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カラフルな仮面

 昨日ノアは見た目を戻す約束をしてくれた。

 それに愛人を作らないと言ってくれて嬉しかった。

 いきなり好きな人を忘れるのは無理なようだったが私と向き合う気持ちがあるみたいだった。


 でも突然だったからだろう。

 いきなりバラを投げたりとノアは少し混乱しているようだった。

 私が部屋に戻った後もバラを投げる音がしていた。


 私はバラを投げているのを見て前世で憧れていたタキシード仮面様を思い出した。

 前世の記憶は生まれた時からあったせいかこの世界の記憶が重なるたびに薄れていた。

 前世の記憶は小さい頃の記憶のように曖昧なのだ。


 そう言えばタキシードも仮面をしているところも似ている。

 ノアが知っている訳がないけど。



 私はノアと初デートをしてからずっと暗い気持ちだったのが少し晴れた。

 たとえまだノアが私を好きじゃなくても向き合おうとしてくれるだけでよかった。


 それくらい私はノアのことが気になって仕方がないみたいだ。

 これが好きという気持ちなのかはまだ分からなかった。


 その晩、お風呂に入ってうきうきしながらノアを待った。

 約束の時間になってもノックは聞こえなかった。

 ノアはまだ部屋にいないのだろうか。

 今日は夕食も別だった。

 それほど時間は経っていないのに気持ちがそわそわしていた。


 不安になっているとコンコンコンと小さなノックの音が聞こえた。

 私は返事もせずに扉を開けた。


 「ノア!」


 開けた瞬間サラサラとした金髪が光っているのが目に入る。

 派手な緑色の仮面をしているがその下の瞳は鮮やかな黄色だった。

 仮面も瞳も髪も綺麗だった。


 「あ、ニーナ…」


 昨日と同じようにノアの部屋は暗い。

 だが金髪の下の耳が赤いような気がした。

 ノアが戻ってくれた、そういう気持ちになった。


 私のために戻してくれた。

 嬉しくて心臓がバクバクと音を立てた。


 私たちはそのまま昨日と同じように向き合って座った。

 月明かりが差し込むとノアの髪は本当に綺麗でノアが夜空の一部みたいだった。


 「…ニーナ…変じゃない?」


 「変じゃないよ!」


 私が身を乗り出していうとノアは少し身体を引いた。


 「…ふふ」


 そのままノアが照れたように笑ったので私もつられて笑った。

 やっぱりノアは昔の髪色に戻すのは照れるようだ。

 かわいい。


 「ねぇ、ノア、私にも仮面ちょうだい。」


 私は急に自分の顔が恥ずかしくなった。


 「え?」


 「ノアだけ隠れてるのずるいよ…」


 ノアは頷いて立ち上がると大きなチェストの引き出しを開けた。

 ずらりといろんな仮面が並んでいる。

 色とりどりの仮面が綺麗だった。


 「どれでも好きなのつけていいよ。」


 私はその中からノアが一度もつけていない黄色の仮面を選んでつけた。


 「似合う?」


 私が聞くとノアは笑った。


 「うん。」


 なんだかノアの話し方も優しくなっている。

 私は本当にノアが戻ってくれたようで嬉しかった。


 「この仮面はどうしたの?」


 「全部友人がくれた。」


 「この黄色いのは誰がくれたの?」


 「ミア、だったかな?」


 女の子の名前だ、と思った。


 「…その緑のは?」


 「そう言えばこれもミアだ…」


 ああ、その子がノアの好きな子なんだと思った。

 ノアは仮面の下でもわかるくらい照れたように笑っている。


 「…ミアってどんな子なの?」


 「元気がいい子かな。」


 私は何だか面白くない気持ちになった。

 やっぱり気持ちを整理するのは難しい。


 「ニーナにちょっと似てる。」


 「…そうなんだ。」


 私はノアの好きな人にちょっとだけ似ているらしい。

 複雑な気持ちになった。


 「…」


 そのまま何も言わずに私たちは窓際のテーブルに戻った。

 ちょっと女の子のことが気になった。


 私たちはお互い中々口を開かなかった。

 何を言ったらいいのかわからない。


 お互いの間に沈黙が流れていたが途中から私はノアの容姿に目を奪われた。

 キラキラした髪を眺めて仮面を見て、その下が見たいなと思った。

 きっと綺麗だろう。


 「…あれから考えたんだけど。」


 ノアが口を開いた。


 「これからは今の僕で勝負しようと思う。」


 ノアの黄色い瞳が私をじっと見ていた。


 「…何の勝負?」


 「…結婚、の?」


 ノアは何だか歯切れが悪い。


 「結婚って誰の?」


 「…僕たち、の?」


 「私、たちの…。」


 何の勝負だろうと思ったが同時にノアが自分のことを僕と言ったのが嬉しくてあまり聞いていなかった。


 「勝負、頑張ろうね。」


 私はそう言った。


 「…ニーナは頑張らないで。

  頑張るのは僕だから。」


 あ、これはノアが好きな人を忘れるってことだろうかと思った。

 好きな人を忘れて私と結婚しようとしてくれているのだ。

 私は胸が少しときめいた。


 「あ、ありがとう。」


 私が言うとノアの口元が笑った。

 仮面で隠れていたけど笑顔が想像できる気がした。

 顔が熱くなるのが分かった。


 「じゃあ休日にデートをしよう。」


 ノアは積極的に私との時間を作ってくれるつもりのようだ。

 そのまま私たちはデートの約束をした。

 デートプランはノアが決めてくれるらしい。

 私は嬉しかった。


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