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2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語  作者: Haruno
第二章 近づく 2030年8月

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2030年8月18日 悠真(2)


「あらら、見つかっちゃいましたね。」

と、結月さんは笑って肩をすくめた。


ブースの奥から声をかけてきた奴らは忙しそうで、俺に向かって大きく手を振り、それから結月さんに会釈した。


「ここ取り仕切ってるのが一番面倒な奴なので、会ったらすみませんなんですが……とりあえずどこか座ろっか」


「私はもう出てもいいですからね、楽しめたので」


三神に会いたくはないのは本音だが、どれから食べようとプレートを見て目を輝かせていたのに、ゆっくり迷う楽しみを奪いたくはない。


「気を遣わせてすみません、そいつも忙しく働いてると思うので」


簡単には会わないだろう、多分。


「じゃぁ、ヤバい時は言ってくださいね、これでも結構走れますから」


空いてるベンチを見つけて座った時だった。


「こんにちはー!ご来場の記念にお写真撮りますね!」


そう声をかけられて、顔を上げると、一番面倒な奴がスマホをこちらに向けて立っていた。

ワイシャツに首から下げたスタッフ証、ブルゾンを肩にゆるく羽織り、見るからに運営側ですという出立ちの三神だった。


「はい撮りましたー!次、広報のカメラでーす」


俺と結月さんが呆気に取られている間にすごい勢いでシャッターを切られる。

写真を撮り終わると三神は広報部のやつを去らせた。


「待て待て、何で広報に撮らせた?」


「もちろん社内報のレポに………おやおや?これはこれは」


三神は急に片膝をついたかと思うと結月さんの手を恭しく取った。


「結月美咲さんではありませんか、お会いするのはLYNXリリース以来ですね。一ノ瀬の同僚の三神です」


俺は反射的にその手を叩き落とした。


「何してんだ、簡単に触んな」


「えっと、お久しぶりです、三神さん」


返答はこれで良いのかと結月さんが目で訴えている。

話を合わせてくれてありがとう、という意味で頷き返した。


三神は立ち上がってブルゾンを羽織り直すと俺に不敵な笑みを向けてきた。


「アラートが鳴ったんでな、探したぞ全く」


「なんだよアラートって」


「今日来てるうちのスタッフに一斉にメッセージが来たんだよ。一ノ瀬がめっちゃ可愛い彼女連れて来場中だってな」


めっちゃ可愛いは否定しないが、彼女というのは否定しておかないと、と思って口を開こうとしたのに三神に遮られる。


「結月さん、楽しんで頂いてますか?この三神が設計したイベントは」


「はい、すっごく楽しいですよ、素敵なイベントですね」


三神は見たことないような優しい穏やかな笑顔を結月さんに向けた。


「それはよかった。ところで一ノ瀬、君ここにわざわざスイーツを求めて来たわけじゃないだろう?」


「チチャモラーダゼリーを求めて、知り合いを避けて都内を外した結果がこれってわけ」


「君が?並ぶと分かっている流行りのスイーツのために?」


「三神、あんまり余計なこと言わないように。

結月さん、こいつのことら気にせず食べて」


「このプレートはうちのスイーツ好きの社員がピックアップして、さらにはLYNXビジネス高性能版からブレイクを予測した選りすぐりのプレートなんですよ」


「そうなんですね、LYNXを利用して下さってありがとうございます。流行らなかった時はご意見くださいね」


三神は少し考えたそぶりを見せてから唐突に言った。


「結月さん、再会を記念して美咲さんと呼んでも?私のことも是非、気さくに悟と呼んでください」


ベンチからズリ落ちそうになった。

待て待てなんでお前は結月さんと距離詰めようとしてるんだよ。


「三神さん面白いですね」

と結月さんが俺に笑ったけど、三神のどこが面白いと思ったのか全く分からない。


三神は結月さんを挟んで俺の反対側に腰を下ろすと結月さんを覗き込んだ。


「美咲さん、ところでぶっちゃけ一ノ瀬をどう思っていますか」 


「こらこらこらこら、びっくりすることを次々と言い出すなよ、締め殺すぞ」


「ほら、この通り性格悪いでしょう?心配なんですよ、友人として」


結月さんは困ったように笑って、少し考えてから言った。


「え……っと、尊敬してます。優しいですし、頼りになりますし。才能も、って三神さんの方がよくお分かりですよね……」


「悟です」


「悟さん」


三神が満足気に頷いた。なんなんだこいつは、あっさりと俺がまだ先でいいと思っている壁を越えやがって。


「おい、聞こえたか一ノ瀬。尊敬しているそうだぞ。良かったな」


「……それはありがとう三神。余計な気遣いを結月さんにさせてくれたな、まったく」


このモヤっとした気持ちは何なんだ。

結月さんは当たり障りのない最大限の褒め言葉を選んでくれただけなのに。


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