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2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語  作者: Haruno
第二章 近づく 2030年8月

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2030/8/16 美咲(2)

いや、それはない。

LYNXはタイムリープという事象を人に起こり得る出来事として想定していない。タイムリープしたということを認識しようがない。


確かに家にいれば事故に遭う事はないし、通り魔に刺されることもない。

それにしても、という数字…。


とにかく、私は何か大きなリスクを回避した。それは間違いない。

少し考えからもう一度、もしもスイッチに入力してみる。


「もし、私が定時出社していたら?」


=== LYNX-one β / シナリオ解析結果 ===

【もしもシナリオ入力】

2025-08-15

08:30

位置情報: クロノワークス本社

alt_action = arrive_on_time

分岐: timeline-C / prob. 0.64


【シミュレーション結果】

・unexpected_encounter[event_id:0815-CW]

・emotional_stress_index: +187%

・work_productivity: -42.5%

・downstream impact: short-term relapse risk

・safety_index: -15.3%


異常値検出: 1件

・event_072: high_stress_recurrence

備考: 非望接触対象(personal_blacklist)に該当

========================



現れた結果を見て思わず目を閉じ天を仰いだ。

私にとって2025年8月15日という日は厄日なんだろうか?


あの日は、家にこもっていたら一ノ瀬さんと関わる機会はなかった。


気まぐれにフレックスで出社したらタイムリープした。


定時出社していたら──



LYNXはこう告げていた。

私が二度と会いたくないと思う人に遭遇しただろうと。


二度と会いたくない、そんな人はただ一人だ。


1年前に、といっても日付では6年前になるのか、2024年の夏に短い期間付き合っただけで別れた安城 陽司しかいない。


連絡はブロックしてたから出てないけど、着信が時々きていた。家は知られていない。


だから会社で待ち伏せしてたのかもしれない。



これを見た瞬間、胸の奥に沈んだ記憶が生々しくよみがえる。あの人と再び顔を合わせた時の、自分がどうなるかを LYNX はよく分かっている。それだけ分かりやすい数値を冷酷にも告げていた。



いや、今は私個人のことはどうでもいい。


もっと、タイムリープにつながることを──


あの日の行動を振り返ってみる。

目眩がするまでのことを。



KAIの CMが終わるかどうかのタイミングで交差点に足を踏み入れた。


私からみて左側から一ノ瀬さんが歩いてきて、いつもと違う時間の出社なのに会えてラッキーだと思った。


すれ違う瞬間にちらっと横顔を拝んで、


そうしたら正面、正確には右斜め方向から来た人にぶつかった。 




相手は走っていたのか結構強くぶつかって、相手はバッグを落としてしりもちをついた。


私は相手のバッグを拾い、彼女に渡た。


その時目眩がしたんだ。




待って──!


一ノ瀬さんも人にぶつかったって言っていた。



確認しようか?でも会食だって言ってたからだめだ。



人にぶつかたこととタイムリープに関係があるのだろうか。


未来のパンデミックの収束期間のことが頭を過ぎる。

何か研究データやサンプルがあのバッグに入っていて、落としたせいで壊れたとか?


それとも一ノ瀬さんがぶつかった人がそうだった?

それなら私と一ノ瀬さんが2人でタイムリープすることはなかったはず。


いや、そもそも、パンデミックと2人を結び付けるのは早計だ。


その二人が何か悪の組織の人とか、時間警察とか、何か摩訶不思議な人たちという可能性があるかも。


まさか。


でも私も一ノ瀬さんも、人にぶつかって、目眩がして視界が戻ったら世界が変わっていた。


その時、着信があって思考が絶たれた。

見ると一ノ瀬さんだった。


別れた陽司を思い出して不快感が胸にあったのに、一気に清涼感が体を駆け抜ける。


「は、はい、結月です」


「遅い時間にごめん、一ノ瀬です。今少し話せますか?」


「大丈夫です、私も一ノ瀬さんと話したいことがあって。あ、何か…ありましたか?会食は終わったんですか?」


「今帰り道で……ごめん、何かあったわけじゃないんだ。ただ今日行くって言ってきながら行けなかったから電話してしまいました。結月さんは?どうかした?」  


ただ話したくて、という言葉に胸が高鳴った。

一ノ瀬さんはタイムリープ同士で連絡をくれているというのに。


「一ノ瀬さん、ちょっと気になることがあって、お話できたら…あのご予定がなければ、明日いらして下さい。朝なら朝カレーがありますし、昼も夜もカレーですけど、それでよければいつでも」


電話で聞けばいいのに、会いたいと思ってしまった。

無理だと言われたらこのまま電話で聞けばいい。

人にぶつかったって言いましたよね、と。


「じゃぁ朝行きます、8…いや9時に伺います」


スマホを持っ手に力が入った。

もっと早くても構いませんから、とお伝えして電話を切った。今からでも会って話せないかと言いそうになったけど、恋人でもないのに夜に来いとはさすがに言えなかった。


私は一ノ瀬さんと電話を終えたまま、スマホの画面を見つめていた。そのままソファに横になり、スマホのLYNXを開く。


LYNXは他人の未来は見せない。


もしぶつかった相手がタイムリープのトリガーならどうやって突き止めればいいのか。


手段はなくはない。

が、研究者として使わないと決めている、それだけはするまいと。


私も一ノ瀬さんも人にぶつかった直後に異変が起きた。それは無視できない。


誰かの影響で5年後にいるなら、その誰かを知りたい。なぜかという理由が知りたい。



LYNX、教えて──



あの日、あの時、あの場所で、


「もしも、私が人にぶつかってなかったら?」



答えがほしい、どうしても。


何か決め手を得て進みたい。

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