第九幕:ホームズの悪夢
ボクらは、ホームズの恐怖の体験を聴くことになる。
これは彼の声なのか?
それとも、彼はハイドなのだろうか?
やあ、君。自分が何者なのかを考えてごらん。自分ではわからないだろ。
自分にとっては、普通すぎてわからないんだ。君がすごいってことをさ。
だから君は皆からすごいと言われたら、鼻をピノキオみたいに高くする。
でもーー残酷におられたりする。
第八幕では、ホームズはジキルとハイドの関係をワトソンに告げた。
でも、信じてもらえなかった。
だから彼は、自分の体験した物語を話す。それが悪夢を強くするのにね。
さてーー彼は、こう語った。
どこから話せば、僕は、自分をーー君を満足させられるのか、わからない。
赤い薬の使い方だが、実際には使い方を見たことはない。だけど、調査を続けるうちに、彼が変身に使っている薬の色や使用方法なんてのは、わかる。
ーー頭が飾りでなければ。
彼が実際に変身する為に使った部屋は、彼の住む屋敷の使われてない部屋だ。そこは人払いをしている。
劇薬などを置いているからだ。
その場所で彼は変身して、他人のふりをして使用人と出会い、
ちょうど屋敷にきた風を演じて見せた。
そして、あの冒涜で不愉快極まりない夜の散歩と強奪を始めるんだ。
ヤツは、いつか人を殺すだろうよ、ケダモノ以下の鬼畜がーー。
なぜかって?
自分の性質が止められないからだ。
類人猿の再来。
暗黒の申し子だ。
僕はスコットランドヤードのヤツらに通報しようと考えた。
だけど、やめた。ヤツらは想像力が足りない。科学の力で人間が変身するなんて、理解しきれない。しちまったら、もう、僕らを守ろうとはしない。
誰かが変身しているかもしれない。
この世界にいる人間が一人の人間の頭の中、即興の産物、空想の紛い物だと言われても信じられないだろう。
これほど恐ろしい事はあるか?
僕の憎しみ、愛すら再現する化け物。
尊厳すら無視して、僕の中に入り込もうとする。そんなヤツが憎い。愛したいが、憎いーー。
すまない。僕とした事が興奮した。
ヤツの変身の秘密だったな。
僕は屋敷に入り込んだ。
君、そんな顔をするな。犯罪の手段を謎を解決するために、僕は利用したまでだ。
少しも不都合はない。
そして、僕の推測した通りの部屋があり、全身鏡が置いてあった。
変身後を確認する為には、鏡が必要だからね。
近くには赤い薬を入れた小さなガラス瓶が何個か置いてあった。彼は頭のいい男だ。ハイド?いいやジキル博士だ。ムダな本数は用意しない。ーー用意できないのかもしれない。
そのうちの一つを失敬した。僕には関係ないことだから。
瓶の中には赤い薬が飲まれたそうに揺れている。とてもキレイなものだった。少しだけ揺らすと、ちっちゃな泡がでてーーすぐに弾けた。
僕は慎重に栓を抜いて、一気に飲んだ。
ぐずぐずしては、いられなかったからね。変身にかかる時間と、もしかしての為だ。
あの苦痛は言い表せない。
痛みだったのかさえ、定かじゃない。
脳みそさえ変身してたから。
僕が出来る事が、できなくなった。
認識はそのままだが、中身がごっそり組み変わるんだ。骨も役に立たない。
僕を象るのは、まさしく魂のみだった。ここまで言っても、僕を嘘つきと君は言う。
鏡の前に僕は立った。
乞食の衣装はめちゃくちゃに破けた。
ーー太った身体。君のようにーー!
鏡の中、そこに一人の中年男性が立っていた。茶色い短髪には白髪混じり、灰色の髭が口元を隠していて、体はがっしりしていた。
奴は驚いていた。
「なぜだーー」と僕の口を借りて、彼は声をだした。
「どうやってーーいやーーこれはーー私なのか?私はアーサー・コナン・ドイルだーーそして、ここはーーシャーロック・ホームズのせいか?」
僕は彼の名を知らない。
だが、彼は僕を知ってやがったーー。
(こうして、第九幕はコナンにより幕を閉じる。)
物語の中に現れたーー彼は?
そして、ホームズへの憎しみのこもったセリフは?




