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転送術士候補生III  作者: よのもり せいう
19/22

その19 真相3 (Part.H)

「私はかつて、来訪者と共に世界を旅したことがあるんです。」


ディアス先生の告白を、先生達はじっと見守る。

私は内心、すごくびっくりしていたのだけれども…!


「その来訪者は勇者となって、この世界を大いに冒険し、あくまで私の感想ですが、その知識と技量を用いて、この世界に平和をもたらしてくれました。」


星のない夜空を見上げ、息を整え、先生が想いを宙に吐く。


「私はね…その冒険が、本当に楽しかったんです。」


昔を懐かしむような声。

きっと、それが先生のかけがえのない時間だったのだろう。


「けれども彼女は去りました。彼女がこの世界に来たとき、そして“ゲームクリアをしたから”と言って去ったときに使った場所が、この地です。」


「始まりと・・・終わりの場所ということですか?」


「ええ。この揺り籠の地で世界における情勢や基本的な所作を知る…彼女は“オープニング”とか、“チュートリアル”と言っていましたね…まあそれを受け、来訪者は世界に降り立ち、様々な事績を成し遂げ、最後にその結末の先を映した“エンディング”とやらをここで見て元の世界に帰るのだそうです。」


「彼女も例に漏れず、エンディングを見終わった後に元の世界に帰ることになりました。でもその時、私にこう言ったんです。“次はあなたが勇者になって、世界を守ってほしい。後のことは頼んだ”、とー。」


私にはなんとなくわかった。

ディアス先生は、その勇者様が好きだったんだろうなって。


でも、そんな勇者様に次の勇者を託されて、困ってしまって、ずっとここにいた。

もしかすると、また勇者様が帰ってくるなんて、一縷の希望にすがったのかもしれない。


そんなことをしているうちに、時間がたってしまって、ポケット先生に出会ったんだね。


ディアス先生の話を聴き終えると、ポケット先生が口を開く。


「まあ、そういうことじゃな!勇者を押し付けられて困っておった龍に、この場所を目指して飛んで来たじじいが出会ってしまったというわけよ!」


災難じゃったなあと笑いながら、カオス級の龍の肩をバンバン叩くポケット先生の大物ぶりに冷や冷やしつつも、ディアス先生の表情も暗くなくなっていて、ほっとした。




その19 終

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