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2030→2024 渋谷スクランブル交差点で二人が出会うまでの物語  作者: Haruno
第二章 近づく 2030年8月

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もしもスイッチ 2030/8/16 悠真(1)

〈side 悠真〉


つくづく5年後に来て困るのは「人が分からない」という点だ。

社内の力関係や自分の立ち位置も慎重に探らなきゃならない。

一番気まずいのは若い社員で、懐いてくれてるっぽい新人もこっちは「初めまして」みたいな顔をしてしまう。週末は社員名簿を丸暗記だな……。


今日は特に急な案件もなく定時で帰れそうだ。

結月さん、甘いもの好きそうだったから何か手土産を持って行こうと、考えるだけで浮き足つ自分が怖い。


そこに勢いよく飛び込んできたのは、入社3年目の岸田。直属の部下らしいが、もちろん俺にとっては初対面みたいなもの。


「一ノ瀬さん、飲み行きましょう!俺の社内コンペ前祝いに!」


またかと思った。


「社内コンペの前祝いしようって奴多すぎないか?君で5人目だぞ」


「え、そんなに!?みんな自信ありすぎじゃないっすか」


「自分の作品に自信と誇りを持つのはいいけど、過信はいけないな。前祝いより修正案の一つでも出してほしいね」


若さが眩しくて羨ましいよ、と心の中でつぶやいた。自分の可能性しか見えない頃って楽しいもんだ──なんて、たった一日で年相応になった俺。


「とりあえず行きましょうよ!俺、一ノ瀬さんともっと話したいんです、みんなも楽しみにしてますし!」


「そっか…誘ってくれてありがとう。でも今日は悪い、定時で帰りたい。次は必ず参加するから」


「噂は本当なんですね、一ノ瀬さん、女ができたって噂です。後輩より女なんですね」


なんだその噂は。

そう口を開こうとした時、ガラスの壁を叩くと同時に入ってきた男がいた。


「一ノ瀬、良かった、いたか!」


同期の三神だった。

岸田がレジェンドを見るような目をしている。やめろ、ただの変人だ。


「三神…どうした、なんか嫌な予感しかしないんだけど」


「急用だ。あ、君、悪いけど席外してもらえるかな」


三神が岸田を追い出すと、俺をまっすぐ見て言った。漫画なら眼鏡がキランと光っただろう。


「リコ・キリュウ ブライダルサロンと会食なんだ。先方の指名だ、一ノ瀬。急に申し訳ないが一緒に来て欲しい」


俺は瞬きをした。なぜ俺か理解が追い付かなかった。


「リコ・キリュウ?国内ブライダルチームの担当だろ?なんで俺なんだ?」


「そこは察してくれ」


察してくれ?


「おいおい、俺は社内で揉め事はごめんだぞ…」


他部署が長いこと大事にしている仕事を横取りするつもりはない。


「簡潔に言う。リコ・キリュウのブランド創業100周年記念プロジェクトが動いてる。僕が全体設計を担当してるんだが、そこから派生するCMやグローバルキャンペーンに君をご指名だ」


ブランド創業100周年記念プロジェクトだって?

なおさら国内ブライダルチームが節目としてやるべきだろう。

2030年の俺だってそう思ったはずだ。


「俺を指名ってのはそのイベントの、って理解で合ってる?」


「いや、それだけじゃない。その100周年を記念して新ライン〈Kiryu Heritage〉の発表、フラッグシップ店舗のリニューアル、全部ひっくるめてだ」


思わず口をつぐんだ。想像以上にデカい案件だ。なおさら俺じゃなく、国内ブライダルチームがやるべきだろう。これまでリコ・キリュウの伝統美を堅実に伝えてきた、いわばブランドのパートナーだ。俺がいいとこ取りみたいなマネしたくない。


しかし話は進んでいるのだろう。場合によってはもう逃げられない。


「今日の顔ぶれは?」


「先方は広報部長、マーケティング本部長、それから若手の担当スタッフ。うちからはマーケティング部から僕は当然として、若手と部長の予定だった。

でも君に指名が入った以上、営業部長──アカウントマネージャーの阿部原さんが出ることになった。それと君と僕だ」


これはもう逃げられないやつか。

思わず目を閉じた。どうする。

社のトップ営業が動いてるってことは、国内ブライダルチームも黙らせることができる人が動いてるわけで、会社レベルで「一ノ瀬に決まってる」案件なわけだ。


「わかった……、とりあえず行くよ」


「助かる。君が来れないとしてもどの道君に話が来ることになってた。なら先方と直接会っておいた方が君にとってもいいはずだから」


本来、別チームの仕事なんだぞ。

どう考えても面倒の匂いしかしない。


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