第七幕:ホームズの裏切りと自業自得
あれから時間が経過した。
ワトソン博士の傷もいえてきた。
だけど、ホームズの様子がおかしい。
やあ、君。頑固者ってのは、自分の意見を曲げやしない。バカは死ななきゃ治らないっていうけど、死にかけても治らないバカには当てはまらない。
第六幕では、ワトソンが気絶している間にホームズはジキル博士に雇われることになった。
あれから数日間が過ぎた。
ワトソンは何の後遺症も残らずに治っていた。
そして、舞台は221Bの寝室で中年の男が寝台に横たわっていた。
近くには、ホームズがニヤニヤして見下ろしていた。
「ワトソン。君を怒らせたいわけじゃない。」とホームズは言った。
「ただ、怪紳士には関わらん方がいいと言いたいだけだ。
君は怪我をしてるーー」
「ボクは医者だ。自分の容態ぐらいわかるさ。
ーーそれよりも、怪紳士のことについて、教えてくれないか?
手帳を持ってる。
いつでも準備はできてるんだーー」
「僕はできてない。これから夜の散歩にいくから危険だ。
君が大人しく寝ておくように約束させにきた」
「危険ならなおさらだ。
ボクは一緒に行くぞ、ホームズ。君が一人で行くなら、ついて行く。うしろから、びっこをひきながらでもーー」
そう言って、ワトソンは深く息を吐いた。
二人は黙っていた。
ホームズが口を開いた。
「僕はヘンリー・ジキルに雇われた。
彼の小切手は僕の懐と君の治療費に役立ったぜ。そして、彼は依頼したんだ。蜘蛛の組織を弱体化させる事をねーー」ホームズは言葉を選んだ。
「これから、話すことは君を不快にさせるかもしれない。
ーー本当のことをいうと、ジキルはーー僕にこう依頼した。エドワード・ハイドを組織から守れってね。犯罪コンサルタントとしてだーー」
この告白は、ワトソンの魂をガツンと殴った。
まるでホームズとハイドが一緒になってワトソンをバックバーに叩きつけるぐらいにね。
「ーー信じられない裏切りだ!」
ワトソンは寝台のうえで罵詈雑言を吐こうとして、やめた。
紳士的じゃないからだ。
「ヘンリー・ジキルは、なんであんな男を守るように、君に言ったんだ?」
「ジキルが何かしらの恩を、ハイドに感じてるみたいだった。弁護士にも遺書を渡してた。ヤツに関することだーー正直、気が乗らない」
「なんでそんなーー」とワトソンはハッとする。
「気にするな、ワトソンーー」とホームズはニヤリと笑った。
「君がこの部屋で留守番さえしておけば、僕は安心して組織を弱らせる事ができる。」ホームズは疲れているようだった。
「これも、記録係としての君の役目だ」と言い聞かせるように話した。
「分かったーーだけどハイドについていま、君が分かっていることをーー教えてくれ。あいつは何者なんだ?」
ホームズは困ったような顔をした。
「正直に言おう。ーーわからない。
もし僕が夢見がちなら、別の答えを出している。でも、やっぱり、判断ができかねない。ーーありえない」
ワトソンの表情がかげった。
「ホームズ、これは君の知性を尖らせるものなのかい?
それとも、別の何かーー」
ホームズは上を見た。
「ああ、そうかも。別の何かかもしれないーー幸いなことに、ハイドには接触しないように言われてる。
“彼の好きなようにさせておけ”とね」
ワトソンの顔が苦痛に歪んでいく。
(こうして、第七幕はワトソンの顔で幕を閉じる。)
ホームズに裏切られた可哀想なワトソン。
でもホームズは気にしない。
ワトソンをバカと思うから。




