表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2つの世界の物語 ~魔力の化け物と呼ばれた少女の物語~  作者: 星あんず
第3章 とまどいの一歩(後編)
92/128

44 神様の計らい

 翌朝、日の出とともに宿を出るとまっすぐセフィス真教の大神殿へと向かった。

 山の中腹にあるタミネアの王都の朝の空気は、痛いほど透明で冷たい。


 大神殿という名の割には、小さな神殿だった。クローネの王都のセフィス教大教会とは比べられるほどの大きさはないように思われる。建物を閉ざす扉は小さな両開きの扉ひとつで、礼拝堂もブリドニクの教会くらいの大きさだった。

 彫刻などの装飾はまったくなく、石づくりで殺風景な壁はごつごつとしている。


「大神官様にお会いしたいのだが・・・・・・すでに祈りをささげられていらっしゃるのだろうか? 

 私は、クローネ王国のラケムといいます。以前、大神官様にお目通りいただいた者です」


 神殿の入り口を掃き清めている見習い神官のような人にラケムさんが声をかけた。


「大神官様は、すでに朝の祈りをされていらっしゃるので、中で少しお待ちいただけますか? いつお会いできるかお約束はできませんが。

 それでもよろしければご案内いたします」


 ラケムさんが軽く頷くと、見習い神官様に案内されて、礼拝堂を通り抜けて神殿の奥へとつながる扉を開けてくれた。



 開けてくれた扉の向こうの薄暗い廊下の奥に・・・・・・人影が見えた。



「スーおばさん……!?」


 私が神殿奥へと続く廊下の先に見た女の人は、スーおばさんだ!!

 思わず駆け出して行って、思いっきりスーおばさんに抱きついた。


「マルルカだよ!! スーおばさん! ずっと会いたかったぁー

 やっぱり死んでなんかいなかった!! よかったぁー

 オルト兄ぃが助けてくれたんだね? 魂を食べちゃったって言うから……

 あたしずっとずっと訳が分からなくて……

 でも、ここに連れてきてくれたんだね?」


 うれしくて、うれしくて、ずっとスーおばさんの胸の中で思いっきり泣いた。



「あの…… あなたの言うスーおばさんってスザンナのことかしら?

 それにオルトって……」


 スーおばさん?――女の人の怪訝そうな声で、私はふと顔を上げると、女の人から少し離れた。

 白い布で目隠しをしている女の人……私にはスーおばさんにしか見えない。


「スーおばさん、スザンナさんじゃないのですか? ブリドニクの……」


 少ししてラケムさんが来ると、私の肩にそっと手を置き、

「セフィス様の巫女 アメリア様・・・・・・ですよね?」 と声をかけた。


「そうです。

 その声は聞き覚えがある…… あなたはクローネ王国からいらした……」


「ラケムです。以前にあなた様に王宮でお会いしました。

 プーレフェミナ・スザンナ様の妹君でしたよね? マルルカが見間違えるはずだ」


「そうなのね。

 マルルカさん…… あなたは姉さん――スザンナを知っているの?

 よかったら姉さんの話を聞かせてくれない?

 私、目が見えないから…… 嫌でなかったらあなたに触れてもいいかしら?」


 アメリア様――スーおばさんの妹は、とっても嬉しそうに口元に笑顔を浮かべて、私のほうへ手を伸ばす。私はアメリア様の手を取って自分のほうへと引き寄せた。


「ありがとう。マルルカさん・・・・・・」


 案内してくれた神官見習い様が、「こちらのお部屋をお使いください」と言って、ひとつの部屋の扉を開けると、私たち3人を中にとおしてくれた。




 私はアメリア様の手をひいてソファに座ってもらうと、その隣に腰を下ろす。ラケムさんは反対側の椅子に座った。


「マルルカさん、姉さんのこと教えてくれる? それから姉さんの子どものレイス君とメイさんのことも知っていたら教えてほしいの!」


 私は、スーおばさんのことはもちろん、画家見習いをしているレイスのことや明るいメイちゃんのことを話した。私が話をしている間、アメリア様は、時々相づちを打ちながら本当にうれしそうにして話を聞いてくれた。


「あぁ、マルルカさん、お話してくれてありがとう!

 あなたは、ねえさんやレイス君、メイちゃんととても仲良しなのね!

 あなたに会えて本当によかった。こんなにうれしいことって、私初めてよ!!

 あなたはどんなお顔をしているの? 瞳の色は? 髪の毛は?…… あなたのお顔を触ってもいいかしら・・・・・・」


 私はコクンと頷くと、アメリア様の手を私の顔に持っていき、そっと触れてもらう。


「ありがとう…… あなたの肌はとってもすべすべしているわ。頬がふっくらしている。みんなに愛されているのね。まつ毛はとっても長いわー。髪の毛はつやつやしている!

 マルルカさんは、とっても美人さんなのね!」


 アメリアさんは、うれしそうにして私の顔をそっとなでる。


「アメリア様…… レイス殿とメイ殿のことは、神の力遠見(とおみ)でお知りになったのですか? もし、お差支えなければお話しいただけませんか?」


 ラケムさんがアメリア様に丁寧に静かに話しかけた。


「ふふ…… そうね。マルルカさんにばかり話をしてもらって、私のこともお話しなければね。

 それと、私のことは、ただ、アメリアとだけ呼んでください。

 もう、神の力はありませんから…… 」


 そういうアメリア様――さんは、ちっとも悲しそうじゃなくて、すこしうれしそうに、笑みを浮かべた。


「私は、神の力――私の瞳を捨てることで、王宮を出ることができました。

 もっとも、王宮では、私は死んだことになっていますけれど……

 オルトが力を貸してくれたのです」


(オルトってオルト兄ぃのことだよね?

 オルト兄ぃは、ずっとアメリアさんのそばにいたってことなの?)


 びっくりして思わず口に出そうになったけれど、アメリアさんの話を途中で遮るわけにはいかない。驚いたことを口に出さないようにして、アメリアさんの話の続きをラケムさんと一緒に聞くことにした。

 アメリアさんは、お姉さんのスザンナさんが隠れ里というところを出た後ずっと暮らしていたこと、自分も意を決して出て王都まできたこと、王都でのことを話してくれた。



「ラケム様、マルルカさん、 こんなことを言うのは厚かましいお願いだと思うのですけど…… 

 私は姉さんの子どもたちに一目でいいから会いたいのです!

 お願いですから、私をクローネに連れて行ってもらえませんか?

 何もできない、目も見えない私が足手まといになるのはわかっています。

 勝手なお願いだと思います。でも、できる限りご迷惑にならないようにしますから!

 一目でいいから、いえ、たった一度でいいから、姉さんの子、私の唯一の家族に会わせてください!!

 お願いします!」


 私は、アメリアさんをレイスとメイちゃんに会わせてあげたいって思った。レイスとメイちゃんだってたった二人の家族になってしまった。

 ラケムさんがダメって言っても、絶対連れて行こう! 

 そうこころに決めて、ラケムさんをじっと見る。


「これも神様のお計らいなのかもしれませんね。

 あまり面倒は見てあげられないかもしれませんが、クローネに行きましょう」


 ラケムさんはニッコリと笑ってそう言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ