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転送術士候補生III  作者: よのもり せいう
17/22

その17 真相1(Part. H)

「終わりましたね…来て下さり、助かりました。」


人の姿に戻ったディアス先生が、仕事を終えて帰って来た。

私が気絶させてしまった魔族を見せると、この場所では何もなかったと記憶を改ざんした上で、他に倒した魔族も一緒に、魔族領へとディアス先生が転送した。


「命を奪わずに戦うのは苦労しましたよ。何度自分を蘇生させたことか。」


魔族の人たちも、すぐ生き返ってくる相手に、相当困惑しただろう。

トラウマになっちゃったら気の毒だな、なんて思う。


「これであとはルーシェ君達の活躍を見守れば、一件落着ですね。」「-勇者様?」


久々なお名前が出てきたのでびっくりすると、ディアス先生が状況を教えてくれた。


「ルーシェ君は今、第三王女を狙った一連の事件の黒幕、魔族長オストラシウスの討伐に向かっています。」


先生によれば、ポケット先生を狙ってここに来た魔族達も、彼の配下だという。

オストラシウスは、魔族と人族の協和を訴える王女様が疎ましかったらしく、同じく王室と険悪だった邪龍ブロセルニルに王女襲撃の計画を持ち掛けたり、今回の襲撃をした人らしい。


「いやあ、王女様に伝令をしたのが仇となったわい;」


「だから目立つことはしないで下さいと言っておいたのに…;」


頭をかくポケット先生に、やれやれといった表情のディアス先生。

ポケット先生はこの地で王女の危険を予見したため、それを伝えるべく伝令をしようとしたところ、相手方に足がついてしまい、今回ひどい目にあったのだという。


こんなところまで来られる魔族の人たちってすごいなと思ったけれど、ハーヴィー先生と私には、まだもっと聞きたいことがいくつもある。


「それで…そもそもなんでお前さんがこんな場所におったんじゃ?」


「こんな場所とはなんじゃ!この地こそ、かの伝承の地“勇者の揺り籠”なのじゃぞ!」


久しぶりの友人との会話に熱くなりながら、ポケット先生はこの空に浮かんだ情景こそが、おとぎ話に出てくる“世界の変異を映しだす鏡”なのだと教えてくれた。




その17 終

ひとこと事項


・ルーシェ

グリューンリッテのアンデッド騒ぎを鎮めたことで一躍有名となり、邪龍ブロセルニルを討伐したことで真の勇者となった青年。ディアスとハーミアはこれらを陰から支援する形となった。


・魔族領

どうやらディアスは行ったことがあったらしい。


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