなんやかんやが気になるが、つまり七当分をどう処理していいか分からないんだな。なら別に深く考える必要は無かったぜ、内川はいつもの旅の最中だからな」
普段から部室に滅多に姿を見せない二年生の2人、その内の1人、内川は放浪の旅を行っているので、部室に来るのは更に稀だ。
「だから内川は気にせずに七つを俺達で…」
「……ワタシがどうかしました?」
気がついたら、部室の中にその内川が立っていた。
「……どうもです」
いつの間に入ったのか、扉の空いた音がしなかったけど、まぁいつもの事だしな。
割り切って皆挨拶をした。因みに、七当分のバームクーヘンは内川の位置からは一年生達の影で見えていない。
「……これを」
放浪の度に買ってくる内川のお土産を、小泉が受け取って中を開いた。
『あ』
それを見て6人の声が重なった。
何故ならそれは、バームクーヘンだったからだ。
「……どうしました?」
『……』
内川に七当分されたバームクーヘンを見せると、理解したように、こくこくと二回頷いた。
「でもこれで問題解決ですね。コッチを九当分すれば16当分になりますんで」
結局、内川のお土産のバームクーヘンを小泉がきっちり九当分して、部員8人、均等に行き渡った。




