その21 第5支部にて(Part. H)
「それで、本当にあんたがポケットなんだね。」「…うむ;」
リブラ・リンデから帰ってきて数日後、私達は第5支部を訪れていた。
今はライ君が自分で事情を話し終え、カンカンな支部長がやっと収まったところ。
次はハーヴィー先生に怒られてきてください。
「女の子と一緒に生活できてよかったですね~」「しとらんわいっ―!!!」
教え子だったオリヅル先輩にもジト目でなじられるライ君が、必要な時以外はイヌウサギに意識を渡していたと必死に抗弁する。
使い魔ならそんなものかなって思っちゃうけど、ほんとかなあ…。
元に戻った犬のしっぽが新聞紙をガサリ、ルーシェ様の写真を揺らす。
記事によれば、ルーシェ様は勇士達と共に好戦派だった魔族の一党を討伐し、残った穏健派の魔族達は、王女様の名のもとにジルオールと盟約を結んだという。これからは魔族と人族の交流が始まるとかなんとか。
「そういえば支部長、また何か新しい依頼はありますか?」
「…その理由は何だい?」
「もちろん私の経験のためです―!」
ライ君やディアス先生、それに皆がいてくれるなら、ばっちり安心だよね!
「それなら大歓迎さ!次の任務も頼んだよ。転送術士候補生!」
「はいっ―!」
まだまだ日も高い昼の頃。
これからも賑やかでとっても楽しく過ごせそうな音がした。
その21 終
ひとこと事項
・その後の処理
ポケットは周囲に正体を明かしたものの、今回は結局スコラ・リンデには帰らなかった。彼の研究室はこのままでは片づけられてしまうこととなるため、重要な荷物はディアスやハーヴィーの研究室に予め移しておくことが計画されている。ディアスは正式な後任が決まるまでは、転送術科を担当することになる予定である。




