その4 決意(Part. H)
全く落ち着かない先生の研究室に残されて、独り、静かに時間を過ごした。
鞄からは、もぞもぞと大きな呼吸で寝息を立てる、イヌウサギ。
その膨らみと温かさを実感したとき、私はやっと決意した。
「(私も先生を追いかけてみよう…!!)」
水筒から一口、お気に入りのお茶を飲む。
今から頑張ったって、何にもならないかもしれない。
でも…それでも、私だってライ君や…ポケット先生を助けたい!
そしてポケット先生に会って、どうして私を置いて“勇者の揺り籠”に行ってしまったのか、ちょっと怒って問いただしたい!!
きっと途中でディアス先生は何食わぬ顔で帰ってきてくれて、ライ君も元通り。
信頼できる人だから、きっとそうなる。
でも、だからこそ私が、先生に育ててもらった力でどこまで追いつけたのか、その成果を見せたいのだ。
分かっている。本当の本心は、独り残されて寂しいんだってことにも。
よし―!
そうと決まれば、と研究室を出ようとする。
するとそこには、先生お気に入りのインテリアである龍のはく製。
説明書きには“グリムバースのはく製”とある。
「本当に本人の許可が下りてたっ―(・ㅂ・)!!」
自分のはく製を置いておくなんて、なんて…。
思わず声に出てしまったつっこみに、独り笑ってしまった。
その4 終
ひとこと事項
・研究室の標本
ディアスが死霊術資料室(現・ディアスの研究室)に置いていた資料。「転送術士候補生I その2」参照。