アメリカ国籍のパソコン
俺はマイケル・祐樹。周りの友達からはマイキーって呼ばれてるんだ。
マイクのマイに、祐樹のキ。だからマイキー。
ある日の昼下がり、その日は俺の誕生日だった。
「マイク、おじいちゃんから何か届いてるわよ。」
お母さんの声だ。お母さんはアメリカ生まれのアメリカ育ち、
でもお父さんが日本人でわけあって俺たち三人は日本に住んでるんだ。
「はぁ!!!!????あのじじい、今更俺に何のようだよ!!!!」
母からの知らせに思わず激怒するマイキー。
しかしその怒りも当然だ。マイキーの祖父は、過去にマイキーの父親をぶったことがあるのだ。2度もだ。
そのことをマイキーは忘れないように、ずっと瞼の裏に焼き付かせているのだ。
もう10年も連絡を取り合ってない祖父からの贈り物、一体何を送ってきたのだろうか。
段ボールをカッターナイフで何度も突き刺しながら開封(はじめしゃちょーの奴w)
すると、中からは──。
得体の知れない気味の悪いものがいくつか入っていた。その中のひとつの包装を剥がす。
「人間の手…?」マイキーは腰を抜かす。箱の中からこんなものが出てくるとは。
しかしよく見てみると、本物の人の手では無さそうだ。触れると冷たかった。
全体を見回してみると、人差し指と薬指がボタンになっていた。さらに中指の第2関節は回転する。
これではまるでマウスではないか。祖父の趣味の悪さがまさかここまでとは…。
冷静さは取り戻してきた。
次の包装を剥ぐとどんなものが入っているのだろう。2つ目を開ける。
なんと驚いたことに、デカデカとアメリカの国旗がプリントされたモニターとPC本体だった。
「これで全部部品揃っちゃったよ!どういうことだよ!」
マイキーは一人暮らしの結果癖づいてしまった大きめな独り言を呟く。
ここまでお膳立てされれば仕方ない、マイキーは本体にモニターと趣味の悪い手型のマウスを接続し、
祖父への文句を垂れながらパソコンを立ち上げた。
「hooo!!!」とイキリ大学生の鳴き声のような起動音の後、モニターに顔が表示された。
「だれだよ!!!」マイキーは誰も聞いていないツッコミを入れる。
違う、1人聞いていた。そう!モニターに映った顔が突然笑顔になり大きな笑い声が部屋に鳴り響く。
手型のマウスが本来あり得ない方向に曲がりながらマイキーの手を握り返す。
「お前最高だな!!!!」
マイキーは握られた手を慌てて振りほどき、反射的に叫んだ。
「うわあぁ!!だれだよ!?!?」
モニターの顔は笑顔で続けた。
「君のパソコンに搭載されているロビンさ!!僕はAIなんだ!!」
話を聞くと彼はSiriやAmazon echoと同じ類であることが分かった。
アメリカの今は廃業になってしまった小さなIT企業で製造されたらしく、
またどうやら彼が搭載されているものと同じ型の製品はすでにほとんど廃棄されてしまったらしい。
ロビンのあまりのテンションの高さが苦手で電源を落としてしまおうかとも考えたが、
心が痛むので彼と数週間生活を続けていると彼が思いのほか高性能であることが分かった。
彼が作用するのはパソコン内だけであるものの、
調べ物をはじめマイキーのネット関連の要望を完璧にこなしてくれた。
「いやあ、ロビンのおかげで宿題がはかどるよ!!このままなら夢の成績学年一位も目指せるかな?」
とマイキーが話しかけると、ロビンは
「ああ!君ならきっと達成できるさ!!」
といつも通りのハイテンションで返してくれた。
次の日学校に行くと、数名のスマートフォンが爆発して負傷者が出たと騒ぎになっていた。
けがをした人は全員マイキーより成績が上位の人たちだった。