第五幕:ジキル博士の華麗な登場
気絶したワトソンを見て、
反省したホームズ。
でもーーまた繰り返すと思ってたらーー
やあ、君。反省を何度繰り返しても、治らないものがある。
どうしようもない性質というヤツさ。
言われなくても、分かっている。
それでも、やめられない。
第四幕では、ホームズのほんの冗談でワトソンを気絶させてしまった。
ボクらは病室にいた。
外は昼で、この部屋の窓から太陽は高くみえた。ホームズはワトソンの口から泡をハンカチで拭き取ってやり、それからため息をついた。
ーーこんなつもりじゃなかった。
彼は、そう思った。
すると、看護師たちが病室の窓を開けにきた。空気の入れ替えだ。
ホームズは、誰が来るのだろうと思い病室の出入り口に視線を移した。
そこには立派な紳士がいた。
年は50代。髪は暗褐色だが白髪がまじっていた、瞳は湖の青さを持っていた。だいぶシワがあって老けてたがハンサムな顔だ。身体つきは頑強で、科学者というより軍人といわれたら、君は納得しただろうね。
彼はベージュ色の立派なフロックコートとズボンを着てた。
この服と比べると、ホームズたちの服は貧乏人だと思い知らされた。
薄暗い汚い茶色い紳士服なんだ。
ホームズが自分を見ている事に気づいた紳士は彼に近づいた。
「ごきげんよう」と軽い挨拶をしてきた。ホームズは怪訝な顔をして彼をみた。そして、こう言った。
「あなたは熱心な科学者ですね。そして、寝不足だ。ステッキが必要なはずなのに置いてきているーー」
ホームズは何気なく言ったつもりだったが、紳士の顔色が変わった。
「ーーなぜ、そう思うんだい?」と絞り出すように男は聞いた。
彼らは高身長だった。その二人が並んでると、これから殴りあうんじゃないかと思わせた。
「手には薬品の跡、赤が強めで、指の皮膚が荒れている。劇薬を取り扱っているーー歩く時、少しだけ不安定だ。寄りかかるものを手が求めてた。それに、不安定な歩きは、身体の具合が悪いーーでも、ここに来た。この汚い病院に。あんたは眠いのさ......」
ホームズなりのマウントのとり方だった。
「看護師が空気の入れ替えをしてた。
アンタは慈善家なんだ。この病院に金を落とす。でも、たいして還元されてないぜ。帳簿をみせてもらえ」
看護師たちは、うろたえた。
見舞いに来た男が、自分たちのスポンサーに対して、ひどい事を言ったからだ。
男は大笑いをした。
「ははは!いや、不快に思わないでくれ、君、面白い!久しぶりに笑ったよーー名前は?」と彼は微笑んだ。
「僕はシャーロック・ホームズ。コンサルタントをしてる。相談があれば乗るよーー」と不敵な笑みを浮かべた。
「ーーホームズか」と男はうなづいた。
そして、彼は握手をするために手を伸ばした。
「名刺をくれないか。ホームズ君。
私はヘンリー・ジキルだ。君の言う通り、熱心な科学者、そして医師でもあるよ。君の友だちを診察してみせようか?」
ホームズは彼を見つめていた。
ジキル博士もホームズを見つめていた。
ホームズは彼の手に握手をした。
(こうして、第五幕は博士との握手で幕を閉じる。
その窓辺では、陽光が二つの影を一つに重ねていた。)
ついに、現れたジキル博士!
ホームズの相変わらずのマウント!
君はどう思う?




