~記憶の中で~
薄暗い部屋の中。
リオンの机の上に足を伸ばしながら座っているレウ。正面の窓から見える月の光に照らされ、静かな夜空を見上げている。
リオンは一定のリズムを刻みながら寝息を立てて眠っている。
「今日はリオンにとって長い1日になったようだな。無理もないか……転校初日だったからな。それにしても、今宵は綺麗な星月だな――」
流れる星を眺め、ゆっくりと目を閉じた。
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深い。深い。
――ここは……水の中か?
でも、冷たくないし暗くもない。
しかし、自身の姿を捉えることはできない。
さまざまな意思が形をもたないで浮遊している――そのような場所。
「無謀ね」
あの日の彼女の言葉がこの空間に響いた。
「無謀でも構わない」
――あのとき、ほんとうにそう思ったんだ。だから、即答できたんだ。
綺麗な夕陽の空も
星月の瞬く夜空も
たとえ小さな物でも、
強い想いがなければ創れない。
――けれど、僕らは必ず創れる――そんな気がしたんだ。
あれからずいぶんと時間が過ぎてしまった。
いま彼女はどうしているだろうか――
それよりも、彼女は創り出せたのだろうか……。
それとも、叶わなかったのか……。
僕自身は未だ創り出せずにいるが……だけど、なぜだろう。
きっと彼女は創り出せた気がする。
そして、僕も創り出せる気がする。
「絶対に魅てよね――」
あぁ、もちろんさ。
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レウは閉じていた目を開いた。
空に浮かんでいた月はいつも間にか姿を消していた。月明かりを失った部屋の中は真っ暗になっている。
「ふっ、意思の強さか――」
寝息しか聞こえない部屋にレウの声が小さく響いた。レウは立ち上がり、リオンが作った専用のベッドに横になった。目を閉じてリオンと同じリズムの呼吸を刻む。
そうして――夜は更けていった。