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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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51 聖女のお披露目

 夜もすっかりふけた頃、私たちは街の宿屋に着いた。私だけじゃないけど、クランさんもアメリアさんもぐったりとした様子で馬車から下りてきた。アメリアさんは足元が少しふらついているみたいで、クランさんはアメリアさんをしっかりと支えていた。


「クランさん、アメリアさん、マルルカも疲れたでしょう? 荷物は兵の人たちが部屋まで運んでくれるそうです。夕食も準備してくれるようなので、食堂に行きましょう」


 いつもと変わらない様子でラケムさんがみんなに声をかけた。

 ラケムさんだって疲れていないはずはない。それなのにいつもと変わらないにこやかな表情…… この人って本当にすごいなって思う。

 よく考えれば、王様の名代として動いたり、瞳の結晶を壊した後よその国の王宮で何か対処するなんて、普通の人ができるはずがない。そもそも、最初のあの偉い人たちの集まりにいるはずないじゃない!って思う。

 ?? ってことは、ジャイロもすごい人なんだろうか……?


「ラケム王子様、私、知らなかったとはいえ、失礼なことをしたかもしれません。ごめんなさい」


「いえ、この旅ではただのラケムです。ねぇ、クランさん?」


「ラケムさんの言う通りです。それにしても、マルルカさんの神の力を初めて体験させていただきました!! 私は馬にしがみついているのがやっとでした」


 ラケムさんはクランさんのほうを見てニコリと笑った。


「マルルカさん、すごかったわ!! あんなことができるなんて!

 私、風になった気分だったわー!」


「マルルカ、ありがとう! 私は何度君に助けられていることか……」


 アメリアさんの子どものような無邪気な表情になんだか慰められるし、みんなにお礼を言われるとなんだかとってもくすぐったい。

 やっとクローネに帰って来たんだって思う。すごくホッとする。


 安心すると、メイちゃんやレイスのことが気になる。


「明日が、メイちゃんの聖女のお披露目の日なんですよね……

 メイちゃん大丈夫かな……嫌な思いしていないかな」


「マルルカの気持ちはわかるけど、ここで私たちが心配していても変わりません。

 みんなを信じましょう。それにメイさんのそばにはマルルカのお兄様がいらっしゃるのでしょ? 大丈夫ですよ!」


 ラケムさんが慰めの言葉をかけてくれる。

 レイスもきっとメイちゃんのことを聞いているに違いない。レイスもつらい思いしていないかな……


「メイちゃんのそばにいるのはオルトのお兄さんなのでしょ? だったら大丈夫よ! マルルカさん!」


 アメリアさんの言葉にうなずく。

 でも、魔力をこの世界で使うことを許さないアル兄様が、メイちゃんの奇跡の力を許すはずがないと思う。それとも、残滓のないきれいな魔法を使えるようになったのか……


 考えると、余計に不安になってくる。


 私たちは遅い夕食を取ると、翌朝、ベドルさんが用意してくれた馬車で一路王都へと向かった。



****************************



 同じ日、クローネ王国の王都では、レイスがジャイロと共に王宮を出て、セフィス教大教会前の広場へと向かっていた。

 広場は大勢の人であふれかえっていた。聖女様を一目見ようとする者、奇跡の力を信じてやってきた人たち。奇跡の力をお披露目してくれるという噂が国中に伝わっていたから、医者に治らないと匙を投げられた人たちやその家族の人たちがすがるような表情で、聖女様の姿を待っていた。

 教会へと上る階段は教会騎士で固く守られていて、教会の前へは出ることができない。

 そして、教会をぐるりと囲んでいる回廊には教会騎士が配置されていて、教会を固く守っていた。


「レイス、何かわかるか?」


「あの…… 片目の人からは何も感じません。ラケムさんから感じたようなものが、というか本当に何も視えないんです」


「お前、力が無くなったんじゃないか?」


「! そんなことない! あっちの左前にいる茶色の長いケープを着ている人は、なんか濁って視える。あの人、長旅をしてきたように見えるけど、正体を誤魔化してるかもしれない……」


 レイスが怒ったように言うと、ジャイロは後ろを少し振り向いて、忍んで控えている一人に、「確認して来い」と目で合図する。

 レイスとジャイロを守るようにして控えていた一人がすっと姿を消すと、レイスの言っていた茶色のケープの男に近づいた。と、その瞬間、ケープの男は崩れるように控えの男に寄りかかるようにして崩れる。ケープの男を介抱するかのようにして抱きかかえると、人混みの中に消えていった。


「なんか、もっと前のほうにも同じように濁って視える人がいる。もっといるかもしれない……」


 レイスは背伸びをすると、辺りを見渡すように視線を動かしていく。


「レイス! あんまり変な動きをするな! 怪しまれるぞ、お前。教会の奴らに見つかったらどうすんだよ!」


「あっ…… おれ、メイの力を視るんだった。ごめん、ジャイロ」



 少しして、ジャイロたちから離れて行った男が戻ってきて、ジャイロに何か伝える。


「あの男、タミネアの兵らしいぜ。タミネアの剣をケープの下に隠していた。タミネアの奴がここに紛れているのは間違いない。

 メイを狙っているとみて間違いないな。

 レイス、また見つけたら教えてくれ」


 それからできるだけ自然に移動しているように装って、レイスとジャイロは広場に集まっている人たちを注意深く見ていた。時折り、レイスが怪しい人物を見つけると、ジャイロに伝える。2、3人で一緒にいる人たちもいる。


「今のところ、見つけられたのは10人くらいでしょうか……」


「じゅうぶんだよ! 後は王国の兵たちを信じようぜ!」


 少ししょげているレイスにジャイロが声をかける。





「セフィスの民たちよ! セフィス様の名の下に集いし者たちよ!」


 大教会の真ん中の大きな扉が開き、ひとりの司祭が出てくると、広場に集まっていた人たちに大きな声で呼びかけた。

 呼びかけの声を聞いた人びとは、みな教会の正面に注目し、一斉にその場が静まり返った。


 教会騎士の後に守られるようにして出てきたのは、豪華なセフィス教のローブをまとい、宝石でキラキラと輝いているミトラ(冠)をかぶった教皇だ。

 滅多に見ることのない教皇は、高齢だが眼光のするどい感じの人だった。


「セフィスの名に集いし子らよ。

 プーレフェミナ・スザンナの子メイが聖女として現れたことを、共に喜ぼう!

 セフィス様が聖女様に奇跡の力をお与えくださったことを、共に感謝しよう!」


 教皇の言葉で姿を現したのは、聖女メイと呼ばれた少女だった。

 金髪の緩やかな長い髪が陽の光をあびてキラキラと輝き、真っ白なローブと金色の短い錫杖は清らかな輝きを放っていた。


 聖女が姿を見せると、広場に集まっていた人びとは空気が大きくうねるようにざわめいた。




「あの聖女……メイじゃない! ぜんぜん違う!

 確かに聖女様みたいにきれいだけど……」


「シェルドンは嘘を言っていなかったってことか……」


 レイスはメイと呼ばれた聖女を見ると、一瞬唖然として、訳が分からないというように首を強く振る。が、すぐに気を取り直してジャイロに小声で伝えた。




ちょっと忙しくなってきたので、更新頻度ちょっと落ちると思います。少なくとも週末には書けるので!

第3章(後半)もだいぶ進みました!

少しでも面白いなと思っていただけましたら、評価、応援お願いします。書き続ける力になります。

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