46 王宮へ
「アメリアさん、ごめんなさい。
アメリアさんの瞳だけど…… 私、瞳の結晶を壊してきます!」
人のいのちを消費してまで、遠見の力を手に入れるものじゃない!って思った。
なんでそんなものをオルト兄ぃは置いてきたのか……私には全然理解できない。
でも、そんなのをぜったい残しちゃダメだと思う!
「すみません。私はまったく話についていけないのですが……」
大神官様が少し困った顔をしてラケムさんを見ると、ラケムさんは大神官様に向かって話そうとした。
「私も理解しているか――と言われれば、よくわからないのですが……
マルルカさんとそのお兄様たちは、特別の方々のようなのです。
私が話してもいいかどうか・・・・・・」
ラケムさんはそこまで言うと、(後は自分で話すか決めなさい)というように私を見て、口をつぐんでしまった。
どうしよう…… どこから何を話したらいいのか、話してもいいのか、困ってしまう。
オルト兄ぃは、瞳の結晶を壊していいよってしか言わなかったし。
「あの・・・・・・ 大神官様はブリドニクの御使い様にお会いしたいとおっしゃっていたとラケムさんから聞いたのですが……」
「そうですね。一度でよいから、神に近いところにいらっしゃるお方を目にしたいと思いました」
「あの・・・・・・それ、私です。
あっ! でも 御使い様じゃぁありません! ただのマルルカです」
私はそういって、銀色のマルルカの姿に戻ってみせた。
大神官様、そしてアメリアさんも息をのんで驚いている。
「私の本当の姿です。これだと目立ってしまうから……って兄に言われて、いつも姿を変えているんです。
ただ、ちょっとだけ不思議な力を使えるだけで、御使い様なんかじゃありません」
「マルルカさん、あなたにも神の力があるの? その……オルトにも……」
アメリアさんは、本当にびっくりしていて、恐る恐る私に聞いてきた。
「神の力じゃぁありません。その……私は魔法が使えるだけ・・・・・・
でも、誰にも言わないでください。お願いします」
「フフフ・・・・・・
私って、本当に愚かだったわ……自分だけが特別って思ってたなんて。私しか持っていない力だってうぬぼれていたんだわ・・・・・・
大神官様は、わたしの驕りに気づいていらしたのですね。
目を失くして、初めて気づくなんて・・・・・・」
「アメリアさん、自分の神の力こそが自分自身! と、あなたが思っていたのが強く感じられたので、あなたの神の力とあなた自身とは別であることを、私は知ってほしかっただけですよ。
そして、マルルカ殿、 クローネ王があなたを遣わせた理由がこれでよくわかりました。
ラケム殿、あなたの今回の来訪の目的は達したのだと思いますよ。
本当に感謝いたします。
そして、王宮にある瞳の結晶を壊してください。お願いします」
大神官様は、アメリアさん、ラケムさん、そして私を順番に見まわしていった。
それから、王宮へ向かう方法を4人で話し合った。
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夜もすっかりと深まった頃、私はひとりで王都の北側にある王宮へと向かった。
タミネアの王宮門は大きな階段を上がった先にある。
タミネアの王都の夜は静かで、王宮の階段のあたりに人の姿はなく、しんと静まり返っていた。
誰もいないことを確認して、ブリドニクのときのように、女神様のイメージを強く持ちながら、本来の姿に戻る。魔力の循環がとても滑らかになるのを感じる。
それから、大きく深呼吸をして、これから自分がすること――瞳の結晶を破壊することを、もう一度強くこころに刻んで、王宮門に進んでいった。
【ウインド・ガード】 自分の周りに渦巻く風を発生させる。
「お、お前は…… 何者だ!」
王宮門を守る兵士たちが私の姿に声をかけるのをためらったもの、私に矛先を向けて王宮門を守る。
(これからが勝負だ! 私は御使い様になりきる!) 強くこころに思う。
「通しなさい! 私はセフィス様の御使いです。
この城にあるアメリアの瞳のある場所に案内しなさい」
王宮門のやり取りに異変を感じた他の兵士もやってきて、ある者は、私の姿に戸惑い、ある者は不審な者として刃を向ける。
「御使い様……!! ?? いや…… そんなばかな……!」
「通さん! 許可ある者以外通すわけにはいかん! 帰れ!」
「あなたがたの許可はいりません」
強引に前に進もうとする私に、一人の兵士が持っている矛を突き出した瞬間、強風にあおられ、矛ごと飛ばされて尻もちをついた。周りの兵士は啞然としたまま、次に私に矛を向けてくる者はいなかった。
「御使い様……!! 王様に報告してまいりますので、このままお待ちを!」
「待つ必要はありません」
兵士たちを無視して進む私に、王宮の中にいた衛兵のひとりが、「御使い様であるわけがなかろう!」と言って剣で切り付けてくるが、私を守るウインド・ガードで剣が私の身に届くはずもなく、吹き飛ばされていく。
「御使い様!」 「御使い様がお姿を現したぁー」 「王様にご報告を!」
王宮内は一層騒然として、王宮を守る兵士、衛兵はその数を増やしたが、遠巻きに私に刃を向けるだけで、切り付けようとする者はいなくなった。
(瞳の結晶はどこにあるんだろう?)
その気配を感知しようと、一度立ち止まって感覚を研ぎ澄ます。
(だめだ、離れすぎていてどこにあるかぜんぜんわからない。レイスだったら察知できたんだろうけど…‥‥)
「アメリアの瞳のある場所まで、誰か案内してください」
「そ、それは王様の許可がなければ……」
「御使い様、王様がお会いしたいとのこと! 謁見の間までお越しいただけますでしょうか?」
急ぎ駆け寄って来た衛兵が、私にひざまずいて声をかけてきた。
「私は、王に会いに来たのではありません」
(こんなところで時間をつぶしているわけにはいかない。どんどん人が増えてくる。
自分で探すしかない……)
そう思って、かすかな魔力の気配を見逃さないように、王宮の奥へと歩みを進めることにした。
奥のほうへと進むと、ふと違和感を感じて、その方向へ目を向けた。
そこには、片目の男がひとり、柱の陰からこちらを見ていた。
「瞳の結晶にあなたの眼をささげましたね? 私をその結晶のところまで連れて行きなさい」




