第1話 ガルツ連邦のレオン・アルケン
この世界では魔力を含む金属「ミスリオン」が存在し、それは兵器・魔導具・国力を左右する最重要資源。
大陸には多くの国があるが、ミスリオン鉱山の支配を巡って長年対立している。
俺はレオン・アルケン、17才だ。山岳国家「ガルツ連邦」に住んでおり、ミスリオン鉱山を巡る戦いに参加する国の軍人である。
ガルツ連邦は元々、ミスリオン鉱山を多く持つ国だったが、最近ミスリオンが枯渇気味であり、国力としては少々低下気味である。
貴族家との権力争いが激しく、鉱山収入無しでは内政崩壊寸前、といった状況である。
俺はガルツ連邦のリュシオンという田舎で生まれた。
幼くして母親を失い、親父に育てられた。
もちろん裕福とは言えず、親父が国の軍に従事して稼いだお金で生活していた。(親父はそこそこ腕の立つ魔導師だったとか)
ただ、親父はいつも優しく、幸せに生きることができていた。
そんな幼少時代に没頭していたのが石集めである。俺は、物心ついたときから石が好きだった。
無骨で不規則な造形や、石の種類による構造の違いが面白く、拾った石を削って薄片にしては、光にかざして虫眼鏡で見ていた。
しかし、7才になったある日、いつものように石を拾って薄片にし、観察している時にふと、「この石がミスリオン鉱石になったらいいのに」と思った。
これは希少で高価なミスリオンが大量に手に入り、売って親父の負担を減らしたい、という子供の無邪気な願い故のものであった。
少し前、親父が戦場からくすねてきたミスリオン鉱石の薄片の構造を思い出し、今の石のの構造がミスリオン鉱石の構造に変わる様子をイメージしていると、なぜかただの花崗岩のはずの石がミスリオン鉱石に変わっていたのである。
驚きはしたが子供であったため、そんな奇妙な事もすぐ信じた。
そうして俺の好奇心は駆り立たれる。
それからいろんな石の薄片をミスリオン鉱石に変えてみたり、続けて行くうちに想像さえできていれば薄片である必要も無く、そのままの石もミスリオン鉱石に変えることができた。
この力さえあればミスリオン鉱石を大量に生み出せ、売れば裕福な暮らしができるだろうと考えた。
夕方になり、軍から帰ってきた親父に、昼間に作った大量のミスリオン鉱石を見せた。
「お父さん、このミスリオン鉱石を売ったら豊かに暮らせるよ」
そう言いながら親父の顔を見ると、驚きと、そして恐れを抱いた目でこちらを見ていた。
「レオン、正直に言いなさい。どこから盗んだ?」
この返事に俺は透かさず、
「俺が作ったんだよ。あ、正確にはそこら辺の石をミスリオン鉱石に変えたんだよ。」
すると親父は少し沈黙し、俺に優しく、そして強く一言放った。
「人前でミスリオン鉱石を作るな。そしてミスリオン鉱石を多く作るな。これが俺とレオンにとって一番平和に暮らせる方法だ。」
そう言われた時、困惑した。後に考えれば当たり前であったが、そのときはミスリオン鉱石が沢山作れて全員幸せになれる、としか考えていなかったため、親父の返事には困惑した。
そういう俺の表情を読み取ったのか、親父は
「わかった。これを売って生活の足しにしよう。」
と、言ってくれた。
この時、俺は初めて俺自身で生活を一部支えることができると喜んだ。
それからしばらくして、何も無くても構造を想像するだけで物を作れるようになっていた。
まさに、神話などに出てくる錬金術を完璧にできるようになっていた。
それは、俺が14才の時であった。
15才の春を迎えた時、親父がいつも通り軍に行く時、こう言った。
「錬金術が存在することは世界に知られてはいけない」
「そりゃ分かってるって。今日も仕事頑張れよ!」
「あぁ。」
これが、親父と交わした最後の言葉であった。
その日の夕方、流石に帰りの遅い親父を心配し、明日の種蒔きの準備を中断して、村の外の門まで見に行ったが、いなかった。
門番に、
「俺の親父、見ませんでしたか?」
と聞く。
しかし、
「いいや?朝出てからずっと。レオンは何か聞かされてないのか?」
もちろん首を横に振る。
「なんか軍の大事なことがあったんだろ。心配すんなって。」
門番はそう言ったが、何か引っかかる。
若干の不安を持ちながら、とりあえず眠る。
それから、幾日も探したが、親父が帰ってくることは無かった。
流石に生活が厳しくなり、街へ出て職を探しに行くことを決意した。
しかし、どこも働き手を募集しておらず、俺が入れそうな唯一の求人は「鉱山調査団」しか無かった。
「鉱山調査団」とは名ばかりで、実際は国の軍隊である。
目的は鉱山を調査することだが、知っての通り、ミスリオンを始めとする鉱石の採れる鉱山そのものが国の資産であるため、他国も欲しがる。
そのため、他国との衝突は避けられない。
そういった衝突に勝利し、鉱山を自国に献上する。
そして鉱山を守る、というのが鉱山調査団の仕事である。
戦闘面では、親父に魔法を教えてもらっていたし、そこそこの剣術も扱えた。
どちらも村では負け無しであったし、(魔法は親父に勝てる気はしないが)時々現れる魔物相手でも、簡単に捻り潰せた。
そして、敵国より早く鉱山を見つける、という点に於いては、錬金術により鉱山の地脈や濃度変化を感じ取れるようになっていたため、こちらも一級品だ。
そういう事もあって、俺は迷いなく「鉱山調査団」の入団を希望した。
そうして彼の壮大な人生が幕を開けた。
始めは高頻度で投稿するようにします。
ある程度続いたら週1にします。
ご愛読よろしくお願いします。




