その16 反撃(Part. H)
「魔族は、ワシにここにいられては非常にまずかったらしい。」
「先生、傷を―!!」
ポケット先生は傷を負っていたので、ハーヴィー先生と一緒に戦場から離れて転移をし、すぐに薬草を飲んでもらう。
ポケット先生がウゲっと苦い顔をすると、親友はそれを見てにっかり笑った。
遠くを見れば、本気を出した巨大な龍に、魔族の人たちが翻弄されていく。
倒されれば倒される程、魔族が先生の僕になっていくのが本当に怖い…;
「でもそれがバレてしまっての。慌てて逃げておったら、ディアスが察知して来てくれたというわけじゃ。ただね、ワシを守りながら戦うのが中々大変だったみたいでね。」
先生なら転移で学校あたりまで飛んで来ちゃえば良いのに、と思いつつも、周囲を包む異世界感に、それも色々難しかったのかな、と察する。
と、目の前に魔族が一人転移してきて、私達に思い切り槍を突き出す!
けれども私の転移の方が早かったので、その槍はただ虚空を掠める。
そんな気配みえみえの転移じゃ、全然予想が付くんだから!
なんて思っても、相手はもう一突き、もう一突きと槍を突き出す。
連唱するうちに、この人達にライ君(中身)が傷つけられた事実が頭に込上げてきた。
こんなに避けてもまだライ君を狙おうとしてくる姿が、正直、許せない―。
そう思った時には、私はありったけの力を天球儀石の杖に込めていた。
「お返しだよっ!!」 「時間差転送術っ!?」
ここへ来るときのとっておきとして、支部長が私に教えてくれた戦い方。
周囲に落ちている小石を飛礫の魔術で飛ばしつつ、時間差をつけて相手の方へ転送する。
それを実践してみれば、相手の魔族の人は両手で頭を庇ったものの、後頭部に投石を受けて気を失った。
その16 終
ひとこと事項
・時間差転送術
時間差で転送を行うことで、ランダムなオールレンジ攻撃を可能とする方法。石を弾き飛ばす飛礫の魔術と組み合わせるというアイデアを、ハーミアは支部長に教わった。「転送術士候補生I その8参照」




