第十二幕:まるで物語のような内容ーー
弁護士や探偵に話を持って行く時、
君はそのまま伝える?
でもーーもしも伝わらないかもと不安になったら、
君は誰を頼りにする?
やあ、君。作家が物語を読むと、その物語と自分の物語を比べちゃうもんだ。視点が変わるだけで、話が新鮮に感じて、自分の物語は別モノになる。
その時に筆を折るか、賞賛するか、殴りあうか、無視するかーー君はどうする?
第十一幕では、弁護士のアタスンが友のジキル博士の為にホームズの助けを求めてきた。
快適な居間の中で、二人の紳士は握手をしあった。探偵ホームズと弁護士アタスンだ。
「ミスターホームズ。私を覚えていますか?ヘンリーの雇われ弁護士です。彼の遺書をあなたと共に確認したーー」
「もちろんですとも、アタスンさん。
ハイド氏の件、私も胸を痛めてました。ーー何か進展でもありましたか?」
「ええ。ミスターホームズ。話だけでも聞いてくれたら、それだけでも、心が晴れるーー」とアタスンは顔をしかめた。
「気がかりでも?」とホームズ。
「実は学生時代の友が最近、死んだんです。事件ではないのですがーー我々のヘンリーに関して、秘密を抱えて行ったんです。神のもとにね」
「ーーいつかは、彼に会う。どの神かは知らんがねーー」とホームズは意味ありげに笑った。
ワトソンのヒゲが震えた。
「まあ、ソファに腰かけて。記録係に茶でも出させますーー」とホームズはニヤニヤ笑った。
弁護士アタスンは、彼の知る限りのことを話した。
彼のもう一人の死んだ友人の話も、改めて説明をしてくれた。
この話は、まるで一つの物語だった。
弁護士の彼の説明から始まり、ハイドへの話へとだんだん持っていく。
とても弁護士が思いつくような話ではなかった。
ハイドは女の子を踏みつけ、金の力で相手を黙らせ、暴力を繰り返す。ヤツのの恐ろしさが、ワトソンの脳裏に浮かんだ。
ワトソンはアタスンの物語を聞いて、自分の作品が恥ずかしくなった。
自分は物語を続けていいのかさえ、考えだした。
話はヘンリー・ジキルが、部屋に閉じこもったところに来た。
ホームズは唐突にアタスンの話を遮った。
「待ってください。最近のジキル氏は、部屋から出なくなったんですね?」
「ええーー具合がよっぽど悪くてーー」
アタスンは多少ムッとしていた。
彼は気持ち良く話してたんだ。
どこから話し直すべきか、彼はしばらく考えなきゃならない。
「ジキルは、制御ができなくなっているーーだから姿を見せないーー」
ホームズは、立ち上がった。
「急行でドーバー港へ!ヤツを待ち伏せるんだ!」
ワトソンも立ち上がった。
「ちょっと、待て!君の悪いクセだ!
勝手に話を進めるな!彼の話をもっと聞こうーー」
「話なら、いつでも読めるようになる。アタスンさん。あなたは作家なんかに話しましたね、僕と話をする前にーー」
アタスンの顔色が変わった。
ホームズには、それだけで充分だった。
「ワトソン、物語を早く書け!
ホームズは部屋から出ようとした。
ワトソンに視線を向けた。
「ーーライバルがいるぜ!」
ホームズはーーそこから、一歩部屋を出ようとして、彼は立ち止まった。そして、ゆっくりとワトソンの方に顔を向けた。
「ーーワトソン。一緒に行こう」
ホームズはワトソンを誘った。
それを聞いたワトソンの目は輝いた。
「もちろん!」と声を弾ませた。
「リボルバーに弾をこめてくれよ。必要になるーー必ずね」
(こうして、第十二幕はドーバー港行きの急行列車で幕を閉じる。)
ホームズに頼られたワトソン博士の喜びようは、
見ていて笑えたよ。




