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今昔悪童ポーカー狂騒曲  作者: DA☆
第四章・重いコンダラ天元突破 修行編
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第四章・重いコンダラ天元突破 修行編 / 9

 さらにUSB接続のWiFi機器をセットすると、欽太の部屋のルーターから藤倉興業内のサーバを経由して、インターネットにもすんなりと接続した。


 「ネットだけでいいの? 他に要るものは? ダウンロードは時間かかる?」ゆかりが尋ねるとアリエスの答えていわく、「PC版のシトラスは、ブラウザ上で動くHTML5ベースのアプリだからデフォのブラウザで大丈夫、ロードもすぐだよ」


 デジタルディバイドである。テツには、彼女らが何を言っているのかさっぱりわからぬ。欽太も、仕事に関わらぬ部分となると、なかなかついていけない。


 ただ、その光景は、ふたりには懐かしくもあった。


 欽太が目を細めて、ぽつりとテツにささやいた。「博くん思い出しませんか、金城ジュニアの」


 テツはうなずいた。「あいつは車だったな。手のつけられない暴れん坊が、壊れた車見せると、黙っててめぇで直しやがんのな」


 「車いじりは、金城さんが教えたことでしたからね。草葉の陰で、喜んでたでしょうね……」


 ふたりが少ししんみりとしたところへ。


 〝ようこそカジノシトラスへ!〟光恵が年をわきまえず作ったアニメ声が、藤倉邸内に響きわたった。ジャズとポップスの合いの子のようなシンセサウンドが流れ出し、三七インチの画面上で、オレンジの髪でおめめとおっぱいの大きなシトリンちゃんが、アニメーションで踊り始める。


 「ほいテツ、テレビの前に座る」


 ……テツの情けない表情はここに極まった。ふるふる震える指で画面を差す。これを、オレが、やるのか?


 アリエスはガン無視した。


 「まずはユーザー登録だ。アカウント決めなきゃ」


 「あ、赤ウンコ?!」


 「ウンコじゃねえ!」


 翔太がひっくり返ってゲラゲラ笑い出した。翔太八歳、ウンコで笑えるお年頃である。


 「いいから、その[新規登録]ってとこクリックすんの!」


 「くりっくって何だ?!」テツは当然知る由もない。「そこから?!」アリエスは目を白黒させた。



 「さぁて今度こそ僕は仕事仕事」と、欽太がすかさず逃亡を決め込み、「おじいちゃんあきらめて、ヤクザが開く賭場だって、今はオンラインで海外のカジノとつなぐのが当たり前なんでしょ? もう盆台の時代じゃないのよ」と、ゆかりがマウントを取りに行く中、マウス操作すらおぼつかないテツの悪戦苦闘は始まった。


 実質、アリエスとゆかりによる初級パソコン講座だった。こうるせぇキィキィ声に囲まれ気が遠くなりそうな苦行であったが、テツはどうにかこうにか耐えた。


 おっかなびっくりキーボードに向かい、人差し指一本で自分のアカウント名を入力した。〝tetsu〟。それからパスワードを入力。覚えていられないと言ってメモ用紙に書き付け、入力時に枠が●で埋まると、ワケのわからん文字が出たと悲鳴をあげた(言うまでもなく、アリエスとゆかりは、漢字変換やセキュリティに関する事細かい説明を断念している)。


 クリックひとつですむはずの、アバター選択にも時間を食った。カジノシトラスでは、自分の分身となって仮想のテーブルに着席するキャラクターを決める必要がある。デフォルトでは八人用意されており、その中から選ぶのだが、どれもアニメ調のキャラばかりで───唯一渋めの絵柄のキャラクターは、どう見てもジョーか富市をモデルにした洋装姿で、テツは難色を示した。


 「アリエスは誰を使ってるんだ?」


 「アメジスト。シトリンの姉設定の、紫髪のヤツ」見てみると、幼いアリエスには似合わない気もする妖艶な女性キャラだった───いやこれは、アカウントを作った父親の趣味か、とテツは思い直した。それでも、変更が可能なのに使い続けているのは、早く大人になりたい、という彼女の願望がにじんでいるのかもしれなかった。


 ともあれ、参考にはならなかった。いろいろ悩んでマウスをぐるぐる動かすうちに、デフォルトではない、別の選択肢の枠が現れた。


 「ん? これは何だ?」


 「いま放送されてる、新撰組ものアニメのコラボキャラだね。新規登録特典で、そっちから選んでもOKだよ」


 「おぉ、新撰組いいな。土方歳三どれだ」


 「これ」


 アリエスが指さした先には、三つ編みおさげのメガネっ娘がいた。何でもかんでも美少女化する時世など知る由もないテツは、またも気が遠くなりかけたが、逆に美男子化していた幾松をどうにか選んだ。


 着流しで面長で目が切れ長のイケメン幾松に、あら、いい男、とゆかりは一瞬反応して───すぐに、テツ本人の若かりし頃の写真に似ているのだと気づいた。はぁとひとつため息をつき、それから、目をキラキラさせて画面を見つめる翔太とすやすやおねむの陽菜を見て、この生活環境をどうしたものかと思いを巡らせた。


 かくして、傍目にはドタバタ、当人にとっては難行苦行の果てに、テツがどうにかカジノシトラスの基礎的なチュートリアルを終えた頃には、夕食の準備をしたい勝子が厨房から睨みを利かせる時間になっていて、その日はお開きとなった。


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