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2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語  作者: Haruno
第二章 近づく 2030年8月

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2030/8/18 美咲(3)


「あの……悠真さん」


「は、はい」


………。


「後輩のみなさんも悠真さんって呼んでるのに、なぜ私が呼ぶと飛び跳ねるんですか…」


「ごめん、違うんだ、あのさ……、体の記憶なのかなって思うことない?」


「体の記憶……ですか」


私は、一ノ瀬さんの笑顔を見ると泣きたくなる時がある。それがそうなのか、分からないけど。


「なんかね、胸が痛いっていうか、苦しいっていうか、ざわっとする感じがある。

前に、仲良かった時のことを思い出してるのかな」


記憶の底で気がついてとサインを出しているような──?

私には分からない感覚だった。


「哀しいとか嬉しいとか感情としてはっきり認知できないけど、心が動かされているってことですか?」


「喜怒哀楽のどの方向の感情かは感じているんだけど。

三神から俺が美咲ちゃんって呼んでた話しは、何でか胸がこう…苦しいというか切ないというか懐かしいというか。これは哀しいに近い感じ」



「分かりました、前と同じことはやめましょう。

悠真さんも美咲ちゃんもなしです。

でもこれを逃すと機を逸してしまいそうなので、嫌なら言って下さい。

──悠真くん、って呼んでもいいですか?」


三神さんに便乗して、これを機に仲良くなりたいけど、馴れ馴れしい女になりたくない。


「うん、じゃあ俺は美咲さんかな。ん?三神と同じか、なんか怒られそうだけど」


「さん、はなしでお願いします、うちも職場はフランクな感じで同期や先輩は呼び捨てなので、

私もその方が慣れてるというか」


悠真くんは周りを見回してから、声を落として私にまっすぐに目を向けた。


「じゃあ早速だけど──あのね、美咲」


「ひっ…ひゃ…ぃ…」


ついチチャモラーダゼリーのカップで顔を隠した。


これは職場がどうとかの話しじゃない。

目を見て名前呼ばれた時の破壊力──とんでもない。


だって、ずっと前から素敵な人だなって思ってた人だから。一気に距離が縮まった実感が押し寄せてきてこれはやばい。


ははっ、と悠真くんが笑った。


「なんだよ、何で今度はそっちが照れてんだよ?慣れてるんじゃないの?」


カップを取り上げられる。

加虐心を煽ってしまったのか、こういう意地悪するんだ……覚えておかなきゃ。


「き、気にしないで下さい。返して…」


手にカップが戻る。

もう喉を通る気がしないけど何か掴んでないと落ち着かなかった。


「あのね、昨日の電話の話しだけど。一体何をしようとしてるの?」


私も周りを見回した。

会話が聞こえる距離に人はいない。



「今日は辺に人がいないなんてシチュエーションはないと思ってたけど、思いがけずこんなんだから聞いちゃうけど」


私はひと呼吸おいて、心を鎮めてから答えた。


「LYNXの管理モードを使おうと思ってます」


「管理モード?」


「はい、社内で最高機密レベルのシステムでファイアウォールのさらに奥にあるコアシステムです」


正式にはLYNX Authority Modeというこのシステムは、まさにLYNXの心臓部ともいえるものだ。


悠真くんがぽつりと言った。

「神の視点に直結するインターフェースってことか……」


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