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第4話 ウエストフォルド・セントラル

「あの、本当に大丈夫なんでしょうか……」

「何かあっても俺たちが何とかします。だろ?」

「勿論! ですから、今は楽しみましょう!」

 

 アシェルが訊くと、ルヴィンは満面の笑みで返す。

 

 引き渡し当日を迎え、全面ガラス張りのショッピングモールにやってきた一行は、中へと入る。休日だからか想定していたよりも人が多く、子供連れの親子や学生たちが行きかっていた。


 ちなみにイルマはウィアード諸房で留守番中だ。前を歩くセリアとルヴィンに続く形でアシェルも歩みを進めていると、ふとレイヴの荷物が目につく。

 

「こんなときまでデカい荷物背負って……。中に何か入ってるのか?」

「んー、それは企業秘密っす。あ、あそこで服見て良いすか!?」

 

 レイヴは片目を閉じて言ったかと思えば、前方にあるアパレルショップを指差した。クラウンレールと名のついた看板のそこは、若年層向けの服を取り扱っている。


 レイヴがブリテンについてから服の替えをあまり持ち合わせておらず、困っていたことを思い出すアシェル。みんなも同意したところで、一同は店へと入っていく。

 

 ◇◆◇◆

 

「セリアさん、これとかどうすかね?」

「わぁ、可愛い!」

 

 襟付きのモノクロワンピースを手にしたレイヴへ、セリアは目を輝かせる。


 ワンピースだが、どこか上品さが含まれているこれならば、大人っぽいセリアにも似合うだろう。


 セリアの服を選び終わり、次はレイヴの服を見る。


「レイヴさんだったら、こっちの方も似合うと思うのですけど、どうでしょう?」

「お、良いっすね!」

 

 セリアが持って来たのは、大きめサイズの肩出しトップスと黒のロングスカートだ。レイヴはセリアの手にある服を見て、目を輝かせる。

 

 レイヴとセリアがそれぞれ服を持って試着室に移動する一方、ルヴィンとアシェルは小物用品を見ていた。


 職業柄、変装道具をいくつか持ち合わせておいて損はないだろうと、二人は選び始める。

 

「ねぇねぇ、これとかどうよ?」

 

 星型のサングラスをかけたルヴィンがニヤリと笑う。

 

「却下。変装するにしては目立ち過ぎだ」

「ちぇー」

 

 アシェルが呆れたように眉を顰める中、ルヴィンは不満げに掛けていたサングラスを元に戻す。ルヴィンの壊滅的なセンスにアシェルは疲弊しつつ、商品を見て回る。


 少ししたところで、セリアとレイヴの会計が済んだようで、一行はアパレルショップを出て次の店へ行くことになった。


 その後、ゲームセンターでレイヴが無双したり、書店でアシェルが本を大人買いしたりとショッピングモールを満喫。13時まで残り1時間となったところで、ルヴィンたちは軽食を取るためにカフェへと入る。

 

 しばらくしてそれぞれ頼んだものを食べ終え、一息ついていると、満足そうにセリアがコーヒーの入ったカップを置いた。

 

「こんなに遊んだのは久しぶりですね。銀行に務めてからは忙しくて、今回の件も相まって外に出ることがなかったもので。本当にありがとうございます」

 

 セリアはそう言いながら微笑む。


「どういたしまして!」

「わざわざここを選んだかいがあったな」

「そうっすね~。あっしらも結構遊べましたし、一石二鳥っす!」

 

 ルヴィン、アシェル、レイヴの三人はセリアの満足そうな様子に同じく笑みを浮かべる。

 

 そして、引き渡し時刻30分前となり、四人は最終打ち合わせへと入るのだった。

 

 ◇◆◇◆

 

「それにしても遅いっすね……」

「んー、迷子になってるとか?」

「流石にそれはないだろ」

 

 ルヴィンの問いかけに反応するアシェル。

 

 カフェを出て、引き渡し場所の5階広場に着いた4人はモルドーが姿を現すのを待っていた。だが、10分経っても一向にそれらしき姿は見当たらない。

 

(約束を違えることはないと信じたいが……)

 

 アシェルがメール文の表記に間違いないか確認しようと、携帯端末を出そうした瞬間、どこからか銃声が聞こえてきた。咄嗟に身構える中、銃弾がまっすぐセリアに向かって飛んでくる。


 アシェルは即座に獣化し、狼の耳と尻尾を生やすと同時に、セリアを守るようにして氷魔法を発動。自らの前に等身大の氷の盾を生成し、放たれた銃弾を防ぐ。

 

「おいおい、容赦なしかよ……」

 

 次々とこっちへ向かって撃たれる銃弾を盾で防ぎつつ、アシェルは当たらないようにセリアを引き寄せる。銃声が止んだ直後、どこからか、ナイフが飛んできた。


 狐の耳と尻尾を生やし、獣化したルヴィンは宝物庫(アルカ)からダガーを取り出し、両手に持って弾き返す。

 

「ルヴィン、先に降りる。ここは頼めるか?」

「もちろん! レイヴも先に行って!」

「了解っす!」

 

 ルヴィンが多方面から降ってくるナイフや銃弾を防いでいる間、レイヴが獣化し、背中に烏の翼が生える。一方のアシェルは氷の盾を消滅させ、傍にいたセリアを横抱きにした。

 

「え? ちょっ、何を!?」

 

 突如、抱きかかえられたセリアは目を丸くする。

 

「舌噛みたくなかったら口閉じてろ」

「ちょっ、それってどういう……」

 

 アシェルはセリアを抱えた状態で、ダッシュ。前方のガラス柵へ飛び乗り、勢いよく足場を蹴って、大きな吹き抜けから一気に飛び降りるのだった。

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