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2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語  作者: Haruno
第二章 近づく 2030年8月

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横浜で未来のスイーツと、 2030/8/19 悠真(1)

〈side 悠真〉


都内から離れた方が知り合いに会わないんじゃないか、ということで電車で40分くらい、横浜赤レンガ倉庫に行くことに。


2030年に流行っているというチチャモラーダゼリーとやらを求めて店舗があるのを確認してやってきた。


ロープウェイを降りてすぐに目的地にはテントの屋根が並び音楽の賑わいと人の波。やけに賑わっていて何かイベントをしているのは明らか。


「一ノ瀬さん、何かやってますね」


「ね、だから思った以上に人が多いのか……。結月さんは人混みは大丈夫?」


「大丈夫です、むしろ好きですよ、お祭りとか!何やってるんだろ?」


掲げられた看板が見えて「オーロラ・スイーツフェス 2030」とある。


「スイーツフェスだって。結月さんのためのイベントだな、行きますか」


「行きましょう行きましょう」と言いながら、結月さんの足が速くなる。俺は一歩後ろを歩きながらルンルンと揺れる結月さんの弾む髪を見て口の端が緩んでしまう。


混んでるけど人の流れはできていて歩きづらいわけではなかった。


イベントスタッフの誘導で動線がちゃんとしてる。イベンターがしっかりしてるんだろうなと感心しながら歩いていた。


──そう思った時に、俺はもう少し警戒するべきだった。


広場に作られたイベント会場の入り口は広く取られていて、まずカップに入ったゼリーを受け取った。

今回のイベントのメイン商品、オーロラゼリーというものらしい。

試食というにはかなりしっかり量が入っている。

アレルギー表示もしっかりされている、子どもだけなら渡さない、当たり前のことがちゃんとされている。


「透明っぽいゼリー?

あ、見て見て一ノ瀬さん、みんな陽にかざしてますよ」


こうしろとスタッフは言葉で伝えているわけではないのに、誰かの仕草が誰かに伝播して、みんなが自然にそうしている。


結月さんが陽にかざすと「わあ…きれい…」と声をもらした。

その横顔に見とれていたけど、何が見えるのか同じようにしてみる。


「これはなかなか…」


陽の光を反射したゼリーの中に思いがけない光景に出会って息を飲んだ。

周りの真似して陽の光にかざしてみると、ゼリーがゆらめいて、まるで小さなオーロラを閉じ込めたようだった。


「ふふふ」と結月さんが笑った。

「ほら、心の声がでてますよ」

「うそ、声に出してた?」


ここに来る途中、どんな癖があるかという話しをしていて、結月さんに言われたのは、

「私が見た限りですけど、一ノ瀬さんは心が動くと言葉が出ますね」と。


「はい、出てましたよ。こういう時って、一ノ瀬さんの頭の中は何か映像が浮かんで止まらなくなったりするんですか?」


今まで考えたこともなかったことだった。


「そう…だね…、仕事で作らなきゃいけない映像は、何気ない景色や人の動きがヒントになって急に頭の中で一気に完成する時があるけど…。

今みたいな時はこの瞬間を写真みたいに静止画でストックしてる感じかな」


自分で何を言ってんのか分からなくなって「答えになってる?」と聞くと、結月さんは頷いて、まっすぐに俺を見て言った。


「じゃあ一ノ瀬さんの頭の中には素敵なアルバムがあるんですね」


この人は──本当に困る。

ちょっといいなと思うだけでやめておきたかったのにと心底思う。

俺は照れ隠しに結月さんをからかった。


「最近ストックした写真は、ある人が自分が作ったカレーなのに茄子とにんじんと玉ねぎを避けている場面とかね」


そう言うと結月さんは俺の腕をバシッと叩いた。


広場からブースをまわるルートがいくつか分かれていて、ゼリーを口に入れながらなんとなく歩く。

途中、イベントスタッフの女の子が凍ったフルーツをゼリーに入れるという粋な計らいがあった。食べ方の提案というわけだ。

カップが空だとしてもフローズンフルーツを食べるだけでも美味しいサービスになる。

写真を撮るためのテーブルも随所にあって SNSへの誘導も見事。


「一ノ瀬さん、あれ行きません?NEXTブレイクスイーツですって」


看板を見て思わず笑ってしまった。


「流行るか流行らないかはあなた次第、ってなんだよ。いいよ、行こう行こう」


ブースではイベントスタッフの女の子が概要説明をしてくれた。

要はプレートに盛られた5種の一口スイーツを気に入った順に番号を書いて投票するというものだ。


差し出されたプレートを見て結月さんは喜んだ。


「見て一ノ瀬さん、めちゃくちゃオシャレ!紙皿でもこんなデザインあるんだ?!カラフルだし美味しそう!一ノ瀬さんはいいんですか?」


「大丈夫、俺はチチャモラーダゼリーに備えるから」


「あげませんよ?」


「逆に俺の分ももらって結月さんにあげようか?」


「そんなに食べませんよ、もう」


なんて話してるだけで俺は楽しくて、視野がだいぶ狭まっていた。

結月さんに焦点を合わせているために周りがぼやけていたのだろう。


ブースの奥から声が飛んできた。


「あれ?悠真さんじゃないっすか!」

「悠真さん?!うわやばっ、彼女さんとですか?!」


──!?


イベントスタッフと同じネイビーのTシャツ、スタッフ証を首から下げてるのはうちのイベントマーケティング部の奴らだった。


このイベント、うちがやってたのか──


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