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2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
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49 思いがけない同行者

 私が目覚めたのは、お昼近い時間だった。

(こんな時間まで寝ちゃったのは初めて! ラケムさんところに行かなくっちゃ)


 慌てて着替えてラケムさんの部屋をノックしたけど、返事がない。

 1階に降りると、宿のおじさんが、ラケムさんから、出かけるから妹を寝かせておいてやってくれって頼まれたと教えてくれた。


「お昼の支度をしてるけれど、何か食べるかい?」


「じゃぁ、ジュースとパンを1切れいただけますか?」


 おじさんは厨房に引っ込むと少しして、はちみつ漬けのレモンエード、黒パンにリンゴジャム、それにドライトマトとキノコのグリル、目玉焼きを持ってきてくれた。


 お礼を言って、レモンエードを一口飲むと、急にお腹が空いてきた。

 結局、おじさんが準備してくれたのを全部食べてしまった。おじさん、鋭い!



 神殿に行ったら迷惑だろうな……と思う。もちろん王宮なんかには近づかない!

 今頃、大変なことになっているはず。


 気分転換に散歩に出ることにした。昨日の今日だけど、王都の中は特別変わった様子はなかった。王宮の中のことだから、秘密にしているのかもしれない。

 ここは王都と言っても高い山々に囲まれているから、それほど広くない。でもとってもきれいなところだ。空気も澄んでいるみたいで気持ちがいい。この街を散策していると本当に気分転換ができる。


 散歩から戻ってくると、お兄さんが戻ってきているよって、宿のおじさんが教えてくれた。食堂の隅のテーブルにラケムさんがいるのを見つけた。


「ラケムさん、おかえりなさい!」

「ただいま、マルルカ。 王宮に行って私ができることはやってきた。

 昨日の出来事は決して口外しないようにも言ってきたから、しばらくは噂になることはないだろう。

 明日は朝早く出るよ。アメリアさんもいるから、あまり無理な行程は取れないし、気持ちだけ焦ってもいいことないからね。休めるときにはしっかり休むんだよ」


「メイちゃんのこと何かわかりましたか?」


 ラケムさんはタミネアの王宮で聞いてきたことを教えてくれた。

 メイちゃんが奇跡の力を授かっていることを知ったタミネア王が、メイちゃんをさらうために密かに兵をクローネに潜入させたという。クローネの王都セフィス教の大教会で正式に聖女としてお披露目をするのが3日後――昨日の時点での話だから、2日後、明後日だ。

 タミネア王は連れてこいと命令しただけで、後は潜入したタミネアの兵がそれを遂行するだけなのだという。瞳の結晶は壊されてしまったから、それから先のクローネの様子はわからないし、命令の変更を随時できるわけがない。


「どんなに急いでも僕たちは間に合わない。タミネア王の命令を取り消す伝令を出していたけれど、早馬で行ったとしてもうまく伝わるかどうか……

 ただ、僕たちは明日中にはタミネアを出たほうがいいと思う。

 聖女のお披露目の終わった後では、どんな結果であっても国境沿いは混乱するだろう。危険だ」


 ラケムさんはそう言うと、少しやることがあるからと部屋に戻った。ちょっと寂しかったけど、あんまりわがまま言っちゃいけないと思って、部屋に行って帰り支度を準備することにした。

 夕飯の時間になったから1階の食堂に降りてみたけど、結局、その日ラケムさんは来なかった。




******************




 翌朝、ラケムさんと一緒に王都を守る外門のところまで行くと、すでにアメリアさんともうひとり……「大神官様?」がニコニコしながら待っていた。神官様が来ているローブではなく、街の人たちと同じように、ズボンにベスト、その上に丈の長いケープを着ていたから、一瞬誰だかわからなかった。


「私がアメリアと一緒に行くことにしました。道中は、クランと呼んでください。

 お二人の足手まといにならないようにしますね」


「私も驚いたのです。まさか大神官様だなんて……」


 アメリアさんは、この旅の先に、メイちゃんとレイスに会えるかもしれないという喜びで、声がはずんでいる。


「大神官様、あの……大神殿を離れても大丈夫なのですか?」


「別に問題はありません。やらなければならないことは片付けてきましたし、それに、私はいつも奥の院で祈りを捧げていますから、いるかいないかなんて、外の人にはわかりはしませんからね!

 それから! 私は『クラン』です!」


 大神官様――クランさんは、ちょっとお茶目な人なのかもしれない……


 

 私とラケムさん、アメリアさんとクランさんがそれぞれ馬に乗って、早朝の王都を離れる。

 ふもとの街まではずっと下り坂になるので、来た時よりも早く進んでいるように思う。ふもとの街はどんどんと大きく見えてきた。お昼過ぎには街に着くことができて、遅い昼食を取ることにした。

 

「ここまでは順調ですが、国境がどうなっているか少し心配ですね。乗り合い馬車が出ているかどうか…… 出ていたとしても、もしかしたらクローネの国境を超えられない可能性もあるかもしれません」


 クランさんは、お昼ご飯にほとんど口をつけることなく、香りのとんだ紅茶を飲みながら思案している。


「両国の兵がそれぞれ、国境沿いで布陣を張っている可能性は十分にありますね。確実に国境を越えるには……

 クローネの国境は私が名乗り出れば通ることができるでしょう。一番の懸念はタミネアを出れるか? ということです。

 馬を乗り換えていきましょう。馬車よりも動きは速いし小回りも効く。ところで、クランさん、馬の扱いは……?」


「タミネアの民ですから、そこそこ走らせることはできます。そこそこですけどね……」


 ラケムさんは、お昼のうさぎ肉とキノコのソテーを食べながら、クランさんに提案していた。その間に私は、アメリアさんに出されている料理を伝えて、ナイフとフォークを渡すと、食べやすいようにお皿の位置を並べ直した。


「困ったことがあったら、遠慮しないで言ってくださいね」

「ありがとう、マルルカさん。あの…… できたらお肉を切っておいていただきたいのだけど……見えないと切る大きさがわかりづらいの」


 アメリアさんは少し恥ずかしそうにして私に言った。「気づかなくてごめんなさい」、そう言って、アメリアさんのお皿のお肉を食べやすい大きさに切り分ける。

 スーおばさんとそっくりのアメリアさんのお世話をしていると、とっても不思議な気持ちになる。少しの間だったけど、いろいろと私に教えてくれて、いっぱい愛してくれたスーおばさん。なんだか、アメリアさんを通してスーおばさんにお返しができているような気がする。セフィス様の巫女様だったけれど、アメリアさんってなんだかとっても可愛らしい人のように思える。

 どこか少女のような感じがする。


 私とアメリアさんが昼ごはんを食べている間、ラケムさんとクランさんは食堂の人に頼んで馬の乗り換えを済ませ、万が一に備えてサンドイッチと飲み水の調達も済ませていた。


「今日中にクローネの国境沿いの街まで行く予定です。国境沿いは混乱をきたすことになりそうだから、準備が整っていたら出ましょう」

 ラケムさんの言葉を出発の合図にして、私たちは、馬を乗り換えて国境を越えることにした。




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