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小泉夜雨

始まりました。『景色のフォトグラフィ』

ある条件の元に描かれる部員たちの日常、どうぞお楽しみに。

「こんにちはー」

挨拶しながら部室の扉を開ける。鍵が開いてるからすでに誰か居……

「あれ?」

誰も居なかった。部屋の中を見回すと先輩の鞄と部室の鍵が置かれている。無用心だな。

とか思いながらわたしも自分の鞄を置いて、近くの椅子を引き出して座った。

「ふぅ……」

手持ちぶさたに部室の中を見回す。机と同じ数の椅子。立て掛けられたパイプ椅子6つ。

掃除用具を入れるような、実際は別の物が入ったロッカーが4つ。壁には黒板。チョークが白と赤2……正確には1本が折れた物1つずつ。それを使って書いた、赤と白の文字で書かれているここを部室とするわたしが入っている部活の名前。

机の1つの上に置かれた鞄。アクセサリー等の飾り気は無く、使い込まれた感のくたびれが少し見える。コレは部長の鞄だ。分かりやすいな。ここの部員は皆鞄に独自のアクセントを付けてるからまとめても一発で自分のを見つける事が出来る。と話していたのを思い出した。

鞄の下に半分潰されてここの鍵が見える。部活の名前が書かれているプレート以外の飾りは無いが、それだけ付いてるだけで部長の鞄より飾り気がある。

「……ふぅ」

以上、簡単に部室内の説明でした。部長はおろか、誰も来ませんでした。

ま、そうかもしれませんけどね。

「ん〜……」

背もたれに体を預けて背を伸ばす。妙に残っていた眠気が消えていく。結局五時間目は半分寝てたからな、完璧に眠気が無くなった。

だらんと体を降ろして、再度黒板を見た。

何故か赤と白のチョークを交互に使って目に鮮やかなフォントで書かれた部活の名前―――――写真部。

わたしは写真部に入部した一年生。小泉(こいずみ)夜雨(やう)

身長は学年の平均、より少々高め、髪はセミロングの黒、特徴らしい特徴があまりなく、外観を言葉だけで説明するのが大変だ。と言われた事があって以来特徴と思って雫型のヘアピンを付けている。唯一の特徴、ワンポイントというやつだ。

こんな風に特徴の少ないと言われるわたしだけど、ここの部員達が逆に特徴というか個性が在りすぎると思う時が度々ある。

部長はよく学校に忍び込んでるし。

副部長は2人居るし。

片方は禁止とされるバイトしてるし。

もう片方は先輩なのに危なかっしくて目が離せないし。

二年の先輩の1人は暗室によく隠ってるし。

もう1人はよく色んなところに出掛けてて部活に現れる事が稀だし。

同じ一年生の2人も少々変わってる。

片方は帰国子女だし。

片方は………………あれ? 特に変わってるところが思い当たらない。

ま、いいか。

とにかくこんな感じで、わたしが特徴無いだけではないとは度々思う訳だけど。……わたしにも、外観でなければ凄い特徴があったりします。

それは……

「……今日も、やっちゃったのかな…」

窓の外に視線を向ける。ただいまの時刻……15時46分。外には夕焼けが……無く、灰色一色。厚い雲が空を覆い、ぱらぱらと、雨を降らしている。

「はぁ……」

わたしは、自他共に認める雨女である。それも重度の。

どれくらいかと言えば、ちゃんと集合場所と時間を決めて数人で遊びに行く時、わたしはよく5分前に着くが、それからぽつぽつと降り始め、時間になったらざんざん降りになってしまうぐらいだ。

だからわたしはあえて集合時間と場所を聞いて、その周辺をうろうろしておいて後からばったり出会ったと見せかけて遊びに行くというメンドクサイ事をしないといけない。それだと何故か雨は降らないからだ。

それだけではなく、よく天気雨も呼び寄せてしまう。確か天気雨って狐の嫁入りだとか聞くけど、

「わたしは狐専門の敏腕ブライダルプランナーじゃありませんよ? 傘が必需品の、特徴があまり無いなと言われる。普通な高校一年生ですからね?」

「見りゃ誰だって分かるだろ」

「お?」

どうやら声に出ていたらしい。入口に顔を向けると。

「部長、こんにちはー」

「おぅ、1人か?」

部長が鞄の前の椅子を引き出して座ったところだった。

「今のところ」

「他の一年生は?」

「キハンは委員会で、称名は知りません」

「そうか」

「副部長達は?」

「星羅はバイトに行った。犖華は掃除当番だ」

なるほど、

「二年生の先輩方は?」

「夕照は暗室、雪穂は所在不明だ。どっちも部室に来るかは分からん」

なるほど。つまりは、

「いつも通りですね」

「だな」

わたしは窓の外を見た。

部員が全然集まらなくても。

雨が降って活動が制限されてしまっても。

変わり者ばかりが集まっていても。

写真部はいつも通りに、部活動を開始するのです。


『小泉夜雨』一応の主人公の名前にして、実在するあるものからお借りした名前です。

彼女は極度の雨女です。かなりの高確率で雨を呼びます。傘は手放せません。

わりと良い性格をしているので、意外と写真部にもあっさりとなじんでいます。

雨が降ろうが、雨を降らせてしまおうが、写真部は活動を開始するのでした。


それでは、

感想、一言、ご指摘、お待ちしています。

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