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2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語  作者: Haruno
第二章 近づく 2030年8月

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2030/8/17 悠真(4)

〈side悠真〉


右側が少し欠けた月を見ながら二駅を歩いて帰る。


電車がない時間じゃないけど、一日中座っていたから体を動かしたいのもあったし、歩いて行き来できる距離なんだと実感したかった。


あの2人、 Bと Dは何者なのか──


そこに行き当たると、どうやっても答えの得ようはなく、黙り込んで何かを考え込んでいる彼女からはいつもの明るさが、ふと消えている。


こういう時、何の関係でもない寂しさが胸をよぎる。

友達ならどうしたのって踏み込めるし、同僚なら手伝うよって言える。恋人なら頼って欲しいと言えるのに。


恋人だったら…か。

それだったら、明日も会う約束をしながらこうやって帰ることもないだろうけど。

なんてうだうだ考えてるあたり、ちょっと気になるとかじゃなく、すっかり惹かれていることに気がつくのだった。


体の記憶がそうさせてるのか、とも思う。

振られたという俺が、またこうして彼女と接点ができて想いを蘇らせたのか。

そもそも、全く忘れてなかったのか。


まあ、好きになるよな……

分かるよ、とかつて振られた俺に心から同情する。タイプど真ん中というか、俺はこういう人が好きなんだなと、自分で自分を発見したというか。


見た目だけじゃなく芯が強くて知的で、仕事になると寝食を忘れるほど没頭する。画面に向かう姿は、無心で、だから怖いくらいに魅力的だ。ずっと遠目に「いいな」と思っていた人が、目の前に現れて、しかもとんでもないものを生み出す人だと知ったら、そりゃ惹かれるだろう。


そんなことを考えていたら別れたばかりなのにもう会いたくなる。


明日は何か作って持っていこうか…

あの偏食ぶりを見たら放ってはおけないというか、保護者のような気持ちにもなる。


さっきも──

BとDは何者なのか、結月さんは考え込んでいたかと思うと、急に手を叩いて目を輝かせた。

「そうだ、一ノ瀬さんが買ってきてくれたごはん、たべましょう!」

足取り軽く冷蔵庫に向かう彼女に手伝うと声をかけて追いかける。

「分かってますね、一ノ瀬さん、スイーツの盛り合わせじゃないですか」

スイーツを見つけると真っ先にダイニングテーブルに運ぼうとするから、俺はそれをひょいと取り上げて冷蔵庫に戻した。

「ちゃんと食べてからね、31歳なんだから」

と言うと彼女はさめざめと泣く真似をしたけど、

「はい、サラダを運んでください」

と手渡すと、カラフルなサラダを見てとても機嫌を良くしていた。

その割にサラダはそこそこに肉ばかり食べたがる。

集中すると空腹も感じないまま時間が過ぎる彼女は、食べれる時に肉でエネルギーを蓄えてるのかもしれないけれどそれにしてもだ。


ご飯を食べながら話題はBとDのこと。

渋谷スクランブル交差点の防犯カメラってどれくらい映像残ってるもんなのか。

五年前の映像があるとも思えないけど、スマホで調べるとその保存期間は30日間。

映像を確認することはもうできない。


平日の同じ時間に同じ場所で張り込んでみるか。

勤務する会社や生活範囲が変わってなければ本人を捕まえることができるんじゃないか。接触するかどうかはさておき。


いや、顔も雰囲気もうろ覚えだ。

あの人の波の中から見つけられる気がしない。でも、正体を突き止めなくてはならないなら少しの可能性を手放すべきじゃない。


そんなような話しをしながら、結局はどうしたらいいかお手上げだと話は振り出しに戻る。


彼女は箸を置いた時に、大袈裟に言えば意を決したように、

「 BとDのことは…私に少し時間をもらえますか」

と言った。

何か、違う次元で考えて悩んでいるようだった。


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