その15 火の降る夜(Part. H)
再び目を開けると、私達は真夜中の平地のような場所に立っていた。
星一つないはずなのに、周囲は見渡せる程には明るい。
そして不思議なことに、うっすら空に、知らない場所や人の姿が映し出されている。
まるで橋行く人々を水面に写し見ているかのよう。
きょとんとしていると、目の前にも似た表情の数人の影があった。
「ハーミア…さん?」「あ…あ…先生っ―(৹˃ᗝ˂৹)!!」
影の一人がディアス先生だと分かった時には、私はもう飛びついていた。
びっくりした先生は、一瞬戸惑っていたものの、すぐに私を連れて転移する。
すると元いた場所に、巨大な火球が落ちてきた!
「ディアス先生。一人でポケットを探しに行くなんてつれないですなあ。」
「ハーヴィー先生…どうしてっ!?」
珍しく驚く先生に、頭の後ろで腕を組んで、下手な口笛を吹くハーヴィー先生。
と、そこに、もっと本当におじいちゃんらしい、真白な長い髭の男性が現れる。
「…本当にここまで来よるとは、流石じゃな。」「ライ君…!?」
それは紛れもなくライ君の声で、響きが目に伝わって涙腺を歪ませる。
でもその姿は入学面接の時に、そして普段肖像画で見ていた先生にそっくり…と思うや否やまた転移させられる。
「危険な場所だから私一人で来たのですが…まあ良いでしょう。ハーヴィー先生も来て下さったので百人力ですし。これで守りは心配なさそうですので、心置きなく戦えます。」
降り注ぐ火球を避けながら、ぱっと情勢を立て直し、龍になったディアス先生が空に向かって翼を構える。
ハーヴィー先生は初めてディアス先生の正体を見たので、ものすごく驚いている。
そうですよね…;
と、先生達に預けられながら空を見上げれば、耳の長い男の人達が宙に居た。
あれが敵だな、と直感した。
その15 終
登場人物・事項
・耳の長い種族
歴史書に依れば、かつてジルオール大陸にはいくつかの種族の国が存在していたが、最終的に人族との戦いに敗れ、別の地へと逃げ延びたとされている。姿かたちはおおよそ人間と等しいものの、それらの種族は耳が長い、牙がある等といった亜人的な特徴を持っている。ジルオールではそれらを魔族と呼んで嫌っているが、第三王女が中心となってそれらの種族の国内での権利の復興と種族同士での友和を呼び掛けている。




