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今昔悪童ポーカー狂騒曲  作者: DA☆
第四章・重いコンダラ天元突破 修行編
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第四章・重いコンダラ天元突破 修行編 / 8

 そして午後である。


 そうめんのザルが片づき、食後のお茶でくつろぐ面々を前にして、アリエスはすっくと立った。


 「じゃ、これからはあたしがテツにポーカー教える番だな!」


 テツは、うむ、と顎を引いてかしこまった。翔太も真似してかしこまる。


 陽菜もがんばるつもりだったようだが、おなかがくちくなったせいか、ゆかりの膝枕でお昼寝モードに入ってしまった。ぽん、ぽん、とリズムよく背中を柔く叩く母の手にあやされて、すっかり夢の中だ。


 テツは、〝BICYCLE〟と飾り文字が書かれたいくつかの小箱を戸棚から出すと、ちゃぶ台の上に並べた。


 「トランプなら買ってあるぞ。本場でも使う一級品だ。これで足りるか」


 「いらない」アリエスは即答した。せっかく用意したのに、と、テツは愕然とし情けない表情を見せたが、これは序の口のジャブだった。今や立場は逆転した。これ以降、午前中に見せたはずの宿老たる貫禄は、ただただ剥がされるメッキと化す。


 「場数を踏むんだって、テツが言ったこったろ。チンタラ手で配ってらんない。シトラスの会員になって、ネット上の有象無象とやりあうのが手っ取り早い。───テツ、スマホある?」


 ジャブの二発目───テツは首を横に振った。


 「持ってるわけないじゃない、昭和の亡霊なのに」傍らで聞いていたゆかりが、陽菜をあやす手は止めぬままに、言葉を投げ出した。


 「スマホでやったら、ジョーと同じじゃねぇか。あいつを上回らなきゃいけないんだぞ」テツが問うと、


 「ちゃんと後ろから見てて、教えながらやるよ。独りでテキトーにやるのと、コーチを受けながらやるのとじゃ全然違うはずだから」アリエスは答えた。「───じゃ、パソコンは? あたし、ウチじゃパソコンでシトラスやってるし、画面が大きい方が説明もしやすいし」


 「おまえパソコン使えるのか?!」


 「あなたパソコン使えるの?!」


 テツとゆかりは同時に反応した。同じ言葉だが意味がまったく違う。テツは、パソコンというハイテクマシィーンを一一歳の子供が扱えることに驚き、ゆかりは、スマホしか知らずマウスもまともに使えない昨今の若手に閉口していたので、感心したのである。


 「父親が置いてったんだよ」アリエスはさらりと答えた。そういえば市原の前で、父が飽きてやめたと言っていたな、とテツは思い出す。「───それで、パソコンはあるの、ないの?」


 「この家には、仕事用のが父さんの部屋にあるだけよ」ゆかりが答えた。


 「こんなでかい家なのに?!」


 「家の大きさ、関係ないでしょ」


 そこへ、背広に着替えた欽太が、ひょいと顔を出した。今日は月曜だから、彼はもともと業務時間内である。アリエスに会うために、数時間席を外していたに過ぎない。


 「じゃあ僕は、社に戻るから。アリエスさん、父のこと、よろしくお願いしますね」


 「待ってお父さん、パソコンが要るんだって。借りられる?」ゆかりが尋ねた。


 「え? 僕のはダメですよ、見せらんない資料が満載だから」


 「会社にパソコンいっぱいあるよね、ぼく見せてもらったことある」と、翔太が口を挟んだ。


 「それは社員の人たちが使うの、家に持ってこれるわけないでしょ……」ゆかりが叱りつけそうになるところ、


 「いや、待って。それだ」欽太が指を弾いた。「リース明けで誰も使ってないのが何台かあるはず。あれ、返却は四半期末だから、今なら大丈夫でしょう。あとは空きユーザーの情報をシステム課に確認すれば……」


 「デスクトップがいいと思うんだ」アリエスが身を乗り出して言った。「そんで、できるだけデカいモニター。小さい画面だと、爺さん読めないだろ」


 気が利く子だな、と欽太は頷いた。「それならそこのテレビ、デジタル入力ありますよ。どうせニュースと天気予報しか見ないし、つないじゃえばいいです」


 「ネットは?」


 「WiFiは届くでしょう。僕の部屋のルータのID、メモってきます」


 そう言って欽太は出て行き、しばらくして、自らパソコン一式を持って茶の間に戻ってきた。さらに、仏間からパソコンデスク代わりの床几も持ってくる。


 アリエスは、自分からさっさとセッティングを始めた。箱から筐体を引っ張り出し、手際よくケーブルをつないでいく。


 興味があるのか、翔太が食い入るように見ていた。「やる?」アリエスが問うと、うんうんと頷く。


 「よし翔太、これコンセントつなげ」電源ケーブルを投げ渡した。「がってん!」「げ、これDケーブルじゃん、イマドキHDMIじゃねえとか……まーいぃや、翔太、これはテレビにつなぐ」「テレビのどこ?」「たぶん下っ側」「ほいさ」


 電源スイッチを入れると、すんなりとOS起動画面が表示された。藤倉家にはこれまでゲーム専用機すらなく、茶の間のテレビに地上波放送かレンタルビデオ以外のものが映ると知らなかったテツは目を剥き、翔太はおぉー、と歓声を挙げた。


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