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ネックレス  作者: Arimio
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愛してるを経る〜出会い〜

僕が彼と出会ったのは、夢を叶えるために上京し、いくつもアルバイトを掛け持ちし始めた4月のことだった。

彼は、うち一つのバイト先の常連客であり、よく話しかけてくれていた。失敗ばかりするただのアルバイトに対して、優しかった。そして僕は、その優しさと屈託のない笑顔にいとも簡単に落ちた。






それから何ヶ月か経って、やっとのことで彼をご飯に誘い、話をすることで彼について知れたことがたくさんあった。



僕と彼の違い。

地元は鹿児島と北海道。

僕はインドアで彼はアウトドア。

イベントごとよりも家にいたい僕に対して大きなイベントが大好き。

僕は22歳、彼は28歳と年の差も少しある。

僕の誕生日は真冬の12月26日、彼は真夏の8月4日。……など。正反対。


共通点は、、ない。上京してきたことくらいだ。




共通点があって、互いに恋をするのではないのか。

なぜ僕は、彼に惹かれているのか。


理由は簡単で、調べてみるとネットに書いてあった。



『自分にないものを持っているから』



とてもしっくりくる理由だった。


僕は今までの人生で恋愛をしたことがない。本当に。

彼と出会うまでは、誰かを好きになることの良さがわからなかった。



これが、初恋。



初恋が同性の場合、今のご時世苦労が多いことを知った。ジェンダー差別が問題視され、改善に向かいながらもまだまだマイナーな今現在。


なんて難しい想いを抱えてしまったんだと感じていた。

そのため、この想いを諦めようかと一瞬思ったが。


無理だった。


なぜなら、


「あのモデルさん!可愛いしかっこいいよな〜!!!」

という彼の言葉に、どうしても嫉妬してしまったから。



その日ご飯からの別れ際、


「来週末とかあいてる?ご飯だけじゃなくて、一緒に出かけようよ!」


と彼は僕を誘ってくれた。


「も、、ももも、もちろんです!!」


噛み噛みになってしまったため、どうも恥ずかしくて彼の顔を見られなかった。

恐る恐る顔をあげると、満面の笑みを浮かべている彼がいた。


「ほんと!嬉し。じゃ!また来週末な!…あ敬語外して、で、連絡先教えて」


彼の勢いに飲まれて連絡先まで交換し、僕のキャパはマックス。


初恋の人があんなにたくさん笑顔を見せて、幸せそうに僕の前で笑ってくれて、もうどうしたらいいかわからないほどに幸せだった。


「ありがと!じゃあほんとにまたなー!!」


彼は漫画のような速さで走っていった。可愛いかも、、とか思っていたら、もう見えなくなるであろうその時、急に振り返って、笑顔で僕に手を振る。驚きながらも手を振り返すと、彼は満足そうにまた走っていった。









そんなこんなで何度もいろんな場所に連れていってもらい、お互いの家にも行くようになって、半年がたった。夜、彼からメッセージが届いた。


「メリークリスマス✨明日って空いてる?」


「丸一日空いてる。」


「じゃあこのマルシェ行こ!!そっちの家の方が近いから、明日の17時に迎えに行くわ!」


「わかった。ありがとう。」


メッセージを終え、僕は1人家で、


「今日クリスマスだったんだ、明日、そっか誕生日…」と呟く。


気を使わせちゃったかな、と思いながら、誰に何か届くわけでもない、この『1人』という感覚と共に目を瞑る。










翌日。

気温は低く、冷たい空気に覆われていたため、しっかりと防寒対策をしながら、ある程度はかっこよく見てもらえるような服装で彼を待つ。


彼はいつも「めっちゃカッケェ………俺もそんな服装したいけど似合わないからなあ」

と僕を褒めてくれる。でも僕は、彼の方がかっこいいと思っているし、彼の落ち着いた服装が優しくて外交的な雰囲気をさらに良いものにしていると感じる。


今日はどんな服着てくるのかな……と考えていると、チャイムがなった。


「ごめん!ちょっと遅れた!」


「大丈夫」


そう言ってダッシュで玄関を開ける。


「寒いのにありがとう。じゃあ行こう。……ね、どうしたの?」


彼が目をまんまるにして固まっている。硬直。

彼はいつも通りかっこいい服装をしていて、また好きが増す。でも同時に、これだけ一緒に出かけているのに好きと言えない自分に少し虚しくなる。


「だ、大丈夫。ちょっと、うん、ちょっと寒かっただけ」


「ごめん、待たせて。ありがとう。」


彼の様子に少し心配しながらも、僕たちはマルシェまで歩いていった。

マルシェでは東京ならではのスイーツや、都会を感じさせるオシャレなキーホルダーが売っていた。日が落ちていたため、イルミネーション行われており、いつの間にか多くの人で賑わっていた。


「一通り見たし、少し座ろうか。俺コーヒー買ってくるよ。いつものでいい?」


「ごめん、ありがとう。僕も一緒に」


「待っといて。大丈夫だから!何回も一緒に買ったから覚えてるよ笑」


「う、うん」


僕はベンチで待つように言われ、置いて行かれた。いつもなら一緒に行くといえば笑って行ってくれる。でも、今日は違った。元々様子もちょっとだけおかしかったし、心配になる。


帰ってきたら聞こう。いやでも言わないことを無理に聞かない方がいいかな。言わせるのもよくないよな。でも気になるしどうにか助けになれないかな。


とまあぐるぐる考えていると、


「遅くなってごめん!はいこれ。ちょっと混ぜてから来たから飲めると思うよ」


「………ありがとう。」


恥ずかしい。猫舌なのがバレてる。今僕はどんな顔をしているのだろう。

顔があげられない。

さっき悩んでいたことなど恥ずかしさで吹っ飛んでしまった。


「ね、ちょっとだけこっち来てくれる?」


彼は急にそう言って立ち上がった。


どうしたのだろうと不思議に思いながら彼の後ろを歩いていくと、ついたのは、マルシェにあったレストランのテラス席だった。座って、と言われて僕は席に着く。まだ8時だというのに、店にはお客さんが誰もいない。にもかかわらず、店員さんは店内で料理をしている。


不思議だなぁ、と思っていると、


「俺のことどう思ってる?」


とふいに彼が聞いてきた。


まっすぐに僕を見つめ、不安を抱えながらも何かを期待する瞳だった。


「ど、どうしたの?」


「うーん、」


そして彼は僕の前にしゃがんだ。


「私は貴方のことが好きです。絶対幸せにするから付き合ってください。」


「へ」


声にならない声が出た。僕は全く信じられなかった。

半年間の片思い。ネットでは何年も何年も片思いしたあげく振られてしまった人もいた。


「急にごめんね。」


彼が、僕を、好き?


何がどうなってるかわからなかった。


「ほんと、ごめん、泣かないで。でも、俺のことどう思ってるのか、教えて欲しいな。」


ちゃんと、気持ちを、伝えたい。






でも、


裏切らないでほしい。


いなくなるのが怖い。


僕の初めてできた“大切な人“。


なくしたら僕は生きてけない。







「ぼ、くは」


「僕は、貴方が、好きです。初めて声をかけてくれた時から、今まで。ずっと。どうしようもなく苦しくて諦めようとしたんだけど、どうしてもだめで。ちょっとしたことでもモデルさんとかに嫉妬しちゃうし、自分自身がどうしようもないなって思ってて」


泣きながらしゃべった。僕は何かを後悔することになるのかもしれないけれど、この気持ちを伝えられないと、絶対に後悔する。そう思って、おかしな文章になったけれど泣きじゃくりながら想いを伝えた。


「ありがとっ…!!」


気づけば彼も泣いていた。



ひと段落して、お互いに落ち着いた時、


「じゃあ、ゆっくり帰ろっか。」


物足りなさを感じる。まだこの夢のような幸せを感じていたい。でも、ちょっと寂しいなぁ、なんて僕は言えるわけもなく。

どうしようかな、と思っていると、


「……………今日、俺ん家泊まったり、、する?」


と彼が一言。

恥ずかしがっているのかわからないけれど、こっちを見ようとはしなかった。

でも、僕も恥ずかしかった。家に行ったことはあっても、泊まらせてもらったことはないから。


「い、きたい。」


僕は、ほぼ声になっていない言葉を発した。




「わかった。ありがと。でもとりあえず一回トイレ行ってから行こうか。ちょっと遠いから。あっちのショッピングモールにあると思う。先に外に出たら、ちょっと離れたあの広場にいてもらってもいい?人少ないし。」


「うん。あそこ集合ね。」


そう言って一度僕らは別れた。


僕の方が出てくるのが早かったらしく、彼に連絡する。


「先出た。広場にいるね。」


既読がついて、泣いているリアクションが返ってくる。


可愛い。いくらでもゆっくりでいいよ、と思いながら綺麗なイルミネーションを眺めて待つ。


2分くらいだろうか。

彼の姿が見えた。


「おーーーーい!!!!」


大きな声で走ってくる彼。手には何か小箱を持っていた。走ったら危ないよ、と言おうとしたその時、








彼にトラックが突っ込んでいった。




何が起きたのかわからなかった。




これじゃ、まるで悲劇のヒロインじゃないか。




怯えながら彼とトラックの元へ駆け寄った。




彼はもう息をしていなかった。



「え、?ウソだよね、ね、起きてくれないの?なんで?さっきの言葉もう一回言ってよ。」








彼は微動だにしなかった。







「ねえ!!!!!!」


一度きりの人生?ってこんなもの?


あっけなく終わりすぎじゃない?


こんなこと、あっていいものじゃないでしょ?


ありえないでしょ?


もっと早く言っておけば良かった?


これも夢かな?夢だよね。


もう、やめてよ。


彼の手には黒色の小箱があった。

そして開けると、そこには、『愛してる』と書かれたメッセージカードと銀色のネックレスだけがあった。




これは僕がネットで欲しいな、と思っていたものだった。









「これ、なんで、、、ほしいってしってたの、、??」




もうわかんないよ。


起きて説明してよ。


「僕」と「彼」の出会いの物語。

幸せから一気にどん底に落とされた「僕」。

「彼」はどうでしょうか?


この後、「彼」は『異世界』でもう一度愛を探します。

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