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ファウスト〜二面紳士の対決の幻視〜ホームズ  作者: ヨハン•G•ファウスト


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13/14

第十三幕:集合ーー

やあ、君。故郷を捨てて、外の国に行こうと夢見たことはあるかい?

何もかもが嫌になって、レールの上以外を走り抜けたい感覚だ。

だけど、レールから外れるって事は大変なんだーー。


第十二幕では、ジキルが国外逃亡を計画しているとホームズがいつも通りの推理っぷりを発揮した。

汽車に乗り込み、ドーバー港へと向かった。


さてーーワトソンはホームズの飛躍した推理の果てに何を見るのだろうね。


物語を進めよう。


ドーバー港の舞台は夜だった。

時刻は一時頃。波はなく、そこにある船は静かに浮かんでいた。空には月がなく、暗雲が立ち込めていた。


とあるフェリーのある埠頭で、黒い外衣に身を包んだ少年のような人影があった。

彼は闇の中でも、目が見えるかのように、その小型船へと荷物を軽々と置いていった。

まるで猿のようなすばしっこい動きだった。

荷物を乗せるたび、小型船は軽く揺れた。


いきなり闇夜を切り裂くように声が響いた!

「ヘンリー・ジキル!」

ホームズの所持していたブルズアイランタンの強烈な光が、振り向いたハイドの目を直撃した。

「があ!!」とケモノが唸るようにして、人影ーーハイドは後ろへのけぞった。危うく海へと落下しそうだったが、超人的な身体能力が彼を救った。

「ーー貴様は......シャーロック・ホームズ!そして、ーーあの時のデブ......」

彼は目を手で押さえつつ、

探偵と相棒を交互に眺めた。

まだ視力は戻ってないが、

ハイドはボヤけた形で判断してた。

「ワトソン!ヤツが動いたら、迷わず撃て!」とホームズはハイドから視線をそらさずに、ワトソンに命令した。だが、ワトソンはためらっていた。


なぜかって?

彼の目の前には、

類人猿ではなく、ヘンリー・ジキルの面影を残した少年の顔があったから。

「彼はーー違うのでは?」とワトソンはホームズに聞いた。

「バカ!ーーコイツは進化したんだ!」

ワトソンのヒゲが震えた。

「ハイドの進化ーー」

「当然だ。あんな顔のまま、生きていたくないだろうーー」とホームズは目を細めた。

光の先で、少年の唇が猿のように歯茎を見せて不気味に笑ったーー。

「まだ進化の途中かーー哀れな」とホームズは嫌悪感を見せた。


その時だ。

埠頭のそばにあった小型船が動き出した。ハイドを置いたまま、その場を離れていった。

ハイドは驚き、船へと顔を向けた。

乗り移れば良かったが、ワトソンが後ろから狙っていた為、動く事ができなかった。

「ホームズ、船がーー」とワトソンが焦り出した。

「ああ......ヤツがお出ましのようだ」

船が彼らを嘲笑える距離まで離れると、甲板の上に白い蜘蛛が浮かび上がった。その隣りには、赤髪の少年が黒いコートを着て、ランタンを持って立っていた。

「クモめ!!」とハイドが怒声を浴びせた!

「戻ってこい、踏み潰してやる!」と唾を吐きまくった。


その様子を小型船から見ていたクモはせせら笑った。

「名探偵もあんがい役にたつものだーー始末せずにいて良かったよーー」

甲板の蜘蛛は両手の指を重ね合わせて微笑んだ。まるであやとりをしてるようだった。

「ジキル博士......私はバカにされるのが嫌いでね。君から全てをいただくことにした。投資の、ふふふ、これは当然の利益だ......」

ワトソンは、この蜘蛛を先に撃ち殺したかったが、ホームズは何も言わなかったーー。

ここに、主役が揃ってしまった!

闇夜のドーバー港でーー。


(こうして、第十三幕は蜘蛛により幕を閉じる。)

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