第十四幕:名探偵と相棒そして
やあ、君。クライマックスへの暴走列車に乗っている。
だけど蜘蛛は、安全な位置で名探偵と怪物の戦いを見つめていた。
第十三幕では、名探偵と怪物と蜘蛛が揃うことになった。彼らは睨み合って硬直していた。
ここは夜のドーバー港。
埠頭では、名探偵と怪物。
海の上には蜘蛛。
先に動いたのは名探偵だった。
「ーーさすがだよ、教授。いつか動くと思っていたが、まさか、今日だったとはねーー」と蜘蛛を褒めた。
「船を用意するのは簡単だよ、名探偵。欲しければ、君も頼むといい。近々、ロンドンに君の居場所はなくなるからーーふふふ!媚の売り方でも覚えておけーー」と蜘蛛は二人に向かって嘲笑った。
ハイドは怒りで、どうにかなりそうだった。彼の唸りは大きくなっていった。
「キサマ!キサマ!」と歯を剥き出した。
「下劣なケモノ。お前の悪はそんなモノだ。闇の中での美しさーー完璧だーーそうだろ、名探偵。私は変身薬と金を手にしたんだ」といいながら、蜘蛛は手を叩いた。
唐突に、名探偵は笑い出した。
さも、おかしそうに。
「ーー何がおかしい」と蜘蛛は不機嫌になった。
「変身薬か!そいつを試した事があるかーー教授」と名探偵。
「この薬を私が?いいやーー誰かに使わせるさ」と蜘蛛。
「なら、気をつけろ。そいつは神を呼んだぜーー」
この言葉を聞いて、蜘蛛は一瞬のうちに理解した。
「神を呼んだ? これがーー?」と荷物の中でも高価そうなトランクに目を向けた。そこに赤い薬のレシピが入ってあった。
「あの神を? ーーヤツを?」
ホームズにとっては賭けみたいなものだった。蜘蛛は研究の実験を見ていた。失敗ってヤツをさ。
「ヤツが来る?」
創造物の、創造者への憎しみは言葉だけで表せない。特に、悪役として生み出された者なら尚更だ。
彼は発狂したようにトランクを海に投げ飛ばした。
ボチャンっと音がして、沈んでいった。
「大損だ!変身薬で作ればいいものを!この役立たずが!」とハイドに罵声を浴びせた。
彼は赤髪の少年に命じると、船を沖へと向かわせた。
ハイドは口を開けてた。
「や、役立たずだと??ーー俺を?」
彼は唸った。そして、名探偵に向かって、瞬時に襲いかかったのだ!
その動きは、早くて名探偵はびっくりした。
だが、彼は空中で突然跳ね上がった。
獣性の前に銃声が勝ったんだ。
彼は胸を押さえて、下がると、そのまま海へと落ちていった。
怪物の最期だーーたぶんね。
二人は暗い海へと顔を出した。
海から怪物が飛び出すんじゃないかと思いながらーー不安げに。
海は静かなものだった。
波もない。
「ホームズ、ボクはーー」とワトソンが震えてた。
「ーーヤツの力を侮っていたーー助かったよ、ワトソン」名探偵は相棒を見て、微笑んだ。
ワトソンは震える腕で銃を下ろした。
それから、呟くように言った。
「彼のことを小説にしようとしたけど、ーーやめたよ。」
「なぜだい? 僕は協力するぜーー」
「今の時代、こんなのだしたらボクは作家をやめなきゃ......、
筆を折らなきゃならない。」
ワトソンは微笑んだ。どこか遠くに向かってね。
「なぜかって?
バカげているからさ。
誰も信じない本を誰が評価してくれるというんだいーー」
ホームズは、しばらく考えてからーーこう言った。
「そりゃあ、君ーー天使たちさ。彼らが君の物語を読んでくれる。ーー友よ」
(こうして、物語は一旦幕を閉じる。)




